検索
ベースサウンドは千差万別

ベースサウンドは千差万別

スタッフHです。私は仕事柄、さまざまなクリエーターの方やエンジニアさんとお会いしてお話を伺うことがあるのですが、それぞれの方のセッションファイルを拝見させていただく際に必ずチェックしているのが、ベーストラックの処理です。

2020.01.01

曲の土台であり、コードのボスであり、リズムの要だからです。アコースティックベース、エレクトリックベース、シンセベースを問わず、さまざまなポイントをチェックします。 可能であればエフェクトを施していない「すっぴん」のサウンドを聞かせていただいたり、ハードのシンセを使用したシンセベースなら「どこまでを本体で作って、どこからはプラグインで処理にしているか」を見させていただいたり。当然ながら、個々のクリエーター/エンジニアによって手法は千差万別です。ほとんどDIの音だけで(アンプの音は使わずに)軽くEQだけで仕上げるエンジニア、びっくりするくらいたくさんのプラグインを用いて神業的なサウンドを作りあげるクリエーター、ペダル型のプリアンプとエフェクターでで個性的なサウンドを作るミュージシャン。 手法は千差万別、といえば、Wavesから発売されているシグネチャー・シリーズのことがふと頭に浮かびました。このシグネチャー・シリーズ、世界に名を馳せるエンジニア/プロデューサーの「手法」をプラグイン化したもの。現在までに5人の方の「手法」が発売されています。 人によってサウンドは千差万別。ではそれぞれのエンジニア/プロデューサーによって、どうサウンドの傾向が違うかをチェックしてみようと考えました。ジャズベースをオーディオインターフェース(Metric Halo Mobile IO ULN-8)に直接つなぎ、エフェクトは全く使用せずにレコーディング。

こちらが素のサウンド

このセッション、マスターチャンネルにリミッターを掛けている以外はベースに一切の処理を施していません。この曲を元に、それぞれのエンジニア/プロデューサーの方のベース用プラグインを掛けて、比較してみましょう。


トニー・マセラティ

トニー・マセラティさんといえば、アリシア・キーズ、ビヨンセ、Jay-Z、Black Eyed Peasといった近年のヒットチューンを手がける方。ニューヨーク的な香りがします。このプラグインはトニーさんがベースを処理する時に使用するいくつもの機材や、その接続方法、順番、バランスなどの手法をプラグイン化したもの。ベースのタイプでDI(エレクトリックベース)かSynthを選び、あとは高域と低域のツマミで微調整するくらいでOK。 パッと聞いて分かるのは、独特の丸みと、低域の充実。ボトムを支えるベースの役割がはっきり感じられるようになりました。ハイポジションの演奏をしているときに目立っていた耳障りな高域がほどよく丸められて、曲の中に溶け込んでいるようにも感じます。 特筆すべきは、このプラグインにコンプのパラメータが一切ないこと。しかしながら心地のいいコンプレッションがかかっており、粒立ちのそろったサウンドに仕上がっています。


エディ・クレイマー

エディ・クレイマーさんといえば、音楽の歴史に残るであろうたくさんの作品に携わってこられたエンジニア。ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、Led Zeppelin。近年はジミ・ヘンドリックスの未公開レコードのリリースで世界中を賑わせていますね。 このプラグインにもエディさんらしい特徴が表れています。どんな環境で再生されてもベースラインが埋もれないクリアなサウンド。トレブルのツマミを最大まで上げても心地よいプレゼンス。このセッションでは、モード1(コンプほどほどモード)を使用しています。


クリス・ロード・アルジ

クリスさんが手がけられたアーティストといえば、グリーン・デイ、U2、ナイン・インチ・ネイルズ、フー・ファイターズなどなど。近年の王道ロックサウンドは、クリスさんが開拓したといっても過言ではないでしょう。 CLA Bassプラグインには、特徴的な「ディストーション」スライダーがあります。激しいベースラインを演出するのにディストーションは有効ですが、闇雲に歪ませるとローエンドを失ったり、曲の中で耳障りなトーンになってしまいがち。ところがCLA Bassはそういった破綻を起こすことなく、印象的なディストーションベースを作ることができます。ここではタイプ「RIP」のディストーション(最も歪む)で半分ほど歪ませています。


ジャック・ジョセフ・プイグ

JJPさんはカリフォルニアのオーシャン・ウェイ・レコーディングスタジオを拠点に活動されるエンジニア/プロデューサー。ジョン・メイヤー、レディー・ガガ、Beck、ローリングストーンズ、Black Eyed Peas、U2などなど手がけられています。ジョン・メイヤーとレディー・ガガを並べると、音楽的にはかなりかけ離れているようにも感じますが、この幅の広さがJJPさんの魅力でもあるのでしょう。 JJP BassのGUIを見てみると、パラメータの名前が印象的。アタックを出したい時には「ATTACK」。エッジを立たせたい時には「EDGE」、コンプでリリースを伸ばしたような効果を得たい時には「LENGTH」などなど。 これはアーティストとエンジニアさんの「やりとり」そのものなのかもしれませんね。「もうちょっとアタック感がほしいんだ」とか「ギザギザしたようなエッジのある音にしてくれ」だとかね。 今回のセッションでは、SUBのツマミを使って超低域を補強するサウンドに仕上げています。ヘッドフォンやモニタースピーカーなどの方が確認しやすいかもしれません。また、アタック、エッジ、レングスなどの特徴的なパラメータで派手めの仕上げにしてあります。


