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Sonnox Fab Tips No.2:ベースドラム、低域に宿る命

(再掲記事)プロデューサー/エンジニアのFab Dupontによるアドバイス

2016.02.04

blog_20160204_fabFab Dupontによる、低域、ベースドラムの処理について解説したレビュー。音の「太さ」についての考え方や、EQを行う際に知っておくべき低域の特性、ベースドラムのミックス用に使えるOxford EQのスタートアップ設定例など、ローエンドに関する様々な話題を取り上げます。

近年ではプラグイン・デベロッパー、ハードウェアメーカーの開発にも携わるだけでなく、音楽制作のあらゆるテクニックが学べるpureMix.netを主催。そのテクニックを惜しみなく公開しています。

** 本記事は弊社旧ウェブサイトに掲載していた記事を移植したものです


 

Fab Tips No.2 – ベースドラム、低域に宿る命

低域に宿る命について話そう。ローエンド、300Hzよりも下にある生命。僕の友人であるティムが言う「獲物」がいる場所、いわゆる「太さ」と呼ばれるものだ。最近のレコードを聞ききながら常に思うのは、この帯域を確実に処理するのがいかに難しいか、ということ。

「太い音」は、人によって様々な意味を持っている。もし誰かがあるミックスについてベースが軽いね、と言うとき、そのコメントだけでは、あまりヒントにならない。例えばクラブDJとiPodのリスナーは、「太い音」についてそれぞれ違った意見を持っているはずだ。iPodリスナーはおよそ70Hz前後の低音しか必要としないかもしれない。でもクラブのスピーカーシステムなら、パンツの紐が切れるくらいの勢いで、30Hzクラスの音を吐き出してくるだろう。こうした様々な人の意見を理解するには、自分自身の「太い音」を、ブランドとして厳密に定義しておく必要があるんだ。


 

blog_20160204_oxeqlf低域に一体何があるのかを学ぶために、いい方法がある。君が素晴らしいと思う曲にOxford EQをかけ、ハイパス・フィルターを36dB/Octに設定してから、20Hzから400Hzの間で、周波数をゆっくりと上げ下げしてみる。Oxford EQは非常にクリーンなフィルターを備えているから、帯域を上げていくと、フィルターで帯域が削れられ、様々な周波数帯がどのようなカラーを曲に与えているか、はっきりと区別できるだろう。さあ、試してみて。待っているからね。

ね、面白いでしょ?このやり方のほうが、特定の帯域をオーバーブーストする古典的な方法よりも、ローエンドを決定づけるスポットを見つけやすくなると、僕は思う。

さて、上記の方法をミックス内の個別トラックでも試してみよう。そう、そのとおり。アンプ・シミュレーターを通して録音したギターには100Hz以下の音は入っていないし、さらに808のハイハットなら200Hz付近には何もない、などなど。

もうひとつ別の練習だ。1000Hzの、そうだな-6dBくらいのサイン波を作って、DAWのモノ・チャンネルに置いておく。ここでOxford EQのTYPE 1をインサートして、バンドを80Hz、Qは10に設定。オーケー、じゃEQのゲインを20dBブーストしよう。何が起きるかな?ズルはしないで、きちんと試してみて。そう、何も起こらない。なぜか?EQが持ち上げた帯域には何もないからだ。EQはすでにあるものしか補強できない。単純だし当たり前のことじゃないか、と思うかもしれないけど、ちょっと待って。この変な実験には意味があるんだ。

blog_20160204_80hz

ベース・ドラムは何で成り立っているのか?EQは何も無いところから音を作り出すことはできない、と分かったところで、トラックをブーストする前に、ローエンドに何があるのかを、明らかにしなくておかなくてはいけないね。ベースドラムをソロにして、やってみようか。

もし、ぱっと聞いただけでは何がどうなっているか分からない場合は、前に試したやり方でフィルターをかけてみよう。もしボトムエンドの量感が足りない、もしくは20〜90Hzを付近を削っても特に違いがない、と感じたら、次のいずれかの方法で低域を補ってから、以下に進んでほしい


 

  • ベースドラムを別のサンプルなどに差し替える。
  • ローエンドを補強するプラグインなどを挟む。

さて、十分な素材が出来上がったら、次の2つの方法を実験してみよう

  • 古典的な手法。より聞きたい箇所をブーストする、思い切りよく、でも過度にならないように。
  • もうひとつの方法。不要だと思う箇所を削る、全体のレベルが下がってしまう場合は、フェーダーでブーストして補正する。(なぜ全体のレベルが下がってしまうか、についてはまた別の機会に話そう)

 

2番目の手法の方が、ミックス全体を通して、ゲイン・マネージメントの問題を回避しやすくなるんじゃないかな。「ゲイン・マネージメントの問題」とは何かって?これはクリップのLEDを避けるために、2時間おきに全部のフェーダーを選択して、-6dB下げたりしなきゃいけないような状況のことだ

ここまで読んできて、パーフェクトなベースドラムを作る具体的な方法が載っていないことに、がっかりしている人がいるかもしれない、僕も『Oxford EQを、TYPE 3で80Hzを+5dB、9.9kあたりをシェルフにして、250HzはQ5.6で4.8dBカットするんだよ、上手くいくといいね』みたいに答えてあげられればと思うんだけど、物事はそう単純にはいかないんだ。EQについてくるプリセットがうまく当てはまらないことが多いのも、それが理由だ。Sonnoxのスタッフがプリセットを用意しなかったのも、同じ理由からだろう。

それでも、このTipsを書く上で期待されていることでもあるので、僕がアコースティック・ベースドラム(マイクとプリアンプを使って、人間離れしたドラマーというプレイヤーが叩いて録音した素材)にOxford EQを使うときの、スタート・ポイント設定を書いておこう:

Oxford EQ、TYPE 3、5 band + filters

Hipass: 36dB/octave、35Hz、低域の「うなり」を抑える
Low: 40〜80Hz(ドラムによって異なる)、主に低域の力強さを調整する
Low Mid: 90〜200Hz、プリアンプ/マイクポジションによる、濁りを取り除く
Mid: 300〜800Hz、上記と同じ理由でこの帯域に設定する
Hi-Mid: 1〜2kHz、アタック感の調整
Hi: 10KHz〜(10kなんてベースドラムに必要?もちろん、きちんとレコーディング されたキットなら、ここを突くことで、込み入ったミックスに埋もれないサウンドが作れる)


 

筆者について:

Fab Dupontはフランスに生まれ、現在はニューヨークを拠点に、世界各地のスタジオでミュージシャン/プロデューサー/エンジニアとして活動しています。マンハッタン、イーストビレッジにある彼個人のスタジオでは、ジェニファー・ロペス、マーク・ロンソン、アイザック・ヘイズを初めとする多くの作品が生み出されています。「The Rundown」や「Washington Heights」といった映画のサウンドトラック、さらにアップル 、モトローラ、ジョンソン&ジョンソンといったCM音楽まで幅広く手がけるなど、多方面でその才能を発揮しています。

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