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作曲からマスタリングまで、欠かせない「3つのモノ」 – 鈴木光人氏インタビュー

2020.08.19

鈴木光人氏の新プロジェクトmojera。ギタリスト/シンガーのnon氏を迎え、デビューアルバムとなる「overkill」を2020年4月20日にリリース。鈴木氏が携わるプロジェクトでは、欠かせない「3つのもの」があったという。


Omnisphereは「替えがきかない」音源

- 新プロジェクトmojeraのアルバムリリースの中で、私たちの製品をいくつかご利用頂いているとお聞きしました。鈴木さんといえば以前からSpectrasonics製品をご愛用いただいていますが、1つ目はOmnisphere 2でしょうか?

はい。入れ替わりの激しいソフト音源の世界で、なんだかんだで長いこと「使い続けている」ソフト音源といえば、やはりOmnisphereですね。これに替わるものはありません。

- どういった音色、あるいはどのような時にOmnisphereが登場するのでしょう?

僕の場合、楽曲を制作する段階で「ここにはあの音色を使おう」と決めたとき、すでに頭の中でOmnisphereを使うことが決まってるケースが多いですね。Omnisphereを使って作曲を始めることもあります。

- 具体的に、どのサウンドが鈴木さんの「ご指名」になっているのでしょう?

1つはボイスクワイヤー系の音。中でも気に入っているのは「Japanese Children’s Choir」というパッチ。これは長年使い続けていますが、いまだにこれを置き換える音源はないし、替えがきかない音ですね。だから楽曲制作をしている過程で「ここにクワイヤーを入れる」となったら、その時点でOmnisphereの音が頭の中で鳴っているほどです。

もう1つは、ナイロン弦のギターにストリングスがレイヤーされているパッチがいくつかあるのですが、これも長いこと使い続けていますね。mojeraアルバムの表題曲「mojera」のギターがわかりやすいのですが、このパッチに関しては、作曲のときにも使うことがあります。

- Omnisphereのアコースティックギターのパッチは、他社が目指しているような「リアル」なものというよりは、かなり作り込んだサウンドかと思います。

自分との相性というものもあるのかもしれませんが、パッと鍵盤に指を置いたときにイメージが湧いてくる音というか、指が導かれるように次の鍵盤を抑えているというか、シンプルに言えば「弾いていて気持ちがいい」音なんですよね。

- コンポーザー目線でいうと、こういった「イメージを膨らませてくれる音色」というのは、重要ですか?

重要ですね。頭で思い描いたものが自然と鍵盤を通して鳴ってくれる感覚。それから、Omnipshereの音色はどれも鍵盤で演奏したときのベロシティの反応や押さえ込んだときの蠢きが素晴らしいんですよ。本当に、ユーザーのことを考えて緻密にプリセット作成されているんだなと感じます。

ちなみに何度か、他の音源に差し替えをしてみたこともあるのですが、何度やっても成功した試しがない(笑)さらに「このギターは後から生演奏に差し替えるから、ラフで入れておこうか」なんてことがあったときも、やっぱりうまくいかなかった(笑)結局このOmnipshereのパッチに戻ってきてしまうんです。

- それは、嬉しいですね(笑)

そうして完成したトラックをミックスエンジニアのところに持っていくと「このギター、よく録れてるねぇ」なんて感心されちゃって。でも、そういうことなんだなと思いますね。ぼくの体に染み込んだ「こういう音色の1つ」という感じ。


お気に入りのRolandビンテージシンセが、めちゃめちゃいい音で蘇っている

- Omnisphere 2がリリースされたのが2015年、そこから本日2020年までのアップデートは全て無償で行われてきたのですが、特に2.5、2.6のアップデートでは実在するハードウェアのシンセサイザーを「ハッキング」するかのような”ハードウェア・シンセ・インテグレーション**”機能が追加され、60種もの”実在する”ハードウェアシンセサイザーのオシレータが追加されました。

** ハードウェア・シンセ・インテグレーション
Omnisphere 2.5フリーアップデートにて搭載された機能。対象のハードウェアシンセサイザーをコンピュータに接続してOmnisphereを起動すると、ハードウェア上のツマミやスライダーが自動で同様のパラメーターにアサインされる。対象シンセサイザーの基本オシレータも付属し、ハードウェアの限界を超えた音作りが可能になる。

アップデートが公開されてすぐに、自宅スタジオのRoland JUNO-106で試してみました。Omnisphereから音が出ているはずなんだけど、ハードのJUNO-106で完璧なコントロールができてしまって。

- 錯覚を起こしますよね。単なるMIDIラーン的な機能とは違いますし。

個人的に嬉しかったのは、このアップデートで追加された60ものシンセの基本ウェーブ(オシレーター)が追加されたことですね。特に、昔所有していたローランドのアナログシンセサイザーが充実しているのが嬉しい。

- 各シンセサイザーのオシレータを使ったプリセットパッチも充実していますし、Omnisphereには古今東西のシンセシスエンジンも搭載していますので、死角なしの音作りができるようになっています。

