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ミックスの「アタリマエ」をビリー・アイリッシュと共に壊す:ロブ・キネルスキー

2020.02.07

ビリー・アイリッシュのアルバムは、彼女がルールに捉われない発想をもっていたからこそ、ポップカルチャーアイコンとしての地位を確固たるものにしたと言えます。アルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」のミックスを手がけたロブ・キネルスキーに、その大胆なミキシング哲学と、そしていかに彼自身もルールに捉われない発想でミックスを行なっているのか、話を聞きました。

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ここ最近、何かしらのメディアに触れた人であれば、ビリー・アイリッシュの名前を聞き逃すことはまずなかったでしょう。17歳のシンガーソングライターは、プロデューサーであり、兄でもある21歳のフィネアス・オコネルと共にポップスに大きな革命を起こしました。輝かしいベッドルームプロダクションが絶賛を浴びたデビューアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」が米国ビルボードと英国アルバムチャート、両方で1位を獲得したのです。

彼女のInstagramのペルソナ同様、そのユニークなプロダクション、ソングライティングで注目を集めているビリー・アイリッシュは、ジャンル、スタイル、ポップカルチャー、全てにおいて見事にルールを壊し、音楽に大きな変革をもたらすアーティストとして誰もが認める存在。そんな彼女のアルバムのミキシングエンジニアであり、”アイリッシュチーム”の3番目のメンバーでもあるエンジニア、ロブ・キネルスキーに、彼の大胆不敵さ、ミックスに対するアプローチ、ローエンドを裏付けるヒップホップ愛について聞きました。


- ロブ、アルバムの成功おめでとうございます!あなたは元々ロックアルバムの制作でキャリアをスタートさせたそうですが、他にもビヨンセやリアーナ、ビッグショーンらのアルバム制作も手がけたそうですね。ジャンルの垣根を超えた豊富な経験は、ビリー・アイリッシュとの制作でどのように活かされたのでしょう?

ビリーとフィネアス兄妹と初めて仕事をしたのは「Bellyache」という曲で、2〜3年前のことかな。あの曲はオーガニックなドラムで始まって、アコースティック楽器が入るポップ・ミュージックかと思いきや、コーラスを挟んで、さらにクレイジーな808サウンドが鳴り響く!という、完璧なハイブリッド楽曲でした。

僕は昔から、複数ジャンルの仕事をするのが好きでした。もともとロックから始めて、ニューヨークのSAE(大学)に行くまではバンドをやっていました。ジャージーショアのスタジオでプロデュースなどもしていたのですが、「このままでは自分が到達したいレベルに届かない」と思ったんです。マーケットが小さすぎて。僕はもっとビッグなレコードを手がけたかった。そんな時、ソニーにいた友人が大手スタジオのアシスタントの仕事を紹介してくれたことをきっかけに、ビヨンセのB'Dayというアルバムに携わることができました。それが僕にとってのアーバン、R&Bやヒップホップの道を開くことになるのですが、僕自身まったくの予想外で、自分がこのような道に進むとは思っていませんでした。

のちにLAに移り住んで数年間、No I.D.とコラボレーションし、Joey Bada$$のレコードをミックスしていたとき、ビリー・アイリッシュと繋がりができたんです。僕は、彼らの音楽スタイルとうまくコラボできると確信していました。ロックの人はロック、ヒップホップの人はヒップホップとそれぞれのサウンドを持っているものですが、僕はいつもその中間にいたんです。ビリーとフィン兄妹はすでに僕が多くのヒップホップレコードを手がけていたことを知っていて、僕のローエンド処理に好感を持っていたようです。1曲作って、知らぬ間に他の曲もできて、あっという間にEPが完成して、それが大成功しました。こうして、僕は彼らを手がけることになったのです。

- 「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」が大成功を収めましたが、これによってあなたにはどのような影響がありましたか?また、この成功が音楽業界に与える大きな影響について、どう考えていますか?

未来のことはわかりません。が、おかげさまでレコードをミックスしてほしいという依頼が殺到しています。今までも充分多忙でしたが、さらに忙しくなりました。いくつかのレコードが送られてきたので聞いてみると、なぜ僕に依頼したのかが分かって、嬉しくなりますね。

ビリーのしていることが、他の人たちがやりたいと思っていることをやるための道を切り拓くといいな、と思っています。彼女とフィネアスは型にはまろうとせず、本物であり続けただけです。ポップミュージックというものは「計算されつくされたり、自由にやったり」という波を行き来しているものと言えるでしょう。それは振り子のようなもので、もしかしたらこのレコードは、その振り子を違う角度に振らせるものになったのかもしれませんね。

- このアルバムは、みんなが聴いたことのあるような「良い音」にミックスするのではなく、何もリファレンスにせず制作されたとのことですが、これは多くのエンジニアにとっても物議を醸しそうです。

そうですね。でも、実際に何もリファレンスしなかったんですよ。僕がやりたかったことは、ドラムとローエンドにインパクトを持たせながらも、曲を輝かせたかった。完成したマスターを最初に聴いたとき「やばいな、なんかダークな仕上がりになっちゃったな」と思いました。このせいでGearslutz経由でダークなミックスの依頼ばっかりが来ちゃったらどうしよう、とヒヤヒヤもしたのですが、同時に「まぁいいか!素晴らしいサウンドじゃないか!」と思い直したり。いつもうまく行くとは限らないですからね!

