BUZZERBEATS Chiva:3種の「クリエイティブ」エフェクト
FXPansionの3プラグインBloom、Etch、Maul 製品レビュー
2014.08.06
人によって「クリエイティブ」の解釈や、クリエイティブな自分を引き出せる瞬間は違うでしょう。ギターを持ったり、ピアノの前に座ることでクリエイティビティが発揮できる人。フェーダーを触っているときにクリエイティブになる人。あるいは映画を見たり、読書をしたり、旅をすることで。
もしかすると「何もしていないとき」にクリエイティブな自分が発動する方もいらっしゃるかもしれません。
これまでZEEBRA、NITRO MICROPHONE UNDERGROUND、DABO、童子-T、SHINGO☆西成、般若、サイプレス上野とロベルト吉野、KOHEI JAPAN、RYUZO、”E”qual、TARO SOUL、ICE DYNASTY…名前を上げきることすら大変なほどのプロデュース、トラックメイク、リミックスワークに大活躍のBUZZERBEATS。
メンバーのChivaさんは「サンプルを組み上げて、エフェクトで音作りをしているときに最もクリエイティブになる」と言います。中でも、非常に個性的で独特の質感を持ったFXPansionのBloom、Etch、Maulの3プラグインは「いい意味で素材をぶっ壊したい」時に威力を発揮してくれるとのこと。そんなChivaさんに、それぞれのプラグインのレビューと、実際にサウンドを加工したサンプルを作成して頂きました。
Bloom - Creative Delay and diffusion
僕は主にダンスミュージックを基調とした楽曲を制作しているので、サンプルを組み上げてエフェクトで加工して音作りをするということがよくあります。クリエイティブな効果が得られるエフェクトであるほど制作も楽しくなるし、燃えますね。FXPansionのBloomは、いい意味で素材を「ぶっ壊したい」と思うときに威力を発揮してくれますね。僕はとにかく面倒くさがり屋なので、いかに実用的なプリセットが大量に用意されているかが非常に重要w。プラグインエフェクトを立ち上げて、「なんか面白くならないかなぁ〜」とプリセットをポチポチ切り替え。この作業で比較的早めにいいプリセットが見つかったりすると「コイツ、使える」となるわけですね。
という意味でBloomは最強に「使える」、優れたプラグインでしょう。もちろんBloomにはたくさんの面白い機能もあって、自分で追い込んでいくこともできますが、僕は単純に面白いディレイエフェクトとして認識しています。そこで、僕的にお気に入りのプリセットをいくつかご紹介させていただきます。
* Bloom使用前のベーシックトラック
・Ambient Ping Pong RD
歪んだギターサウンドにBloomを掛けています。ディレイで飛ばしつつ、簡単に広がりが得られて一気にトラックに雰囲気が出てきてくれて最高。ブラス系のサンプルにもハマりそうです。
・Fast Percussion PC
Drumのフィル部分に掛けてみました(若干エグいですがw)場面転換のタイミングで、単調になりすぎないような工夫が欲しい時に重宝しています。このサンプルではDrum全体に掛かっていますが、スネアやハイハットだけに掛けてみてもいい感じかもしれないですね。
・Creature TM
これも歪んだギターに掛けてみました(最後の一小節はドライ)。上のAmbient Ping Pong RDとはまた違ったディレイと広がりになっていますね。プリセットを選ぶだけでこうして様々なバリエーション、違った印象の仕上がりが手軽に得られることも魅力の1つだと思います。
Bloom総評
このように超面倒くさがり屋の僕でも簡単に使えてしまうという寛大さと、ヘビーユーザーのニーズにも応えられるような細かい設定が可能なところの2つの面を併せ持つBloom。気になるCPU負荷も非常に低く、動作も軽快なのでガンガンインサートして使うことができます。
Etch - analogue-modelled filtering device
