2022.06.22
Spectrasonicsというブランドに出会ったのは、サンプラー用のCD-ROMだったと思います。90年代の後期だったと記憶していますが少し曖昧です。
それまでリリースされていたハードウェアメーカーの公式ライブラリーに比べて独創的で「音いいな!」という印象。そんなSpectrasonicsが出すソフトシンセに飛びつかないわけありません、2000年初頭はまだまだハードを使うシーンが多く(PCのスペックの限界)ソフトシンセは数えるほどしかありませんでしたが、限られた音源を厳選して使っていたと思います。なので、独創的で高音質な「Atmosphere」は鮮烈でした。
Atmosphere(のちのOmnipshere)は1つの画面で操作するタイプで、まるでアナログシンセで音作りをしているような感覚。1つの画面で操作するGUIは分かりやすく、アナログシンセで音作りをしているかのようにサクサク思った音を作ることができました。Trilogy(のちのTrilian)は初のベース専門音源ということで非常に高音質で、Stylus(のちのStylus RMX)は、当時のDAWで多くの制限があったリズムループを的確・柔軟・なによりも簡単に(テンポチェンジも自在)アレンジに組み込むことができました。Stylusはその後にStylus RMXとなり、僕のSpectrasonics熱は高まっていったことを覚えています。当時から「ソフト音源三種の神器」と呼ばれていましたが、1つだけ不満がありました。好みの問題もあるかもしれませんが、当時のエンジンはSpectrasonics社製ではなく、UVI社からのライセンスを受けたものを使っていて、当時のUVI独特の中高域のクセが気になっていたのです。すると、新世代自社エンジンであるSTEAMを搭載したOmnisphereがリリースされ、格段にレンジが広がり、高サンプルレート/ビットの時代に見合うものになり、さらに高機能になってプリセット(パッチ)も聞ききれないほどのものになりました。
その後、TRILIANやまさかの総合鍵盤音源KEYSCAPEがリリースされ「新・4種の神器」になり、OmnisphereにいたってはV2となり考えうるほとんどの音源方式も網羅。シンプルなサイン波からでも複雑な倍音をもつエグい音も作れるようになりました。それから実在するハードシンセの音色をそのままエミュレートする「ハードウェア・シンセ・インテグレーション」という一見意味のわからない新機能を実装。これは、ハードウェアシンセのサンプルをOmnisphereに持たせ、パッチ自体もエミュレーションして、接続したハードウェアシンセのつまみを動かすことであたかもそのシンセを触っているかのような機能....ってどんな発想でこれが思いつくのか分かりませんが、画期的でした。
「ORB」もお気に入り。これは、円形の枠の中にあるポインタを動かすことで、内部のあらゆるパラメーターをリアルタイムに操作して時間軸での音色変化をさせるもの。この機能がさらにイカしていたのは、iPadアプリOmni TRで直接指を使ってグリグリできるというもの。前述のハードウェア・シンセ・インテグレーションもそうですが、PC以外のハードウェアを使って有機的に音作り・パフォーマンスできるというのは新時代を感じましたね。
最初の登場から20年経った今でもOmnisphere 2を含む同社の製品を触るとなんだかワクワクします。ついついプリセットシンセになりがちですが、最近改めて使い直してみて、そのシンセシスの深さや柔軟さに驚きと発見があります!だって、FMしながらWaveShapeしながら倍音をいじりながら、という全ての変調を1つのパッチでできるシンセなんて、他にないですからね.....まだまだ知らない機能もあると思うので、そう思うと「一生モノのシンセ」というのは言い過ぎではないのかもしれません。
ちょっと欲張りかもしれませんが、次世代のSpectrasonics製品に期待してしまう自分がいたりします。