何の努力もしていないのに魔法にかけられたかのように良いものができてしまうこともあるし、何をやってもダメなときもある。だから少なくとも現場の邪魔にならないことを心がけています。僕の信念は「余計なことするな」です。

- 今回あなたが手がけたレコードは、80年代に「カッコいい」とされていたものを根底から覆し、90年代のトレンドを定義したニルヴァーナの「Nevermind」を引き合いに出して語られることもあるそうです。

それについては本当に恐縮しています。ニルヴァーナのNevermindこそ、少年時代の僕の人生を変え、僕が音楽を始めたきっかけになったものですから。ビリーのレコードがヒットするとは思っていましたが、ここまでの大ヒットになることは予想していませんでした。僕はショーが大好きですし、今の子たちが彼女の音楽にどういう反応を示しているか知っているので、この大ヒットに一役買うことができたのは本当に光栄です。彼女はファンに力を与えているし、そういうことって、みんな必要としていますよね?

- このアルバムは聴くと、音数が少ないのに図太いという印象をもちます。あなたの元に曲のデータが届いたとき、すでに音数は少なくスペースのある状態だったのですか?

いえ、その反対で目一杯音が入った状態で僕のもとに届きました。図太いと感じてもらえるとしたら、それは「引き算」をしたからでしょう。彼女のボーカルはマイクにかなり近づいた状態で、かつウィスパーでレコーディングされているので、EQではかなり「引き算」をします。トラックに多くのスペースがあれば、ボーカルが非常に大きく聴こえる。あまり知られていませんが、レコーディングする要素が少なければ少ないほど、入れた要素は大きく聴こえるのです。ジョニー・キャッシュのボーカルと生楽器だけのアルバムをご存知ですか?ボーカルがとても大きく聴こえますが、それしか入っていないからなんです!反対に例えれば、400ものトラックを重ねれば、ボーカルはとても小さく聴こえるでしょう。

「Bad Guy」では、ベース、ボーカル、ドラムがあり、コーラスの合間に散りばめるようにシンセを使っています。スピーカーがブンブン言ってるだけなので、大きな音量で聴いてもいい。もしもミッドレンジが充実したものだったら、音量を上げるとともに耳を痛めてしまうでしょうね。

- ビリー・アイリッシュのボーカルは素晴らしく、年齢を感じさせないほど成熟したシンガーです。彼女の取り憑くような、でも美しい歌声はどのようにして実現したのでしょうか?

まず僕のところに、夢のようなボーカルステムが届きました。依頼を受けるものの中には時々「これは相当手がかかるぞ」というものもあれば、「これは壊してはいけない」と思うようなものもあります。彼らはベッドルームでボーカルをレコーディングしたのですが、耳がよく、素晴らしいチョイスをしていました。ベーシックなEQで2.5〜3kHzのミッドレンジをカットアウトして、Puigchild 670でコンプ、歯擦音の軽減にDeEsser、音量のばらつきを抑えるのにVocal Riderを使っています。その後はいつも、広がりとオートメーションを施すだけです。

RVox(Renaissance Vox)は僕のお気に入りボーカルプラグインです。どんなソースにも使えて、いつでもいい仕事をしてくれます。ボーカルを前に持ってきてくれて、音の粒立ちも綺麗に揃えてくれる。僕はかなり長きにわたり…もう10年になるかな、使っているのですが、今回のレコードでは届いたデータにかなりコンプがかかっていたので、さほど出番はありませんでした。

他にビリーのことでいえば、スーパードライで、距離の近いリラックスしたボーカル。リバーブもディレイもないんですよ。ちょっとリバーブを足してみたこともありますが、彼らは「いやいや、ドライのままで行こう」と言ってくれて、すごくカッコよくて大胆だなと思いました。何かトリッキーなレイヤーエフェクトを重ねるなんてことはあまりなくて、あのカッコいいボーカルエフェクトはすでに完成していたんです。僕のやり方でボーカルにエフェクトをブレンドできるように、エフェクトがかかったトラックの他にドライのトラックも用意してくれるのですが、僕が何かを足すとしても本当に微々たるものです。

- ダブルボーカルがミックスの中でとても大きく聴こえながらも、タイトに仕上がっています。どうやってリードボーカルにフィットさせるのでしょうか?