Etchは強烈なフィルター・プラグイン。フィルターということで僕が真っ先に思いつくのは近年のEDM的な4つ打ち楽曲でのサイドチェインを活用した使用方です。このEtch、コンプも搭載されているので、ビートもののサンプルをよりグルービーに仕上げることができる印象があります。ベースや、コードもののシンセにもガシガシかけてみたくなりますね。ここでもまた、面倒くさがり屋の僕でも納得のプリセットをご紹介させていただきます。
* Etch使用前のベーシックトラック
・Envelope Wah TM
和音を弾いているシンセに対してサイドチェイン的な効果を狙って掛けています。Filter2とコンプのノブを弄ることでより「サイドチェイン感」が簡単に演出できてしまう辺りに非常に好感を感じます。
・Light Comb Sweep TM
これも和音のシンセに対して掛けたもの。うっすらスウィープさせるような処理がほしいときにオススメのプリセットです。これはまさにちょうどいいプリセットでした。
・Glitchy Melody SG
プリセット名からも、実際のサウンドからも「ぶっ壊し系」であることはすぐに分かったのですが、ただ壊すだけなら元の素材が何であっても変わらないところ、Etchは「破綻させない」絶妙な仕上がりになるところが素晴らしいです。
Etch総評
近年のフィルター系製品って「もう、元の素材がなんでもいいんじゃね?」という単なる飛び道具が多いように思うのですが、Etchは質実剛健というか、しっかりしたフィルターだなという印象です。しっかり、音を作り込みたくなる奥深いプラグインだと思います。
Maul - distortion and tone shaper
Maulはディストーションにイイ感じのフィルターが複合されたプラグイン。プリセットを一通り見てみるとベースに対してのものが多いように見受けられたので、今回は主にベースに使ってみることにしました。
* Maul使用前のベーシックトラック
・Firm Bass Guitar MB
軽い歪み感と、うっすらとフィルターがかかるプリセット。ほどよくハイ落ちしたベース感がイイ感じです。ロー・ミッド・ハイの各バンド毎にサチュレーションのオン/オフ、ドライブの種類が多数用意されているのがいいですね。このプリセットをロードして、ローのドライブを軽くブースト。さらにカットオフを2kHz辺りに設定してあげるだけで太さと明瞭さが同時にでてくる格好いいベースに仕上がるでしょう。
・Raw Vowely Bass DV
フェイザーのようなエフェクトがちょうどいいファンク感を演出してくれます。ちょっとエグいかな、と思ったらS+HのRateを少し右に回し、ミッドのドライブを”Op-Amp”に切り替えてみてください。太さとグルービーなノリを兼ね備えたベースを生み出すことができます。従来のアンプシミュレーター系プラグインでこういった「直感的な」操作が難しく、思い通りのサウンドにならないことが多かったのですが、Maulはそのストレスから開放してくれましたね。
・Dirty Bass Distor
プリセット名から読んで字のごとし、ベースにダーティーなディストーションサウンド。各楽器によってどれくらいが「ダーティー」と呼べる範囲なのかの見極めは難しいところですが、プリセットから手軽にこのサウンドが得られるというセンスの良さが素晴らしいところ。ちょうどいい歪み感とグルーブ感が出てきます。
Maul総評
最近歪みものといえばアンプシミュレーターばかりを使っていたので、こういったプラグインは逆に新鮮に感じます。ブレイクビーツもののDrumに生ベースを弾きつつこのプラグインを挿して、イイ感じのグルーブ感サウンドを作りたくなりますね。
プロフィール
CHIVA (from BUZZERBEATS)
音楽プロデューサー . TrackMaker . Composer . DJ etc.
ZEEBRA、NITRO MICROPHONE UNDERGROUND、DABO、童子-T、SHINGO☆西成、般若、サイプレス上野とロベルト吉野、KOHEI JAPAN、RYUZO、"E"qual、SEAMO、TARO SOUL、KEN THE 390、等など…HIP HOP勢のプロデュースは数知れず、その手腕はPUSHIM、RYO the SKYWALKER、NG HEAD、加藤ミリア、m-flo、May J.、JAMOSA、ケツメイシ、九州男から、郷ひろみまでと、ReggaeやR&BからPOPSのプロデュースやリミックス にも及んでおり、今後ますます活躍が期待される。