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Apogee FX 連載企画第5弾 by Sorato「Clearmountain’s Series」

2025.07.31

こんにちは、Soratoです。今回はApogeeのプラグインの中でも、少しマニアックな使い方が楽しめる3つのFXプラグインをご紹介します!


Clearmountain’s Phases

伝説的ミキシング・エンジニア、Bob Clearmountainのスタジオで実際に使用されていたクラシックなフランジャー/フェイザー・プロセッサーのサウンドを再現したプラグインです。

1970年代半ばの希少なヴィンテージ・ラックモジュールを精密にモデリング。さらに、拡張設定モジュールも搭載しており、より自由度の高いモジュレーション効果を作り出せます。

以下の5つのユニットで、様々なモジュレーション効果を生み出すことが可能です。

  • Global Controls:「MODULE CONFIG」でフランジャーとフェイザーの接続方法を設定したり、「LFO SYNC」でLFOをDAWのテンポに同期させるなど行えます。
    Global Controls
  • Flanger Modules:フランジャーの基本的な設定が行えます。
    Flanger Modules
  • Flanger Expanded View:フランジャーのモジュレーション効果をより細かく調整可能。特にBBDのモード切り替えによるサウンドの変化が顕著です。
    Flanger Expanded View
  • Phaser Expanded View:フェイザーの基本的な設定が行えます。特に隠しパラメータである「Ageノブ」(左上の矢印ノブ)では、オリジナル・ハードウェアに使用されていたVactrol(光カプラ)部品の経年劣化をシミュレートし、オールパス・フィルターの反応に変化を与えるという、非常にマニアックな機能が搭載されています。
    Phaser Expanded View
  • Phaser Modules: フェイザーのモジュレーション効果をより細かく調整可能。「ANALOG」ボタンで、ハードウェア・フェイザーの特性をより忠実に再現できます。
    Phaser Modules

Clearmountain’s Domain

Bob ClearmountainのシグネチャーFXチェーンを再現した、マルチエフェクト・プラグインです。

Bob本人が設計したディレイ、ピッチシフト、リバーブなどのFXチェーンが1つにまとまっており、David Bowie、The Rolling Stones、Bruce Springsteenなど、数々の名盤で聴かれる彼独自の“空間づくり”や“奥行きのあるミックス”を、自分のプロジェクトにもそのまま取り入れることができます。

以下の5つの画面で各種調整が可能です。

  • Setup View:プラグインのビジュアル表示オプションを設定
    Setup View
  • Inputタブ:リバーブやディレイ前のEQ、De-Esserの設定
    Inputタブ
  • Delayタブ:左右のディレイタイムやフィードバック(=Spin)を細かく調整
    Delayタブ
  • Pitch/Reverbタブ:音程シフトと3種のIRリバーブで空間演出
    Pitch/Reverbタブ
  • Mixerタブ:各エフェクトの音量、パン、ドライ/ウェットバランスを調整
    Mixerタブ

Clearmountain’s Spaces

Clearmountain’s Domainのリバーブ部だけを独立させた、いわば“廉価版”的な位置づけですが、シンプルながら本格的な空間演出が可能なプラグインです。

Clearmountains Domain
  • Apogee Studios:短く暖かい残響
  • Mix This! Chamber:明るく中程度の残響
  • Roscoe Chamber:長くリッチなリバーブ

この3つのIRリバーブを並列で使用可能。リバーブがかかる前段にDe-EsserやEQを掛けることもでき、シンプルかつ扱いやすいUI設計が魅力です。


ファーストインプレッション

さすがはApogee。どのプラグインも、FXのサウンドに厚みや存在感があり、非常に高いサウンドクオリティを感じました。

プリセットもBob本人が作り込んでいるそうで、実際に使用された曲のルーティングを再現していると思われるプリセットもあり、「なるほど、あの曲のあの感じが出るなぁ」と納得できる出来でした。全体的に、60〜70年代の音楽的傾向を感じさせるサウンドに仕上がっている印象です。


実際の現場での使いどころ

ドラムに

「なんだかドライすぎて嘘っぽいな」「ミックスで浮いてきてしまうな」そんな時に、IRリバーブをほんの少し(WET 1〜8%程度)加えると、リアリティが増し、違和感が払拭されることがあります。

Clearmountain’s Spacesは、そんな場面にぴったり。印象の異なる3つのリバーブを簡単に切り替えたり重ねたりできるため、打ち込みのドラムでも実際に録音した生ドラムでも、手早くリアリティを加えることができます。

ギターやベース、その他の楽器に

単調なサウンドから脱却したい時、よくモジュレーション系のエフェクトを使いますが、Clearmountain’s Phasesはとても便利です。

まず、シンプルに「音が良いなぁ」と感じています(笑)。このタイプのハードウェアは触ったことがないのですが、太さや存在感の出方が、まるでハードウェアのEQやコンプレッサーをかけた時のような印象。

また、プリセットが非常に使いやすいです。ノブが多くて音作りが難しいと感じる場面もありますが、 「Rhodesのコーラス感が欲しいならこれ」「ジミヘンっぽい音ならこれ」といった具合に、ネーミングが直感的で助かっています。

深く広いアンビエンス感を演出したい時

Clearmountain’s Domainは、音像を大きく、広くしたいときに非常に便利です。

Clearmountain’s Phasesと同様、まずはプリセットから試してみるのが手っ取り早いですが、高位品質なディレイとIRリバーブを組み合わせたプラグインだけに、その多くが「宇宙みたいに広く深いサウンド」になっています。

多くのプリセットはWET 100%で作られているため、センドでの使用を想定しているのだと思います。センドから少し混ぜて使うのがオススメです。


「音源デモ」

Drums(Off→On→Off→ON)
Drums
Gt&Bass(Off→On→Off→ON)
Gt&Bass
Gt2(Off→On→Off→ON)
Gt2
Jimi like Gt(Off→On→Off→ON)
Jimi like Gt
Key(Off→On→Off→ON)
Key

「まとめ」

いかがでしたでしょうか?どれもユニークで、印象的なサウンドデザインに向いたプラグインだと感じました。個人的には、モジュレーションやIRリバーブは“楽曲の嘘くささ”を打ち消すのにぴったりで、ほんの少し混ぜるだけでも、一歩プロフェッショナルなサウンドに近づけるポイントになると思っています。

現代的な音とは一線を画しつつ、高品質なレトロ感や実験的なサウンドが求められる場面でも役に立つので、今後もどんどん活用していきたいですね。


Sorato

MusicProducer/Remixer.

国内外アーティストへの楽曲提供、ビート提供、リミックス制作などグローバルに幅広い活動を見せ、The Chainsmokers「Takeaway Remix Contest」では世界9位、日本1位の実績を持つ。
マゴノダイマデ・プロダクション所属

Works(敬称略)
Snow Man “BREAKOUT”作曲(共) 編曲
IVE “Will“  作詞作曲(共 )編曲
いゔどっと ”まほろば” 編曲
北山 宏光 “YOU&I”  作詞作曲(共) 編曲
THE JET BOY BANGERZ “Banger” 作詞作曲(共) 編曲
etc…

gratia(デモ音源歌唱)

大阪大学文学部音楽専修卒業。幼少期からクラシックピアノを学び、大学卒論でタイ音楽を研究。2018年より作家活動を開始し、幅広いジャンルで作詞作曲やボーカルディレクションを行う。

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