2025.07.29
Interview, Photography by Soichi Ono
国内外で高い評価を集め、独自のサウンドで注目を集めるロックバンド Newspeak。そのボーカル・作詞作曲を手がける Rei は、今年、澤野弘之氏作曲のアニメ主題歌「INERTIA」でのボーカル参加を果たし大きな話題を呼んだ。今回のインタビューでは、音楽を始めたきっかけや、これまでの歩み、制作に欠かせない機材やインスピレーションの源についてじっくりと話を聞いた。Reiが語るそのリアルな音楽観と、バンドのこれからの展望をぜひ感じ取ってほしい。
Newspeakというバンドのボーカルと作詞作曲を担当しているVo.Reiです。シアトルで生まれて日本で育ち、イギリスに住んだ後、現在は日本で音楽活動をしています。。
まず楽器に触れたのは8歳から習い始めたピアノがきっかけですね。4人兄弟の上2人がピアノを習っていたのでその影響で始めました。厳しい練習に耐えられず、3年ぐらいで辞めちゃったんですけどね。(笑) でも、辞めてしまった頃から、ファイナルファンタジーなどのゲームの楽譜を買って弾いたりという時間が楽しかった記憶がありますね。 その後はサッカー少年になってしまったのでしばらく音楽からは離れていたのですが、高校2年生の時にサッカー部の先輩が文化祭でバンドをやっていて、しかもそれがThe StrokesとかArctic Monkeysとか、激渋な感じで衝撃を受けたんですよ。そして高校3年生のときに遂に自分もそのあたりの楽曲のコピーバンドを始めたんです。担当はボーカルギターです。 その時のメンバーでもある友人に「作詞してみたから曲作って」と言われて、これまで一度もしたことのない作曲をギター一本でやってみたんです。翌日、音楽室のアコースティックギターで聴かせたら「めちゃくちゃいいじゃん!」となったのもあって、大学から作曲やバンド活動にハマっていった感じですね。
親がThe Beatlesやスピッツが大好きだったので送り迎えの車の中でよく聴いていましたね。
先ほども出ましたが、ファイナルファンタジーなどのゲームの音楽もよく聴いていましたし、カラオケに行く年齢になって邦楽ももちろん聴いていました。でもやっぱり高校生の時にガレージロックリバイバルみたいなのが何個か上の世代であったというのもあって、Arctic Monkeys、The Strokes、The Fratellis、JETとかがバンドを始めたきっかけですし、やっぱりそのあたりが一番源流になってますね。そこからさらに過去に遡っていきOasis、Radiohead、Travis、The Smithとかをディグってました。その流れでその時に流行っていたFoals, Two Door Cinema ClubとかThe Killersとか、Bombay Bicycle Clubとかにめちゃくちゃハマっていった感じです。
最初にハマったのは FF8 です。植松伸夫さんのフェイ・ウォンさんのEyes on meのやつですね。当時の友人らはポケモンやデジモンをやっていたので、ちょっと世代とはズレているんです。(笑) 兄姉が7歳上と10歳上だった影響で、ゲームだけでなく漫画もスラムダンクやろくでなしBLUESが好きだったりで、あのワンピースでさえだいぶ後から読んだほどです。(笑)
特別”このジャンル”というのは無く”ハマったものをずっと聴いてしまう”性格なんですが、最近はSam Fenderの最新アルバムPeople Watchingにハマっていますね。Sam Fenderのボーカルの友人が最近亡くなってしまったみたいなんですけど、その友人のために作ったとされる曲が音楽もMVもめちゃくちゃ良かったりして、新たなSam Fenderにアップデートされているのを感じますし、アルバムを通して聴くと本当にいい曲しかないんですよね。あとは、最近ライブに行ったHans Zimmerやフォーク系のThe Lumineersにもハマっていますね。もちろんさっき挙げていたバンドの新譜も聴きますし、そのシーンから出てきた新しいアーティストも聴きますね。
絶対に聴かないですね。(笑) 制作期間中に歌詞ができたとか、曲が出来た、めっちゃいいの出来た!って満足した時は何日か聴いたりはしますけど、でも完パケしちゃった後は聞かないですね。聴けば聴くほど「あの部分をあーすればよかった...」とかアレンジに終わりがないような気がして。それに自分の声って生々しくて恥ずかしいじゃないですか。(笑) そういった点ではインスト曲であればまだ聴くかもですね。自分で書いたポエムを読み直すのが恥ずかしいのと同じ感じです。(笑)
基本的には僕が1コーラスまで作ります。もし強いイメージがあれば2番だったりブリッジ (Cメロ)、時には最後まで作る時もありますが基本的には1コーラスですね。上モノは僕の担当なので、割としっかりと作り込みます。そこからSteven(Dr)のスタジオに移動し、今度はメンバー全員でCメロ手前までアレンジして、僕がCメロを作って、メンバー全員で最後の音の調整をして完成という流れが多いです。僕は作詞作曲担当なんですが、Steven(Dr)とYohey(Ba)がエンジニア気質なのでとても良い役割分担ができていると日々実感しています。
ベースもドラムも「こういう感じのフレーズをやってほしい」とか、「こういう感じのビートを叩いてほしい」というのはなんとなくデモには入れています。でも、多くの場合Steven(Dr)が僕のアイデアを1回ぶち壊しにくるんですよ。(笑) 唐突に全然別のビートに差し替えてきたりだとか。ただ、それで良くなる時もあるので、いつもそこのせめぎ合いはありますね。(笑) でも、彼らもそれぞれの楽器に対してプロフェッショナルなんで、そこは信頼して任せてますね。
