2022.07.05
2007年の発売時、そのルックスとコンセプトがホームレコーディングの常識を覆したApogee Duet。さらに洗練され進化したApogee Duet3について、ボーカルミックス・歌ってみたMIXで使用してもらい、感想をお伺いするシリーズ・インタビュー。
第1回はにじさんじをはじめとするVtuber業界で人気作品のMIXをはじめとしたサウンドエンジニアリングを手掛けるYABさんにお使いいただきました。
Media Integration(以下MI)
歌モノの制作でお使いいただいたとのことですが、Duet3のファーストインプレッションをお聞かせください。
MI
特に薄さには驚きますよね。
デザインが洗練されていてすごくカッコいい!というのが正直な第一印象でした。クリエイティビティが刺激されるデザインだなって。宅録で、Macだけで完結するような作業、いわゆるITB(In the box)で制作することを求められることが多い現代のニーズを想定して作られたんだなと思いました。
MI
Duet 3を見ているとITBで全部済ませてしまおうかなという気になりますよね。
MI
いい音がしそうなデザインとのことですが、実際の音質はいかがでしたか?
ApogeeはQuartetをしばらく使っていたんです。音がすごくよかったので、当時も選んでよかったなと思っていました。今回、Duet 3で音を出した時の印象は「やっぱりApogeeの音だな。これ、すごいいいかもしれない」でした。解像度も高く、音の粒が細かく感じ取れたので、AD/DAの品質に相当力を入れていると感じました。
抽象的なんですけど、天井が高いというか、気品があるというか。空間表現、エアー感が見やすいというか。とにかく歪みがない、コンパクトだけどApogeeの音だなというのが最初の印象でした。
MI
主にお使いになったのはヘッドフォンでしょうか、スピーカーでしょうか。
MI
そうなんですよね、外でも使えるというのが特徴でもありますね。
最近MacBookを持ち出して、デモ音源を外で聞かなきゃいけないことが多いんです。音源をチェックして修正指示を出すとか。本当はヘッドフォンアンプも持ち歩きたいんですけど、使っているヘッドフォンアンプはすごい高いものなのでさすがに難しくて(笑)。でもDuet 3のクオリティなら外でのチェックも安心してできるなと感じました。
タイトなスケジュールのCM制作があって、ミックスも外でやる必要があったんです。出先でオケとボーカルの素材もらって、ノイズの除去からやって納品したんですけど、ノイズがちゃんとノイズに聞こえましたし、Duet 3だけでちゃんと判断してストレスなくミキシングできました。
納品後にいつもの環境で聞いてみて、「Duet 3は信頼できる機材だな」というのが確認できました。
MI
操作性などの面で特筆すべき点はありますか。
MI
確かに長く愛される機器はシンプルなものが多いですよね。Duet 3とビンテージ機器に通じるものがあるというのは面白い視点だなと感じました。
DSPミキサーの操作子がないっていうのが良かったんだと思うんです。DSPミキサーを使いたい人は使えばいいし、ボリュームだけ操作できればいいという人は難しい操作を覚えなくて済みますよね。初心者にもやさしいなと感じました。
MI
Duet 3にはApogee FXプロセッシング用のDSPエフェクトが内蔵されていますが、使ってみていかがでしたか?
Symphony ECS Channel Stripは使いやすかったですね。EQのポイントも良いポイントに設定されています。Symphony ECS Channel Stripだけでボーカルミックスをしてみたんですけど、普通に完成品を作れるクオリティでした。
MI
音はどんな印象でしたか?何系の音だったとか、特筆すべき印象があれば教えてください。
MI
わかりやすいです(笑)。かけた分だけかかる感じですね。
そうですね、そんな印象です。でもキュってやっても破綻はしない感じでした。
コンプについても、強くかけてもそんなにコンプサウンドにならないというか。ガチガチに固める時は別のコンプの方がいいと思いますけど、普通にボーカルミックスとかをするのには向いていると思います。
MI
アタックもリリースもコントロールできない仕様なんですが、不便さ、不自然さはありませんでしたか?
そういえばないですね(笑)。自然なかかり具合だったのでアタックとリリースの設定がないことすら言われて気づきました。強くかけても固くなりすぎず、潰れすぎず、いい塩梅でした。コンプが苦手な人にはいいかもしれません。
スタンダードなチャンネル・ストリップとして使えるクオリティは十分あると思います。パラメーターも少ないので余計なことを考えずに使えるストリップだと思います。
MI
最後に、Duet 3はどういう人に向いている機器だと思いますか?
スピーカーで大きな音が鳴らせない人、ヘッドフォンミックスでのクオリティを高めたい人にはいいと思います。
もしくは自分みたいにいろいろな環境に持ち運んでチェックをして、OK/NGの判断をしなければいけない人。モニター環境の正確性や品質を求めるプロデューサーとか。コスパもいいので、所属のタレントの子たちにも全員に持たせたいなと思いました。
MI
付属のケースもいいんですよね。
そうなんです、セミハードケースなので、このままリュックサックにボン!って突っ込んでも大丈夫です(笑)。音のいいオーディオインターフェイスって持ち運ぶのが大変なんですけど、Duet 3は可搬性も考えられていますよね。
持ち運べるデザインなのに、ちゃんとApogeeの音がするっていうところがの良いところですね。Apogeeの音が好きなんですけど、期待を裏切らない音でした。
MI
Apogeeの音。嬉しいコメント、ありがとうございました。
2013年に専門学校を卒業し、音楽業界で働き始める。2019年にYAB Studio開業。その後ゼンハイザージャパンとPR協約を結び、ゼンハイザーおよびノイマンブランドのアンバサダーを務める。Media Integration社の主催するミックスコンテストの審査員や、NEXONの人気タイトルの企画での音楽協力、音楽専門学校で特別講師、にじさんじをはじめとするVtuber業界で多数人気作品のサウンドエンジニアリング・プロデュースを手掛けるなど多方面で活躍中。制作業務の99%を歌ものが占めており、個人の歌い手さんからの歌ってみたMIXも多く手掛けている。
Duet 3