What's SR20 ? 間瀬 哲史インタビュー

Overview概要

2015年初頭、私たちはEarthworksにある一つの依頼を出した。それは、SR20のレッドバージョンを製作してほしいという内容だった。このレッドバージョン製作を考えるに至ったのは、エンジニアの間瀬哲史さんが所有されているSR69(のちにモデル名をSR20に変更)のレッドバージョンを拝見したときのこと。黒やシルバーなどの無骨なカラーリングが多いレコーディング機材において、非常に異彩を放ち、目立っていたからだ。こういったカラーの製品を、私たちも製作してみたいと思った。
 
間瀬哲史さんといえば、このSR69、そして現行モデルのSR20をどの現場にも必ずもっていき、必ずどこかで使用しているというほどこの製品を愛してくださっているエンジニアの一人。そんな間瀬哲史さんに一足先にSR20限定レッドバージョンをお持ちして、SR20を使う上でのテクニックやSR20のすぐれたポイントを語っていただいた。

Interviewインタビュー

赤い相棒 

- 実は今回の日本限定レッドバージョン製作は、間瀬さんのSR69を拝見したときに思いついたアイディアなんです。間瀬さんがこれを導入されたのは、私たちがEarthworksの代理店となるよりも前で、すでに廃盤製品でした。この赤いSR69のインパクトが非常に強かったことと、間瀬さん以外にこの赤いSR69を所有されている方を見かけたことがなかったこと。そこで、日本限定で製作はできないものかと考えたんですね。
 
今年一番「テンションが上がった」ニュースでした(笑)。もともとのSR69も、現行モデルのSR20も本当に大好きなので、こういった製品の「復活」は嬉しいですね。
 
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SR69からSR20にモデルネームを変更

 
- 間瀬さんといえば、SR20の前身であったモデル、SR69(レッドカラー)を以前からずっと使っていただいている事は私たちの過去の記事はもちろん、さまざまなインタビューやウェブ記事などでも触れられてきましたが、このSR69はいつ頃から使っていらっしゃるのですか?
 
かれこれ15、6年でしょうか。当時はまだSR69という型番で販売していて、さらに当時はこのレッドモデルだけでなく、ブラックやシルバーもあったのですが、レッドが廃盤になる、という話を聞いたタイミングでしたね。その時に2本購入しました。その後ですよね?SR20という名前に変わったのは。
 
- そうです。各カラーが廃盤となったタイミングで、SR20という名前に変更になりました。カラーも現行のブラックのみとなりました。間瀬さんは、ご自身のほかにレッドをお持ちの方を見かけたことはありますか?
 
…ないですねぇ。こんなことを言ってはいけないかもしれないけど、当時はあまり売れなかったんじゃないかなぁ。マイクとしては奇抜なカラーだったし。
 
- 間瀬さんがご担当されている現場のいくつかを拝見させて頂いたことがありますが、レコーディング、PA問わずにどの現場にいってもこの赤いSR69(現SR20)はセットされていますよね?
 
もはや必ずといっていいほどに自分の現場の何かしらで使用しています。主には金物…シンバルやハイハット、ドラムのトップに使用することが多いかもしれません。
 
- ドラムのトップに使用されるときは、ライブ・レコーディング問わずに使用されるのですか?
 
そうですね。ライブのときにはウインドスクリーン(本体に付属)を使いますが、レコーディングのときはウインドスクリーンを外して本体だけで使用します。

SR69(現SR20)を必ず使う理由 

- SR20がファーストチョイスになる理由などがあれば教えていただきたいのですが
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まずは「ハイファイ」であることなんですが、Earthworksの中でもこのモデルは「ハイファイすぎない」ことが一番好きで、人間味があるなと思わせてくれる部分があるから。ハイファイを謳っているのに「耳に痛いだけ」という製品もありますが、Earthworks SR69(現SR20)はそういうことがない。これが最初にチョイスする理由です。シンバルとかトップに立てたマイクというのは、他の部分に立てたマイクと違ってゲートや波形を切るといった作業で「都合を合わせる」みたいなことができない部分ですよね。そういう意味では全体の中心となる大事なものであるわけです。低域から高域までをバランス良くフラットに録れるマイクはこれ以外にないと思います。
 
- 間瀬さんがSR69(現SR20)を「使用しない」現場はあるのですか?
 