作詞と作曲の順序は特に決めていませんが、圧倒的に曲からできることの方が多いですね。以前は仮歌を英語で入れていたんですけど、最近は日本語と混ぜることが多くなったことで、歌詞を入れてしまうと制限されてしまうため、歌詞なしでトラックとメロディーを作るようにしています。でも、例えば”Be Nothing”のような強く感情を込めた歌の場合は、歌詞まで入れてしまうこともありますね。歌詞のアイデアは、基本は家で考えることが多いです。
曲作りに煮詰まることはよくありますね。そんな時は、映画を観たりすることが多いです。ワンシーンの雰囲気やサウンドからインスピレーションを受けて即座にアコギを手にすることもあります。でも、煮詰まる前に頭を空っぽにするために旅行へ行きますね。例えばですが、長期のアルバム制作が終わっても立て続けに次のシングルの制作期間に突入してしまうと煮詰まりやすいんです。もう頭の中に新しいモノが入っていないし、入る隙間もないというか....なので、一旦 脳の休息期間を設けて極力煮詰まらないようにしています。旅行に行くと多くのインプットや発見がありますしね!
可能性はありますね。かなりエキゾチックな曲になるかも。(笑)
とにかく歌っていて気持ちいマイクですね。上から下まで音の芯がはっきりと出てくれるんです。
これまでは比較的有名な他社のコンデンサーマイクを使っていたんですが、チューブなどのビンテージライクなニュアンスもありつつ、且つNewspeakの現代的なサウンドにも合うというバランスのいいマイクを探していたんですよね。自分でも色々と調べましたが、最終的にはMedia Integrationさんに相談して試させていただいた瞬間に「これだ!」という感じで即決しました。まさに、ビンテージと現代のハイブリットという感じで自分にはピッタリのマイクでしたね!
エンジニアさんがよく僕の声にサチュレーションをかけるんですが、乗りが良くなったと言われましたし、何より以前は頻繁に歌い直しを要望してきていたメンバーのSteven(Dr)からの歌い直し指示がなくなりましたね! Yohey(Ba)も「別にいいじゃん」というレベルのテイクもSteven(Dr)にとっては気に入らないことも多々あったので、PURE TUBEのおかげで”時短”と”エネルギーセーブ”もできています。(笑) もしかしたらPURE TUBEを導入したことで一番ハッピーになったのはSteven(Dr)かもしれないです。(笑)
あと、音には直接関係ありませんが、このぼんやりと光る真空管がとてもテンションを上げてくれます!自分の作業部屋の雰囲気にも合っていますし!スタジオに入りたくなるってとても大事じゃないですか。そうさせてくれるマイクがLEWITTのPURE TUBEですね。
元々は同じApogee社のQuarltettを使っていたのですが、そもそもQuarltettを選択した理由は、自分で色々と調べる中で”音がいい”、”Macとの相性がいい”、自分が使用している作曲ソフトの”Logicとの相性がいい”という点でした。そのQuarltettからの順当なアップグレードとしてSymphony Desktopにしました。
音は正直びっくりしましたね。順当な後継機種だと思っていたのですが、出音を聴いた瞬間にいい意味で全然違くてテンションが上がりましたね!音に深みがあるのに全面的にクリアに前に出てくれて、モダンで解像度が格段に上がった印象です。リバーブの残響も良く聴こえますし。良く考えたらQuarltettよりも高価な機種ですもんね。(笑)
Quartettにもタッチパネルはありましたけど、格段に使い勝手がよくなっていますね。ここでマイクプリを選択できたり、プラグインのパラメータを操作できる点も気に入ってます。自分はフィジカルに操作できる点でハードウェアが大好きなので、マウスで操作しなくとも手元である程度操作できてしまう点がありがたいです。随所に巨匠Bob Creamountainの愛を感じますね。
先代のKomplete Kontrol S61 MK2から使っているんですが、そもそも導入したきっかけがKompleteソフトウェアを愛用していたからっていうのもあって、さっきもお伝えしたように僕はフィジカルに操作できるものが好きなので、これさえあればKompleteのソフトウェア音源をハードのように操作できると謳っていたからなんです。液晶画面に全て表示されますし、それを手元のノブで操作できるなんて、もうハードウェアじゃないですか。(笑) 加えて、Light Guideでしたっけ?キースイッチの場所を色分けしてくれる機能。あれも購入前から憧れていて実際とても役立っています。 でも本当は88鍵のピアノタッチが欲しかったんです。それで今回は思い切って最新モデルの88鍵を導入した感じです。
実際MK2からMK3に変わって制作において何か変化はあった? まずピアノタッチになったことで、特にピアノの音色は表現しやすくなりました。ライブではNord Stageを使用しているんですが、型番は違えどNordも採用しているFatarの鍵盤というだけでテンションも上がりますね。実際に弾き心地もすごくいいですし。あとは液晶がさらに大きくなったことで情報量も増えてより使いやすくなった印象です。パラメータを操作するときのノブとホイールがアルミになったことで高級感のある重みを感じるのも操作していてとても気持ちがいいですし、操作時の挙動もよりサクサクと動くようになりましたしね。