最後に

どのサウンドが最もお好みでしたか? ここでご紹介したサウンドは、それぞれのプラグインのほんの一面です。実際にはかなり幅広くサウンドメイキングをすることができます。CLAを使ってクリーンなベースサウンドを作ることもできますし、JJPで落ち着いた(派手じゃない)サウンドだってOK。ベース以外に使ってみても面白いかもしれませんね。 ここまでご紹介した4つのシグネチャー・シリーズに、新たに5つ目となるMANNY MARROQUIN(マニー・マロクィン)シグネチャーがリリースされました。こちらはこれまでのシリーズとはちょっと毛並みが異なるプラグインなので、また別の機会にご紹介できればと思います。

人気記事

Waves AudioがWaves Cloud MX オーディオ・ミキサーとソニー製 ソフトウェアスイッチャー「M2L-X」のコラボレーションを発表
Waves AudioがWaves Cloud MX オーディオ・ミキサーとソニー製 ソフトウェアスイッチャー「M2L-X」のコラボレーションを発表

NAB Show, Las Vegas, 2024年4月14日 — Waves Audioはラスベガスで開催される2024 NAB Showのソニーブース(Central Hall #C8201)にて、Waves Cloud MX Audio Mixerとソニーの先進的なソフトウェアスイッチャー 「M

コンプレッサーの種類ってたくさんあるけど、どれを使ったらいいの?
コンプレッサーの種類ってたくさんあるけど、どれを使ったらいいの?

今回の記事では、コンプレッサーの種類と、それぞれのコンプレッサーをどのような場面で使用するのかを学んで行きます。VCA、FET、Optical、Variable-Mu、デジタルコンプレッサープラグインなど、様々な種類のコンプ

ミックスで「コンプのかけ過ぎ」を避ける7つのコツ
ミックスで「コンプのかけ過ぎ」を避ける7つのコツ

ミックスする時に、コンプレッションをかけすぎたり不足したりはしていないでしょうか?全てのコンプレッションに目的を持っていますか?かけすぎで躍動感が失われたり、逆にルーズすぎてかかりが弱かったりというこ

11のステップでプロのサウンドへ。ドラムのミキシング
11のステップでプロのサウンドへ。ドラムのミキシング

コンプレッションやEQの設定、位相トラブルの修正方、さらにトランジェントのコントロールまで、ドラムミックスの"いろは"を学んでいきましょう。 さらに、パラレルコンプレッションやリバーブを使い、深みと奥行

やり過ぎ注意!いいミックスに仕上げる11個のポイント
やり過ぎ注意!いいミックスに仕上げる11個のポイント

ミキシングの休憩から戻ってきて、曲の方向性が間違っていることに気付いたことはありませんか? さっきまではいい感じのトラックだったのに、今聴くとなんだかイマイチに感じる。 プラグインの使いすぎは、ミキシン

アンプシミュレータでよりリアルな音を作るテクニック
アンプシミュレータでよりリアルな音を作るテクニック

ギターのレコーディングでは、実際のアンプを使った録音と、アンプシミュレータを使ったプラグインでの方法があります。ここでは、アンプシミュレータで完璧なサウンドのギターパートをレコーディングするための重要

人気製品

Ultimate
Greg Wells VoiceCentric
Greg Wells VoiceCentric

人の声は歴史上でもっともパワフルな楽器、と言って間違いではないでしょう。ほぼすべてのジャンルでボーカルは非常に重要な地位を占めています。ミックスで自然に馴染む、完璧なボーカル・サウンドをつくり上げるた

Ultimate
Essential
Waves Stream
Waves Stream

友達、共同制作者やクライアントと、DAWからロスレスオーディオをリアルタイムで共有可能。ボタンを1回クリックするだけでかんたんに実現します。

Horizon
Horizon

音楽の創造は1990年代にアナログからデジタルへ、ハードウェアからソフトウェアへ、2000年代にはコンピューターのパワーの上昇によりインザボックスでの制作、ミキシング、マスタリングは一般的なものになりました。

Platinum
Platinum

モチベーションも高く制作を進め、ミックスも基本のプロセッシングからキャラクーを生かしたバランスを取った作業がができた。数曲をトラックダウンして、作品として発表するところまでもう少しという段階。ここまで

Ultimate
Essential
Clarity Vx
Clarity Vx

Clarity Vxは、ボーカルをバックグラウンドノイズから取り除き、あらゆるミックス、プロダクション、ポッドキャスト、ビデオ用にサウンドを整える最高品質かつ最速の方法です。Waves Neural Networks®が搭載されてい

Diamond
Diamond

インスピレーション、閃いたアイデアをトラックへと作り上げ、数々のツールを使ってミックスし、磨き上げ、最高の状態でトラックダウンする。Diamondは、Platinumバンドルのプラグインをすべて収録し、さらに原石と

Ultimate
JJP Vocals
JJP Vocals

Jack Joseph PuigによるJJP Vocalsについてのコメント: “ボーカルをミックスする時に気を付けているのは、直感と本能だ。どのディレイをとか、EQをどうするかとか、コンプレッサーの設定とか、そんな技術的な話では

Ultimate
Essential
VU Meter
VU Meter

VU Meterにより、DAWでのミックスに、業界の定番となっているメータリング・メソッドを導入することが可能になります。VU Meterを使用することで、より最適なレベル、十分なヘッドルーム、そしてクリアなミックスを

Products
Solution
Contents
Support
Company
Instagram YouTube