いや、ないですね。どんな現場であっても必ず何かしらに使っています。ドラムのトップや金物だけじゃなくて、他で使うこともあります。もちろんSR20と他社のマイクを同時に同じ楽器に立てることもありますが、SR20を使わない現場はありませんね。以前はレコーディングやPA現場のたびにいろいろなマイクを実験的に試してみたりなんてこともありましたが、何だかんだいってSR69(現SR20)に戻ってきて、落ち着きましたね。
 
- 間瀬さんはレッドモデルのSR69、そして現行の製品であるSR20の通常モデル(ブラック)、そして今回のSR20限定レッドバージョンをそれぞれお持ちですが、それぞれ音を聞き比べてみていかがでしたか?
 
実はそれぞれ、微妙に違うんですよ。特にSR69はこの15年ほどの間に一度も修理もメンテナンスもしていないので、もしかするとどこかのパーツが経年変化で劣化していたりするのかもしれませんが、最新のSR20よりももうちょっとナローな感じはしますね。自分好みの経年変化をしてきてくれている印象もあります。ファーストチョイスは長年の相棒であるSR69になることが多いですが、音を聞いて現行のSR20に差し替えることもありますよ。
 
- 15年にもわたり一度も修理・メンテをしていないというのは驚異的ですね。
 
様々な現場で使っていますが、ときには落下させてしまったり、マイクにとっては過酷な湿度・環境で使ったりもしていますが一度も壊れていません。耐久性の高さは本当に素晴らしいですね。見た目はそんな風に見えませんが(笑)
 
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現行モデルであるSR20の方が芯が通っているような印象で、アコースティックギターの時にはSR20の方が登場シーンが多いですね。実はSR20を使う前までは、アコースティックギターのレコーディングには必ず複数のマイクを使ってレコーディングしていたんですね。定番のコンデンサーマイクの組み合わせで、アタックの部分と鳴りの部分をそれぞれ録って混ぜるという手法なのですが、SR20を使うようになってから、これ1本で全て録れるようになってしまったんです。1本で録ることで位相の問題も起きないし、理想的なレコーディングができるようになりました。
 
- Earthworksのマイクはその形状からか「図太い低域、ふくよかな中低域は録れないんじゃないの?」と言われることが多いのですが、その点はいかがですか?
 
これはですね、僕も様々な現場で言われます(笑)Earthworksのマイクを知らない方がいる現場などでは「えっ?これで大丈夫なんですか」とかね(笑)スペック云々で語るわけではない部分ですが、Earthworksのマイクは総じて下から上まで綺麗に録れるんですよね。下に関しては下手なラージダイアフラムのマイクなんかよりおかしなピークもないですしね。
 
- どういったマイクプリを組み合わせることが多いですか?以前に間瀬さんに実演していただいたセミナーでは「マイク本体がクリーンなので、クリーン系のマイクプリが合う」とおっしゃっていましたが、最近はいかがですか?
 
クリーン系のプリはもちろんですが、実はいろいろな組み合わせを試している中で、API系のプリも相性がいいなと思いましたね。このスタジオでもAPIやSHEP/NEVEと組み合わせて使用することがあります。マイク本体におかしなクセがない分、マイクプリの違いを非常に楽しめると言ってもいかもしれませんね。ただ、Earthworksのマイクは総じてレンジが広く、スピードも速いので、SSL系のようなクリーンなマイクプリを合わせたほうが「Earthworksらしさ」があるのかなと思いますね。
 

この楽曲のドラムは、何本のSR20でレコーディングしたのでしょう? 

AMU
HUSKING-BEE

- SR20を使用したレコーディングで、実際にお聞かせいただけるサンプルなどはありますか?
 
これはいつかメディア・インテグレーションの方にお知らせしないと!と思っていたものがあって、2014年にリリースされたHASKING-BEEのアルバム「AMU」の中の「Side By Side」という曲のドラムは、SR20でレコーディングしたんですね(と、言って曲を再生する間瀬氏)。
 
- イントロから図太いドラムが印象的ですね。
 
このドラム、「何本の」SR20を使用したと思いますか?実は「1本だけ」なんです!
 
- えっ?だってキックからシンバルまで、個々の音の輪郭もこんなにはっきりしているのに、1本ですか?
 
はい。もちろんマイキングの試行錯誤はしましたが、1本だけなんです。ドラムセットを正面からみて、キックとタムの間くらいに立てたのですが、自分でもびっくりするくらい良い音で録れたので、結果1本だけで仕上げました。曲がこういった音を求めていたという事もありますが、普通のマイクではきっと無理だったと思います。SR20の耐圧の高さ、周波数特性の良さ、ハイファイさが全て混じってできたことですね。
 
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キックの上にスイート・スポットといえる点があり、そこにマイクを立てて収録した。

SR20、実際の音 

- ドラムのトップにはほぼ必ず使用されているとのことですが、実際の音や演奏者からの評価はいかがですか?
 
