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使うだけで良い雰囲気を醸し出す魔法のようなEQ 〜 Apogee Clearmountain’s 8068 レビュー by サカタコスケ

2025.09.03

数々の名曲を生み、多くのミュージシャンやエンジニアが憧れたニューヨークのスタジオ The Power Station。そこでボブ・クリアマウンテンが愛用していたNeve 8068 コンソールを忠実にモデリングしたのが Clearmountain’s 8068です。Neveそのものを感じさせるルックスと操作感で、私のレコーディング現場でもすでに欠かせない存在になっています。その使用感やサウンドの特徴、そしておすすめの使い方をレビューしていきたいと思います。

2つの入力モード

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プリアンプ的に使えるmicモード

まず注目したいのは、EQプラグインでありながら micモードを搭載している点です。これは非常に珍しく、単なるEQではなくプリアンプのような使い方をできるのが大きな特徴です。たとえば廉価なオーディオインターフェースでも、この micモードを使えばNeveプリアンプに近い質感を得ることが可能になります。さらにサチュレーション効果も豊かで、存在感の薄いボーカルトラックに説得力と厚みを加えたいときに特に有効です。

特筆すべきは Auto Gain 機能。インプットゲインに応じてアウトプット音量を自動的に調整してくれるため、扱いやすさが格段に向上しています。私自身、オールドNeveの実機でレコーディングする際には、インプットゲインを上げて「Neveらしいサウンド」を強調することがよくあります。しかしそのままではDAWの入力でクリップしてしまうため、手動でアウトプット・トリムを下げる必要がありました。このプラグインではその音量調整を自動で行ってくれるので、サウンドメイクに集中できるのが大きな利点です。

line モードでも得られる倍音

line モードでも、インサートするだけで自然な倍音変化を加えることができます。これにより、トラックごとの質感がバラバラで馴染まない場合でも、サウンドを中和してまとめ上げる効果が期待できます。Pro Tools には HEAT* というサチュレーション機能がありますが(* Pro Tools Studio および Pro Tools Ultimate に対応)、それと同様の効果を他のDAWで得たい場合などに、このClearmountain’s 8068 が実力を発揮してくれるでしょう。

積極的なサウンドメイキングに最適なEQ

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Neve 8068コンソールに搭載されていたものと同様のEQモジュール Neve 31102 や、その前世代となる Neve 1073 の実機を使うことがありますが、それらと比較しても Clearmountain’s 8068 のEQは非常に強力です。わずかなゲイン調整でサウンドが大きく変化し、ほかのEQプラグインでは得がたいほどの大胆な音色変化でありながら、最大にしてもサウンドが破綻しにくいのが大きな魅力です。

また本プラグインには、現代的なプラグインのようにスペクトラム・アナライザーが搭載されていません。それが逆に、視覚的な既成概念にとらわれないクリエイティブな音作りを後押ししてくれます。耳で判断しながら大胆なブーストやカットを試して、積極的なサウンドメイキングをするのに最適なEQといえるでしょう。

おすすめの使用法

Clearmountain’s 8068 は、生バンドでも打ち込みでもジャンルを問わず、音作りの最初に使いたいEQです。Hi / Mid / Lo / Hpf / Lpf というシンプルな構成に物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、私にとっては全く問題ありません。まずこのEQで音の骨格を作り、その後段に別のEQをインサートして微調整するのが理想的な使い方だと感じています。

ドラムの音作り

The Power Stationといえば往年のハードロックを象徴するドラムサウンドを思い浮かべますので、このプラグインもまさにドラムの音作りに効果的です。単体では存在感のあるドラムも、他の楽器が重なると埋もれてしまうことがよくあります。そんなときに Clearmountain’s 8068 を使えば、しっかりと前に出てくるドラムサウンドを作れます。なかでも私はキックの音作りに重宝していて、たとえば「16kHzを思い切りブースト」「220Hzを少し持ち上げる」「45Hzにハイパスを入れる」といった設定で使うことが多いです。アタック感が弱く主張のないキックでも、ハイからローまでしっかり抜ける「バキバキのキック」に生まれ変わりますよ。

ディストーションボーカルに

さらに、ディストーション用途としても効果的です。よく使われる「ディストーションボーカル」は、歪み系プラグインを使用するとピーキーで耳障りな歪みになりがちです。ところが、Clearmountain’s 8068 で micゲインを極端に上げて得られる歪みは自然で、楽曲にマッチする音になります。ボーカルレコーディングでは大抵Neveマイクプリを使用していますが、録音時に歪ませて録ることは現実的ではないので、録音後にプラグインで再現できるのはありがたい限りです。

ミックスにおいては、どれだけサウンドの味を引き出せるかが重要な要素のひとつです。Clearmountain’s 8068 は、まさにその「説得力のある音」を求める方におすすめできるEQです。使うだけで間違いなく良い雰囲気を醸し出してくれる、まるで魔法のようなEQだと思っています。


プロフィール
サカタコスケ Kosuke Sakata

サカタコスケ

Recording Engineer

京都府出身。
レコーディング現場のみだけではなく、密に楽曲制作に携わるべく2000年からbluesofaに参加。2013年、自社スタジオである「HINATA STUDIO」のチーフエンジニアに就任。現在は、アーティスト、アイドル、バンド、大編成オーケストラまで様々な音楽作品を手がけ、ライブレコーディング、マニピュレートの他、アーティストプライベートスタジオ構築などにも関わり、密度の濃いエンジニアリングを実践中。近年は、TOKYO2020オリンピック、パラリンピックの開閉会式、2022年東京国際映画祭のオープニングセレモニー、大阪関西万博の開会式など、大型のイベントの音源制作にも携わっている。

参加アーティスト&コンテンツ
Porno Graffitti/Perfume/NAOTO/広瀬香美/柚希礼音/さくら学院/ばってん少女隊/TEAM SHACHI/鞘師里保/碧海祐人/中島愛/神田莉緒香/降幡愛/ポケットモンスター/Galileo Galilei/瀧川ありさ/佐香智久/横山だいすけ/宇宙まお/武藤彩未/Яeal/TEAM NACS/DEPAPEPE/原神/ヲタクに恋は難しい など


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