実機を所有した経験があるから言えますが、こっち(Omnisphere)でいいかも、むしろこっちの方がいい!と思ってしまうクオリティですね。めちゃくちゃ音がいいんですよ。

- Hardware Synth Integrationで追加されたシンセは、Access、Sequential、Korg、Moog、Clavia、Yamahaなどシンセサイザーの歴史の中でも重要なブランドが集まっていますが、特にRolandに関してはSpectrasonics代表のエリック・パーシングさんがサウンドデザインを務めていたという背景もあって、よりエリックさんの「理想に近い形」でRolandビンテージシンセが蘇っているのかもしれませんね。

たしかに、そうかもしれない。本当にいい音なので制作に没頭できるし、実際いろいろな制作で使いまくっていますね。毎回のアップデートが膨大なので、時々「今日はサウンドをセレクトする日」なんてのも生まれてしまうけど、だからこそOmnisphereの中から「必ずこれを使う」というマイセレクトみたいなものを見つける楽しみもあるのかもしれない。

...そういえば、楽曲の中でストリングスを使うときに「必ず」Omnisphereの「Hollywood Studio String Section」をうっすらと低域の補強のように入れるんです。重厚さが全く違ってくるんですよ。今やリアルなストリングスをソフトウェアで再現するものがいくつもあるけど、そういったものを使っていたとしても、Omnisphereで下を補強します。

以前エンジニアさんに聞いたことがあるのですが、このパッチを入れることで得られる独特な広がりは「低域の位相がすごく独特」なんだそうです。狂っているとかじゃなくて、変わっていると。だからどんなストリングスを上に被せても埋もれないし、心地よく広がりが出て良い感じになるんですね。

- ご愛用いただいている「Hollywood Studio String Section」のパッチは、実はOmnisphereの前身、Atmosphereの時代からあるもの、つまりAtmosphereリリース時の2002年にはもう完成しているサウンドです。

そう思うと、僕もこのサウンドと長い付き合いになりますね。長年使っていますが、これを超えるものがないというのはSpectrasonicsならではとも思いました。同じ音を使い続けると「飽きる」瞬間がくるものですが、それがない。

- ギタリストが愛用のギターを長年使い続けるけど、アンプやエフェクターを色々と試行錯誤するように、鈴木さんにとってOmnisphereのいくつかのパッチは愛用の「楽器」のようなものなんですね。

確かに、そうかもしれませんね。


まったく新しいことを「したくなる」楽器

- 2つ目はどの製品でしょうか?

ROLIのSeaboard Blockですね。僕はLightPadも含めたSongMaker Kitを使っています。2019年に出演したROLIのイベントで初めて使い出したのですが、あの時のイベントでやったような指先でのビブラートやモジュレーションの表現がすごく面白いなと思って、イベント後もずっと使い続けていますね。

- 長年ハードウェアのシンセサイザーに慣れ親しんだ方にとって、ピッチベンドレバーやモジュレーションホイール等は「シンセの左側に独立してある」というのが一般的なのかなと思いますが、Seaboardを導入されて、すぐに慣れましたか?

正直にいえば、すぐに慣れることはできなかったですね。でもそれって、Seaboardのことを従来の鍵盤楽器の延長のようなものと思い込んで触っているなと気づいて。まったく新しいデバイスなんだなと思って改めて触り出してみたら、そこからは割とすぐに使えちゃいましたね。

- “Seaboard"という新しい楽器として触れてみることが大事なのかもしれませんね。

そうですね。でも今までも同様に様々な「新しいデバイス」を試してきましたが、それらと比べればすんなりと使いこなすことができましたね。従来の鍵盤的な演奏じゃなく、まったく新しいことをしたくなるし、実際Seaboardはこれそのものが「楽器」なんだと思う。

- 指10本を全て使って演奏する必要もないし、たったの1本で演奏しても、かつてない表現が可能です。

今回ある制作でふと「フルートの音を使いたいな、Seaboardで演奏したら面白そうだな」と思いたって、すぐにレコーディングしてみたら1、2テイクくらいでOKだったんですよ。

- 音源は何を使われたんですか?

付属のROLI Equatorですね。オーボエとフルートの中間みたいな音がプリセットにあって、それを使いました。わずかな指の揺れが絶妙な表現力を醸し出していて、あれはSeaboardでないと出せませんね。もっとも、僕自身も「まったく同じものをもう1回弾いて」と言われてもできないかもしれない。

- ギターなんかも同じですよね。機械的に全く同じフレーズを2回演奏することは不可能に近い。絶妙なピッチの違い、タイミングの違いがあるはずです。

そこが音楽的に面白いんですよね。すでにいくつかのソフトウェアシンセがSeaboard(MPE=MIDI Polyphonic Expression)に対応しているし、これからももっと増えると思うんですが、アナログモデリングのシンセなんかをSeaboardで演奏したら、今まで聞いたことのない複雑な表現力を持った音が生まれそうです。


iPhoneで偶然録った素材が、最高の素材に

- 3つ目はどの製品でしょうか?