真空管が光るマイクにしても、タッチ操作できるSymphony Desktopにしても、高級感があったり鍵盤が光るこのKontrol S88もとにかくテンション上げてくれるんですよね。人によっては見た目ばかり気にするなって思うかもしれませんが、ちょっとしたことが完成に影響してしまう僕としては、そういった小さな喜びが音楽制作にとても役立っているんですよね。
やっぱり何でもあるからですね。バンドに使わないような楽器も豊富に入っていますしね。最近だとジャンルやテイストに限定したタイトルが増えているので、こういった音が欲しいって時にとにかく便利なんですよ。そして、何より音がいいですね。ベルリンが本社だからかわからないですけど、著名なアーティストが作っている音源とかもありますし、加工しなくとも即戦力で使えるんですよね。それに読み込む前に試聴できるのも大きいです。頭でイメージしたものを忘れてしまわないうちにいかに早く記録していくかが曲を作る自分としては非常に重要なので。
NewspeakではButch Vig Drumsをよく使いますね。Steven(Dr)がパワーヒッターというのもあって生ドラムそのままの音だと満足しないんですよ。もっと汚れたというか男臭さというかパワーのあるドラムを好むので、Butch Vig Drumsはそれらの希望を叶えてくれる正に欲しい音といった感じです。あとはElectric MintとかのSession Guitarist Seriesをあえて鍵盤でアルペジオを弾くと、音がいいのはもちろんなんですがギターでは思いつかないフレーズを作ることができるので重宝させてもらってます。あとは先ほどもお伝えしたジャンルに特化したPlay Seriesもよく使いますね。Analog Dreamsも使いますし、Hip Hop系も使います。とにかく音が良くて時短になるので。
Native Instrumentsのドラム音源 Butch Vig Drums
Native Instrumentsのエレクトリック・ギター音源 Session Guitarist Series: Electric Mint
UJAMはBeatmakerシリーズやバーチャルドラマーなどのドラム音源をよく使いますね。ロックサウンドはButch Vigですが、エレクトロニックな雰囲気を出したいとかビンテージ感を出したいとかはUJAMですね。理由としてはNIを使うのと同じなんですが、これらもジャンル分けがされていて欲しい音にすぐにアクセスできるという点ですね!多くのジャンルを作りたい人にはNIとUJAMは強くおすすめしたいですね。
澤野さんのボーカルプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk]でこの楽曲に合うボーカルを探していたようなんです。そこでスタッフさんが僕を提案してくれたようで、澤野さんもNewspeakを知っていただいていたようで今回お声掛けいただきました。お話しをいただいた時はそれはもうめちゃくちゃ嬉しかったですよ!(笑)
とにかく声が良いと褒めていただけるようになりましたね。純粋に嬉しいですし、この曲をきっかけにより多くの方にNewspeakも知っていただけたら嬉しいですね。
これまで他の方にアレンジをお願いしたことはなかったのですが、Newspeakの楽曲に、劇伴作曲家である澤野さんならではのストリングスやピアノのアレンジが加わったらどうなるんだろう?と、ぜひやってもらいたいなと思っていて、実際にオファーをさせていただいたところ、引き受けてくださり、今回の実現につながりました。澤野さんのアレンジはボーカルが引き立つアレンジをして下さって周りからもかなり評判がよかったです。自分たちにできないストリングスアレンジもとても新鮮でとてもいい曲にしていただけたと思っています。
「White Lies (feat.Hiroyuki SAWANO)」Newspeak (澤野弘之氏リアレンジバージョン)
「White Lies」Newspeak (オリジナルバージョン)
そうですね。White LiesはNewspeakの曲を澤野さんにリアレンジしていただいたので、今度はNewspeakが澤野さんの曲を...とカバーさせていただきました。ボーカルはどちらも僕なので、シンプルにアレンジの違いをお楽しみいただけると思います。※このアーティストコメントは修正の可能性あり。
「INERTIA」Newspeakバージョン
とにかくバンドを大きくしていきたいですね。アニメの主題歌や澤野弘之さんとのコラボレーションなどこれまで経験したことないことを今年すでに実現したことで、Newspeakを知らなかった方々にも海外の方々にも聴いていただけるきっかけが増えてきているので、バンドとして飛躍できる一年にできたらなと思います。あと制作面ではお陰様で機材はだいぶ揃ってきたので次にギターの録り方を学んでいきたいなと思っています。
この記事をきっかけに僕のことを知っていただいた方もいらっしゃると思いますので、もし気に入っていただけたら今後のNewspeakの活動をチェックしていただけたら嬉しいです。
Newspeak 公式インスタグラム:https://www.instagram.com/newspeak_band/
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