日本のミュージカル音響の約70%に携わるというクリエイター集団、株式会社エス・シー・アライアンス。その中心人物である山本 浩一氏は長年にわたり「音を作り込まないで、ありのままのダイナミクスを届ける」という美学を貫いてきました。
そんな山本氏が「世紀の大発明」「魔法のようなマイク」と絶賛し、ミュージカルでも多用しているのが Earthworks(アースワークス)のマイクです。測定用マイクを出自に持つこのメーカーが、なぜ音楽表現において「完璧」と評されるのか。ドラムマイクを中心にその核心を伺いました。
株式会社エス・シー・アライアンス代表取締役社長:山本 浩一氏
測定用マイクからの発見。完璧なサウンドへの信頼
山本氏とEarthworksの出会いは、サウンドエンジニアとしてのフラットな音作りへのこだわりから始まりました。当初はスピーカーチューニング用の測定マイクとして使用していましたが、あるピアノ収録が転機となります。
山本氏:「スタインウェイの収録にあたり、業界標準と呼ばれているマイクと Earthworks PM40 を比較したところ、PM40の方が圧倒的に音が良かったんです。PM40でないとピアノ収録ができないというくらい完璧なサウンドで、そこからもうEarthworksについて行こうと(笑)」
ピアノが持つ多彩な表現力を収音する能力。そこに惚れ込んだ山本氏は同社製品を信頼して追求するようになり、ドラムマイキングにおいてもEarthworksへの移行を決断しました。
「世紀の大発明」Earthworks DM17
ゲートやコンプで音を作り込むロックコンサートのような音響とは異なり、ミュージカルではダイナミクスを自然に聴かせることが求められます。山本氏は長年にわたり、”従来のマイクではアタック音が突出して、その後の胴鳴りや余韻が他の楽器に埋もれてしまう” という課題を感じていました。しかしEarthworksのドラムマイク DM17を試した瞬間、衝撃が走ります。
山本氏:「DM17は本当に大発明ですよ。アタックだけが先に来ないで全体の鳴りがワッとくる感じ。これは今まで全くなかった音です。そのまま全体像が拾えて、音が近くなってもアタックだけが飛んでこない。EQで補正する必要がなくて、フェーダーを上げるだけでドラムの全体像が現れるんです。本当にすごいマイクで、現場のマイクをすべてEarthworksにしたいと考えています。」
山本氏:「基本的にタムは、すべてDM17になっています。オンマイクでタムの音の全体像が録れるマイクは他にはありません。ロック系のコンサートであればタムをかなり大きくPAするので、アタックと共に余韻も聴こえるのですが、ミュージカルではそこまで大きくタムをPAすることはないので、どうしてもアタックのみが強調されてしまいます。このDM17ではそんなに大きくPAしない場合でも、余韻も含めたタム全体の音を、存在感をもって捉えることができます。」
キックドラム専用マイク DM6
山本氏:「キック用のDM6は、1本のマイクでバウンダリーマイクとダイナミックマイクの要素を混ぜたような音を演出できます。現在はマイク位置の微調整で最適なポイントを探っている段階です。うまく調整できれば、キックの中にマイクを入れっぱなしにするなど、これ1本で完結できる可能性があると思っています。現状では、ややハイ成分が強いというかミッドローの成分が少ないので、使用するバスドラによっては AUDIX D6 と混ぜて使っています。
「Gen 2」がもたらした、圧倒的な表現力
今回、山本氏は既存モデルのアップデート版となる Gen 2モデルをテスト。特にスネアで使用するという「DM20 Gen 2」と、オーバーヘッドやシンバル用の「SR25 Gen 2」の進化には目を見張るものがあったと語ります。
DM20 Gen 2
山本氏:「DM20のグースネックはスネア周りの狭いスペースに設置しやすくて便利です。初代に比べてGen 2はスネアの音が太く存在感が増して、音像も大きくなりつやが出ました。ロックからジャズまであらゆるジャンルのスネアにマッチしますね。」
山本氏:「ミュージカルの現場では多くの楽器が接近しているため、カブリ音の質がミックス全体のクオリティを左右します。たとえばドラムの場合、ハイハットのジャキっとした音が他のマイクにカブってくるんですけど、一般的なダイナミックマイクではカブリ音が結構汚いんですよ。
DM20 Gen 2は指向性に優れてカブリが少ないだけでなく、きれいな音がカブってくるという魔法のようなマイクなんです。ミュージカルにおいてもコンサートにおいても、ゲートを使用しないで音がきれいにカブるように調整して、小さな音は小さなまま、楽器本来の余韻を殺さずにミックスします。」
SR25 Gen 2
山本氏:「SR25 Gen 2は初代モデルと比べなくても、バツグンに良くなっていることがすぐに分かりました。さらに奥深い音になっていて、繊細かつ太い音がします。シンバルのなかでも特にライドシンバルの表情って、圧倒的にスネアよりも表情が豊かなんです。SR25 Gen 2はライドシンバルの質感や表情まで、鮮明に拾い切れるマイクに進化していますね。クラッシュ音もくずれることなく、存在感のある音になっています。」
「究極の完成度」
測定用マイク由来の圧倒的な正確さと、音楽的な艶やかさを両立したEarthworksマイク。新世代のラインナップは、業界の第一線で数十年にわたりキャリアを積み重ねてきた山本氏から、「これ以外にない」と断言されるほどの高い評価を獲得しています。
山本氏:「Earthworksを一回使ったら絶対に手放せなくなりますよ!もうこれでいい。ずっとEarthworksで行こうかなと思っています。」
株式会社エス・シー・アライアンス
https://www.sc-a.jp/
Earthworksドラムマイク製品情報