今回のプロジェクト(mojera)の中では、iZotope製品が大活躍しました。mojeraを一緒にやっているギター&ボーカルのnonも自分でDAWを使って制作をしているのですが、彼女はよくフィールドレコーディングした素材を楽曲の中に散りばめるんですね。フィールドレコーディングなので目的以外の音が入ってしまうことは日常茶飯事ですが、そこではRXが大活躍しました。

- mojeraのデビューアルバム、overkillを聞かせて頂いたのですが、随所に散りばめられた不思議な音はフィールドレコーディングによるものだったのですね。

最も印象的だったのは、雷の音ですね。ある曲を2人で制作していたときに、僕がふと「ここに雷の音を入れたいんだよねー。でも、市販の効果音ライブラリの音を使うというのも、なんか違うね」なんて話をしていたらnonが「あ!私(自前の)雷の音、持ってます!」なんて言うんですよ。

- すごい偶然ですね!

自前の雷サンプルを持ってる人なんて珍しいですよね(笑)で、「ただ、iPhoneの内蔵マイクで録ったものだから、使えるかどうかわからないけど確認してみます」と言ったんです。数日後に届いたその音を聞いてみたらこれがまぁ「むっちゃ理想通りの雷の音!」だったんです。

- 雷って、普通にマイクを使ったレコーディングでもなかなか良い音で録ることが難しいですよね?

ですよね。僕も疑問だったのでどうやって録ったのか聞いてみたんですけど、街を歩いていたときに偶然ものすごい雷に見舞われたけど、手元にハンディレコーダーも持っていなかったから、やむなくiPhoneで動画で撮影したんだそうです。かなり大きな雷だったようで、周囲の人の叫び声とかも入っちゃってたし、その他にも不要な音がいっぱい入ってたそうなんですよね。

- そのままでは楽曲の中で使えない状態だったということですね。

nonはそれを「iZotope RXを使って、叫び声やノイズを取り去っちゃいました!」なんてライトに言うのですが、本当に楽曲のイメージに合う完璧な雷でしたね。僕自身もRXは使っていますが、視覚的に取り去りたい音だけを狙って消すことができて、元の音にも影響がない。やっぱりこれに替わるツールはありませんね。唯一無二です。

- RXの特徴でもあるスペクトログラム+波形の表示で、またリペア・アシスタントによる提案や、さまざまな除去スタイルが揃っていますので、フィールドレコーディングのみならず、自宅レコーディングなどをする方にとっても今後は重要なツールになっていきそうですよね。

一点注意があるとすれば、視覚的にノイズが「わかっちゃう」から、どこまでもノイズ消しの作業をしちゃいかねないということですね。やりすぎに注意という意識ももちつつ、愛用しています。


プラグインなんだけど、人間と一緒に作業をしている感覚

- 同じくiZotopeの代表的なプロセッサー、Ozoneはいかがですか?

ベッドルームスタジオの場合、自宅でマスタリングする機会も増えると思います。そういう場面でOzoneは「超」大活躍です。

- どのような使い方をされたのでしょう?

マスタリングで重視するのは「全体の統一感を出すこと」。特に曲数が多い場合尚更ですよね。アシスタント機能を使ってまずは1曲1曲に同じ方針の下地を作ってもらい、そのあとで各プロセッサー、特にリミッターの調整など、完成度を上げるための基準を自宅環境で作れるのは大きいと思います。

- iZotope製品のアシスタント機能(AI)は、「それを使えば(それだけで)誰でもいい音になる」というコメントをたまに見かけますが、このアシスタント機能はスタートラインに立つためのものであって、そこからの調整がキモになりますよね。

その通りです。アシスタント機能は使いますが、アシスタント機能が吐き出した結果をそのまま使うということはない。1曲1曲を聴きながらその曲にあった「仕上げ」が重要ですね。このアシスタントがまかなってくれる部分は「音楽的な作業ではないけども、今までかなりの時間を費やさねばならなかった」部分なので、今回のミックスを行っている過程で不思議と「相棒」のような感覚があったのは事実ですね。プラグインなんだけど、人間と一緒に作業をしている感覚というか。

- 実際の制作の中でも”アシスタント”さんはなくてはならない存在ですよね。

そうですね。そのアシストがあるから自分の仕事に没頭できるというか。Ozoneのアシスタント機能はそういう意味でも優秀だし、助けられました。音の良さというはもちろんなんだけど、iZotopeは単なるツール以上の体験をさせてくれますね。


プロフィール

mojera(mitsuto suzuki)

non : guitar / vocal / computer
mitsuto suzuki : syn / computer

エレクトロニック・シューゲイズユニット。空間を自由に飛び交う電子 音と斬り裂くノイズギター、そしてどこか懐かしいボイス。現実と非現実が交差する lyrics は、淡い景色の中の光と希望、そして闇。2020 年 4 月22日フルアルバム『overkill / mojera』をリリース。2020 年型 pop music。

www.mojera.net

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