SR69(SR20)をドラムトップに使用していると、特にドラマー本人からの評価が高いですね。僕にはわからないような微妙なニュアンスの差がきっちり録れているからなんだそうです。他のマイクを使ったときには「何か違うなぁ」と言われてしまっていた部分ですね。
 
- 周囲の人にはわからない、演奏者だけがわかる違いまでも抑えられているということですね。
 
エンジニアの立場からも分かる違いがあります。例えば僕がレコーディングを担当しているとあるバンドで、ドラマーがめちゃくちゃシンバルにこだわりを持っていて、レコーディングにものすごく大量のシンバルを持ってくる方がいるのですが、一般的によくドラムのトップに使われるマイクを使っているときには、ドラマーがシンバルを変えた差が「あまりない」なぁとドラマー以外のメンバーとコントロールルームで話していたんですね。ドラマーがこだわってニュアンスの異なるシンバルに変えたとしても、マイクがその差を表現してくれなかったんです。
 
- 実際に目の前でドラム本体を聞けばわかる違いが、マイクを通ることによって失われていたということですね
 
ドラマーは「この曲にはこのシンバル」とこだわっているのに、マイクがその微妙な違いを捉えていなかった。ところがSR69(SR20)をトップにしてみたら、コントロールルームにいた全員が一枚一枚の違いがはっきりとわかるほどだったんです。アタックの速さと、余韻の美しさ、全てを捉えていましたね。
 
それからドラムに使用するということであれば、耐圧が非常に高いことも付け加えておきたいですね。音が大きいドラムやアンプにも問題なく使えることは、エンジニアとして助かります。例えばわかりやすいのがハイハットで、結構近くまでくっ付けてレコーディングをしたとしても、アタックが鈍ったり歪んだりしないんですね。コンデンサーマイクとしては驚異的なくらい近い位置にセッティングも可能で、その上で理想的な音が録れる。キックに使っても大丈夫ですしね。
 
- エレクトリックギターのアンプなどにはいかがでしょう。
 
鳴っているアンプによって状況はまちまちですが、よく見かける一般的なマイクの置き方、スピーカーに向かって真正面にマイクを立てる方法では「ない」方法で録ると非常に良い結果になる気がしましたね。Earthworksのマイクって「目の前で鳴っている音そのまま」を録ることが非常に得意なので、少し斜めから狙ってみると思った通りに録れると思います。
 
- 少し斜めというと?
 
ギタリストがアンプの音を聞くときに「スピーカーの真正面から」聞くことはあまりなくて、大抵は少し上とか、少し離れた位置で聞きますよね。その上で音を作っているはずです。SR20のように性能のいいマイクを使うのであれば、その角度までを含めたようなマイキングにすると、演奏者からもいい反応をもらえる音になると思います。SR20は低域もしっかり抑えてくれるマイクだから、多少オフ気味(離して)セッティングしても、迫力が失われるようなことが少ないですね。
 
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- 多少オフ気味のセッティングでも大丈夫、とのことですが、近接効果(マイクが音源に近づくにつれ、低域が強調される現象)を考えると、離したときにローエンドが寂しくなったり輪郭が甘くなったりしないものですか?
 
これがEarthworksの面白いところです。他社のマイクをつかって多少オフ気味にセッティングしていくと、ある距離に達した瞬間に突然ローエンドがまるでスカスカになることがあります。なので必然的にある程度近づけないと音にならない。ところがSR20はそれがないんですね。あくまでも「その位置で自分が聞こえる音」のまま録ることができる。徐々に離していけば、ちゃんと「徐々に低域が薄くなっていく」んです。
 
- 近接効果の反応がリニアに変わる、といった感じでしょうか
 
そうそう。「急にここからダメ」というものがない。だから距離感を演出する録りにも使えるということですね。多少適当においてもそこそこの音になってくれるマイクもありますが、SR20は自分がこだわって置いた距離感もきっちり反映してくれるマイクだと思います。
 
- そのほか使ってみてよかったソースはありますか?
 
コンガなどパーカッション系はびっくりするくらい良い音で録れますね。コンガって割と気楽に録れそうな楽器の一つだと思いますがそれだけに奥深くて、いざやってみるとオケの中に埋もれちゃうことが多々あるんですね。SR20を使うようになってからは何よりもパーカッショニストから絶賛をもらうことが多くなりました。僕がレコーディングを担当させてもらった方の中には、その後ご自身でもSR20を買った方も何名かいらっしゃいますよ。ほか、ティンパレスにもよかったですね。
 
- SR20にはボーカル使用をする際の脱着式ウインドウスクリーンが付属していますが、ボーカルのレコーディングなどで使用されたことはありますか?
 
