2020.08.04
新型コロナウイルスが蔓延する世界の情勢を見ていると、観客が多く集まる音楽ライブを以前の形で開催できるのは、残念ながらまだまだ先になりそうな雰囲気です。配信ニーズの高まりとともに、ライブハウスやアリーナーで体験できるサウンドと高揚感をどう配信で伝えるのか、無観客ライブ配信のミックスのクオリティー向上が課題になりつつあります。
スタジオでは定番となっているWavesプラグインが遅延なく使えること、ネットワークを使ってシステムを自由に構成して、ライブハウスやPA会社が所有する音響機器と簡単に繋げられることから、配信ミックスをより良くするための機材をSoundGridを中心に揃える方が増えていますが、単体のハードウェアと違って自由にシステムを組めるので、その分必要な機材構成がちょっと分かりにくいのも事実です。
このページでは、スタジオで使う場合とライブで使う場合、それぞれ目的に応じたお勧めのSoundGridシステムをご紹介します。
では、最適なシステムはどうやって組めば良いのでしょう?質問に答えていくだけで、必要な機材と構成がわかるチャートをご用意しました。
超低レイテンシーでプラグインがかかった音をモニター、録音、ミックス可能なシンプルな構成例です。
DiGiGridやApogeeのSoundGrid互換のオーディオ・インターフェイスを使うことで、リアルタイムのモニタリングとレコーディングが可能になります。プラグインの処理は、DAWにインサートされた無料のStudioRackプラグイン・チェイナーを介して、コンピュータのCPUではなくSoundGrid DSPサーバーで処理されます。
必要な構成は以下の通りです。
スタジオ内にネットワークを構築すれば、複数の部屋でプラグインを使いながら低レイテンシーで録音、モニター、ミックスを行うことも可能です。
SoundGridのネットワークによる拡張性を利用して、複数の部屋を含む大規模なセットアップで合理的なシステムを組むことができます。複数の部屋にI/Oを設置したり、複数のDAWワークステーション間で一つのI/Oを共有したりできるので、大規模なスタジオも少ないコストで構築できます。最大14台オーディオ・インターフェースを接続できるので、ニーズの変化に合わせてSoundGridネットワークを拡張していくことが可能です。
この場合、必要な構成は以下の通りです。
全てのWavesのプラグイン処理をコンピューターのCPUからSoundGrid DSPサーバに移すことで、プラグイン処理能力を事実上2倍にするための構成例です。
これは最もシンプルなSoundGridのセットアップ例です。ミキシング目的(リアルタイムでのレコーディングやモニタリングではなく)にのみSoundGridのパワーを使いたい場合、DAWに無料のStudioRackプラグイン・チェイナーをインサートすることで、プラグイン処理をSoundGrid DSPサーバーにオフロードすることができます。
すでにお持ちのオーディオ・インターフェース(ASIO / Core Audio)はそのままお使いいただけます。専用のSoundGrid I/Oは必要ありません。セットアップ方法はこちらに詳しく記載されています。
必要な構成要素は以下の通りです。
スタジオ用のセットアップで必ず必要なのが、このSoundGrid Studio v11です。
レコーディング、スタジオ・ミキシング用のSoundGridアプリケーションです。複数のバージョンが用意されおり、8ch版はWavesアカウントさえあれば誰でも無償で入手できます。
YamahaのCL, QLシリーズコンソールに16ch分のエフェクトラックを追加する構成です。WSG-Y16カードは最大4枚まで増やせるので、64CHまで拡張すれば、全トラックにWavesプラグインがインサート可能になります。
Yamaha以外のコンソールも同様の構成で、WSG-Y16カードの部分を各社から発売されているSoundGridカードに置き換えます。Allen & Heath, DiGiCo, Roland, Midas, Calrec等のコンソールメーカーが専用のSoundGridカードを発売しています。専用のカードが無い場合でも、DiGiGrid MGB/MGO MADI-SoundGridインターフェイスを用意することで、ほとんどのライブ/放送用コンソールに対応します。
必要な構成要素は以下の通りです。
この接続例では同時にマルチトラックで録音再生を行うためのコンピューターが接続されています。バックアップに複数のMac/PCに同じにマルチトラック収録が可能です。またSoundGrid DSPサーバーが2台接続されていますが、1台でも動作します。2台目を追加することで、1台目のサーバーの電源供給がストップしてしまった場合など、万一のトラブル発生時には瞬時に2台目のサーバーがリアルタイムでプロセシング処理を引き継ぎます。
デジタルコンソールにWavesプラグインをインサートするためのアプリケーションがSuperRack です。
入出力数と使えるプラグインの数はSoundGrdサーバーとI/Oの選択によって変わります。ほとんどのコンソールとMIDI Program Changeを受信してスナップショット(シーン)の連動が可能です。
ライブ会場のハウス・ミックスも配信用のミックスもSoundGridで全て完結させるセットアップ例です。ミキシングの処理もSoundGrid DSPサーバーで行うため、SoundGrid Extreme(-C)サーバーの使用が推奨されています。よくあるDante対応のライブコンソールのセットアップと良く似た構成です。SoundGridサーバーを2台用意することで、1台目のサーバーに万一問題が生じた場合、2台目のサーバーが全ての処理を引き継ぎます。コントロール・サーフェイスとしてWindows PCまたはMacに接続されたタッチディスプレイを使用しますが、万一コンピューターに問題が生じても、全てのプロセシングはSoundGrid DSPサーバーで行われているので、音が途切れることはありません。
必要な構成要素は以下の通りです。
このセットアップで必要なのがe-Motion LV1ホストアプリケーションです。
64ch入力、16AUX出力、8Matrix出力を持つ本格的なライブ・ミキシング・コンソールの役割を果たすSoundGridアプリケーションです。ほとんどの入出力にWavesプラグインをインサート可能です。サーバーのCPU消費が少ない16ch版と32ch版も用意されています。
SoundGridとはWavesが独自に開発したネットワーク規格の名称です。何だか難しい感じがしますが、使い始めるのに専用の高価なネットワーク・スイッチも高度なネットワークの専門知識は必要ありません。量販店でも入手可能なSoundGrid認証済みの汎用の1Gbpsスイッチを使って、全てのSoundGrid対応機器やコンピューターを接続します。
名前が似ていますがDiGiGridとはSoundGrid対応機器の一つで、DiGiCoとWavesが共同で開発したブランド名です。Yamaha, Roland, Avid, Apogeeなど、他にも多数のプロ音響機器メーカーがSoundGrid対応のオーディオI/Oを販売しています。
他にもネットワークでオーディオを伝送する規格は多数ありますが、他の規格との最大の違いは、ネットワーク内でオーディオのプロセシングがリアルタイムで行える、つまりWavesのプラグイン処理を行えることです。このページでご紹介したように、単にオーディオの送受信を行うだけでなく、スタジオでもライブ会場でも、180種類におよぶWavesプラグインのパワーと超低レイテンシー・プロセシング、そして音作りのバリエーションを享受できるのです。
このページでご紹介したセットアップはほんの一例です。SoundGridを使ったシステム構築のご相談はお気軽にこちらのフォームからお問い合わせください。