僕はよほど頼まれない限り、過剰な編集はしません。なぜならあえて「間違って」いたり、ユルい仕上がりを望んでいる人もいるからです。ヒップホップなんかは特にそうで、マウスノイズを残したり、不完全であることを求められたりします。以前、ミックスで音を綺麗に仕上げたところ「ちょっと、元に戻してよ。あれは意図的にやったんだから」と言われたことがあって慌てて戻したことがありましたが、結果はとてもカッコいいものになりました。

ダブルボーカルに広がりを持たせたいとき、それが僅かなものであってもアグレッシブでバカバカしいほど激しいものであっても、S1 Stereo Imagerで良い結果になる事が多かったのでよく使いました。サンプルの位相をずらして風変わりな処理ができるのも大好きですね。

- 学校なんかでも「全てのルールを打ち破れ!」と言いますよね…

ルールなんてクソ食らえ!とは言うものの、もしピアノのようなトラディショナルなものだったら、あまりクレイジーなことはしません。でも、ちょっと変わったキーボードサウンドだったら、S1 Stereo ImagerPS 22 Stereo Makerでミックスの枠から大きく飛び出すようなことをやりたいと考えちゃいますね。モノラルで聴いたときに音が消えてしまったって構わない。正直、僕は人が嫌がることをあえてたくさんやってみたいし、それでいいと思っています。大胆不敵でいたいですからね。

- いくつかの曲で、音作りにアソビ心がありますよね?まるで「サウンドクラウドラッパー」風のバイブスを感じたのですが。

正直、そんなつもりはなかったですね。フィネアスとビリーがほとんどの決断を自分たちで下していたので、僕はとにかくキックとボーカルをブンブン言わせてカッコよく盛り上げることに集中していました!僕の作業はほとんど、すでに彼らが作り上げたものをちょっとプッシュしたり、まとめたり、広げたり、味付けする程度。僕はこのアルバムの音を深く分析していなかったけど、そういう話題でみなさんが盛り上がってくれるのはとても嬉しいですね。

このアルバムで何か感じたものがあるかと言われれば、間違いなくビートルズです。僕はそのバイブスを感じ取っていたし、彼らもビートルズを聴いていたことは明らか。面白いことに、ビリーとフィネアスはビートルズのように大胆不敵で、自分らのやりたいようにやる人たちなんです。

- 今回のアルバムで、特に「Xanny」という曲に関して、ラウドネスやトラックの歪みについて多くのコメントがあるようです。あれは意図的なものでしょうか?

はい。すべて意図的にやったものです。人々が心地悪くなるほどの歪みをかけていますが、それがこの曲のバイブスなんです。もちろんメーターも持ってますし、メーターが飛ばないことを確認しながらミックスしましたよ!

マスタリングエンジニアに、ラウドにミックスしたものとそれほどでもないものを送って、いい方を選んでもらおうとしたのですが、関係スタッフは全員、この曲のラウドネスや歪みについて理解してくれました。「Xanny」はアルバムの全曲中でも僕のお気に入りで、ヘビーに変化していくとともに心をかき乱すようなサウンドが大好きです。

- 若者があのミリオンダラーサウンドをベッドルームで制作できるとしたら、現代のプロエンジニアはどのような役割を担うべきでしょうか?

人間の役割は常に変化し、すべてはケースバイケースなので一概には言えません。ミックスの仕事をしていると、ある時は「欲しい音に仕上がった!このまま持って帰るよ!」と言ってもらえることもあるし、ある時は「全然気に入らないんだけど。ちゃんと仕事してよ」と言われることもあります。自宅でできるミックスのレベルが上がっているので、シンプルにプロレベルなミックスに仕上げたいですよね。

例えばこれをヘアーカットに置き換えると、誰かがやってきて「髪を切ってくれ」と言われたとします。どうして欲しいのか?長さを揃えてほしいのか?剃り上げてほしいのか?僕らエンジニアはそれを決めるお手伝いをすることが仕事。かつてのミキシングは「余計なものは取り除く、何もないゼロの状態から始める」という精神で行われていたものでしたが、今はミックスのプロセスがもっと早い段階から始まっています。僕は、すでに出来上がっているものをブラッシュアップするのが好きなんです。

つまり、結局のところは関わっている人々が重要なのかなと思います。どんな場所でレコーディングしたとか、どんなツールをどんな風に使ったかなんて言われなければ分からない。このアルバムを事前情報なしに聴いて「ベッドルームでレコーディングしたように聴こえる」なんて言えないと思うんです。だって、そんな風に聴こえないから。

- 作曲、プロデュース、ミックス、レコーディングなどを少しずつかじってる子がいたら、どういうアドバイスをしますか?どれか一つを選んで専念することでしょうか?それともできるだけ多くのスキルを磨くことでしょうか?

僕なら全部やれって言いますね!好きなことを追いかけて、すべてやってみろって。その方が、自分が本当は何をやりたいのか分かると思うんですよ。ただしある時点に達すると、効率的に他の人と仕事をすることに信頼が置ける、ということを学ぶのだと思います。ビリーとフィネアスが素晴らしいのは、彼らは何でも自分たちでやるけど、人を信じてもいるということ。彼らは僕にとやかく言いません。

時に人は、物事に固執しすぎて自分で全部やらなければならないと思うことがあります。僕が独立したての頃、プロデュース業をやるかどうか不確かなまま仕事をしていました。自分自身が色々なところに「引っ張られている」ような気がしていましたが、ある日ついに「よし、ミックスだけに特化して仕事をしよう」と決めたんです。

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