あります。結構ありますね。普通にセッティングして使うこともありますが、例えばハンドヘルドで歌いたいシンガーさんのときには必ずSR69やSR20です。
 
- ハンドリングノイズは問題ありませんか?
 
はい、全然大丈夫ですね。さらに、付属のウインドウスクリーンではなくてちょっと変則的なポップノイズ対策を…(といい、スタジオ内で何かを探し始める間瀬氏)
 
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こんな感じで市販のウインドウスクリーンを固定して、シンガーに歌ってもらったこともありました。ハンドヘルドならではの勢い、シンガーの歌いやすい環境作りにもOKでしたね。もちろん音もバッチリでした。よくある定番のレコーディングマイクを使ったときよりも….ちょっと抽象的ですが、深夜のラジオDJのような「いい声」ってあるじゃないですか。ああいういい質感で録れるんですよ。きっと多くのマイクと違って、ロー側がフラットだからなんだと思います。おかしなピークがない。特に、ダイナミックレンジの広いシンガーや曲の場合には、こっちで録った方がうまく捉えてくれるんじゃないかと思いますね。
 
- ローがフラット、という表現はものすごくよくわかります。
 
すごく抽象的ではあるのですが、低域って近接効果によって影響を受けやすい帯域なので、普通のマイクだと暴れたりニュアンスが変わってしまったりということが起きやすい部分ですよね。でもマイクを通していないシンガーの声は、ちゃんと目の前で鳴っているはず。そういった「今までのマイクでは変わってしまった」部分が、SR20にはないと言ってもいいですね。

本当の意味で「マルチに使える」マイク

ボーカルはもちろん、アコギ、ギターアンプ、ドラムほか打楽器、ピアノ、管弦楽器、何にでも使えるよ!という触れ込みのマイクは多いですが、僕はSR20こそそ「本当の」マルチに使えるマイクだと思いますね。見た目からするとものすごくソースを選びそうで、繊細そうで、なんか堅苦しそうなイメージですが、実際はまるで反対。先にも言いましたが、SR20、SR69を使わない現場はないというくらい必ず使っています。ほぼ毎日使用しているので、当然たまには落っことしたりもしますが(笑)、未だに一度も壊れていません。だから…僕の意識的にはどこのスタジオにいっても必ずある、あの定番マイクくらいの感覚で使っちゃってますね。本当はもっと大事にしなきゃいけないんだけど(笑)
 
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- 坂本龍一さんのヨーロッパ・ツアーのときにも同社のPM40(ピアノ・マイク)とともに持って行かれてましたもんね
 
そうですね。あのときもなかなかヘビーなツアーでしたが、SR69は大活躍でした。市販されているあらゆるマイクとキャラクターがかぶることもないし、何より聞いたそのままを録るという、マイクに求められる最高のことを普通にやってくれる。マイクを通すことで起きる変化や質感も好きですが、目の前のボーカルや楽器がいい音なら、そのまま収録するべきですよね。SR20はその当たり前の仕事を、きっちりこなしてくれます。
 
僕もこの限定レッドバージョンを含めて、合計5本のSR20(SR69を含む)を所有していますが、本当にどの楽器にもオススメできる、最高の1本です。

Profileプロフィール

profile_mase間瀬 哲史 (セカンドドリップ)

レコーディング/ミックス/PAエンジニア。
コロムビア・スタジオを経て2003年にフリーランスとなり、セカンドドリップを設立。 DJ KAWASAKI、Kyoto JazzMassive、沖野修也、坂本龍一などエンジニアとして様々なプロジェクトに参加する一方で、音楽機材の開発/製造や音楽スタジオのプランニング、音楽レーベルの運営など行っている。

SR20 Red日本限定スペシャル・エディション!

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  • 日本限定 30本のみのスペシャル・エディション
  • SR69として発売されていた当時のシャイニー・レッド・フィニッシュを復刻
  • 単一指向性
  • 優れた指向性特性によりスポットライティングのない均一な収音が可能
  • ウオームかつ低域がもたつかないバランスの良いサウンド
  • 独自の特許取得済デザインによる均質な指向特性と高いフィードバック耐性
  • ウインド・スクリーンを外してピアノ、ギター、ドラム、管楽器などの楽器用マイクとして使用可能
  • 繊細な表現まで正確に収音
  • 取り外し可能なポップノイズ防止用ウインド・スクリーン付属
  • オリジナル・モデルよりもSN比が約 7dB 向上
  • 耐入力 145dB SPL
  • ライブ、レコーディングの幅広い使用環境で素晴らしいパフォーマンス

お求めは全国の楽器店、またはMIオンラインストアにて。** 限定生産製品のため、完売次第販売終了となります。

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