2025.10.16
ボブ・クリアマウンテンが手がけたEQプラグイン、Clearmountain 8068がアップデートされ、新たにMICモードのゲインコントロールにTrimが追加されました。
前回の記事では主にEQセクションにフォーカスを当てた解説をお届けしましたが、今回はGainセクションに注目していきましょう。
本プラグインはデフォルトの設定のまま、プラグインを通しただけで倍音が付加されるようになっています。これがアナログの質感を与えるポイントとなっているわけですね。
LINEモードとMICモードでは異なる倍音特性があり、これによりEQとしての活用法以外に、サミング的な使い方もできます。
またオーバーサンプリングに対応しており、デフォルト設定でONの状態になっています(右上の設定(歯車アイコン)で設定できます)。そのため、過度な倍音付加によるエイリアスノイズの発生の心配も軽減されています。
通常MICモードのゲイン設定は5dbステップしかありませんが、今回のアップデートで追加されたTrimのツマミを利用するとさらに-5db~+5dbの間での微調整が可能になります。
これにより、精細な入力レベルの管理ができるようになりました。
また、MICモードに限りOutput TrimのAutoモードが機能します。
これはGain, Trimを上げ下げすると自動で追従し音量が変化しないよう揃えてくれます。これにより音量の大小に惑わされることなく純粋な質感の変化に集中することができます。
ただ、このAutoモードはあくまでも入出力の音量だけにかかるもので、EQをブースト/カットしたときの聴感上の変化には追従しませんのでご注意ください。極端な調整を行うと当然音量感はかなり変わって聴こえますので、その際はフェーダーを使って上げ下げするか、Autoモードを解除してOutputを調整する必要があります。
EQセクション下部のeqlというスイッチ、これはEQモジュールを無効化するものです。EQプラグインなのにそれって何の意味があるの?とお思いかもしれませんが、実はすべてのEQ設定がゼロの状態でも、通しただけで主に高域や中域などの周波数特性が変化するように設計されています(公式マニュアルより)。
このスイッチをオフにすることによってそれらの影響を受けないまま、Gainセクションによる倍音付加の恩恵だけを受けることができます。ややマニアックな機能ですが覚えておきたいところです。
実践的な方法として、前回制作したトラックであえてドライブ感を前面に押し出したミックスと、逆に極力クリーンなミックスの2種を作成してみました。
どちらも音量やEQ設定はまったく同じまま、GainとTrimの設定だけで差をつけてみました。
Auto Gainがあることによって、バランスが大きく変わることを恐れずにこういった変化を試すことができるのはありがたいですね。あなたはどちらがお好みでしょうか?
歪みは周波数特性のみならずトランジェントにも影響するので、こういった積み重ねがミックス全体、そしてその後のマスタリングにも違いをもたらしてくれると思います。
例えば、ドラムバスのEQでは、下記の2パターンを試してみました。
ほどよくドライブさせた設定
極力ゲインの影響をおさえた設定。最小の+10dbからTrimを使いさらに-5db
宮野弦士
作編曲家/サウンドプロデューサー
強固なグルーヴ感と緻密なハーモニー構成のアレンジを得意とし、フィロソフィーのダンス、MORISAKI WIN、鞘師里保、FRUITS ZIPPERほか多数のアーティストへの楽曲提供、編曲を担当。ベース、ギター、キーボード全般を演奏するマルチプレイヤーでもあり、自身のバンド『7セグメント』では、ギター/キーボードを担当している。