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Sonnox Fab Tips No.1:すべてのイコライザーがイコールではない

(再掲記事)プロデューサー/エンジニアのFab Dupontによるアドバイス

2016.02.04

blog_20160204_fabFab Dupontによる、低域のEQ処理にスポットを当てたレビュー。彼は長年のSonnox Oxford製品のユーザーであり、NAMMやAESといったイベントではSonnoxプラグインのデモも行っています。数多くのトップアーティストの作品を手がけてきたミュージシャン/プロデューサー/エンジニアの視点から、Oxford EQについてだけでなく、EQ全般のノウハウにも深く触れる内容です。

 

近年ではプラグイン・デベロッパー、ハードウェアメーカーの開発にも携わるだけでなく、音楽制作のあらゆるテクニックが学べるpureMix.netを主催。そのテクニックを惜しみなく公開しています。

** 本記事は弊社旧ウェブサイトに掲載していた記事を移植したものです


 

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Fab Tips: すべてのイコライザーがイコールではない

ベストなサウンドを最小限の時間で得たい、これは常日頃から僕の悩みの種になっている。そしてSonnox Oxford EQこそ、過去のあらゆる場面で、この問題を解決してくれたプラグインだ。

同じEQを何度も使って慣れてくると、さまざまな新しいトリックや、そのEQの性能をより引き出す手法が見つかるものだ。Oxford EQを特別しているのは、そのサウンドだけじゃない、機能やちょっとしたレイアウトなども含んでいる。ここでは作業に熱中していると忘れがちになる、でもとても重要なことについて触れていこうと思う。

 

 

地下スタジオと低音処理

例えば…どれくらいの人が、レコーディング中にあらゆる低域の周波数帯までチェックする時間を取っているだろう?少なくとも僕にはあまりその時間がない。本当はそうすべきだ、僕が作業している地下スタジオはニューヨーク市内にあって、Fラインが1ブロック先を走っているんだから。僕には聞こえないような超低音の「うなり」も、Soundelux 251コンデンサーマイクが見事に拾ってくれるせいで、まれに録音したすべての素材にこの「うなり」が混ざってしまっていることもある。聞こえないなら別に問題ないだろうって?いやいや、ちりも積もれば…だよ。

コンプレッサーは、その音が可聴範囲にあるかどうかに関係なく処理をする。それが20Hzだろうと200Hzだろうと同じだ。特に20Hz以下によけいな音が入っていると、ボーカルのコンプレッションは非常に難しくなってくる。サイドチェイン入力を使うと、ボーカルに必要もなしに過剰なコンプレッションがかかってしまうことだってあるだろう。

なぜ自分のトラックが、お気に入りのエンジニアや他の人のミックスのような、パンチのある仕上がりにならないのか、と悩んだことはあるかな?そんなときは、まずトラックのボトムエンドを注意深く調べてみよう。10〜30Hz近辺の無用な音がトラックの大半を占めている場合、ミックスからエネルギーを引き出すのは、想像以上に難しい戦いになるからだ。

トラックを賢くフィルタリングすることで、こうした問題を解消できる。僕のやりかたは、ミックス内にある、あらゆるアコースティック・トラックの最初のスロットに、Sonnox Oxford EQ Filter、もしくはOxford 5-band + Filterをインサートするという方法だ。実際、これはミックス中に、僕が唯一意識せずに行っている作業だ—とにかくOxford EQのフィルターをすべてのトラックの最初のスロットにインサートする。フィルター処理を適切に行ったボーカルトラックは、コンプレッションやEQに対する反応も良くなるし、他にも多くのメリットがある。

もちろん地下鉄だけが低域の「うなり」の原因じゃない。エアコン、コントロール・ルームからの低域の漏れ、コンピューターのファン、階上の自宅で子供達が飛び跳ねていたりするかもしれない。Oxford EQなら、EQのカーブが選択できる上、どんな帯域の楽器でも、音の透明感を保ったままローエンドを形作ることが可能だ。どのローエンド帯域をどれくらいカットするかを、正確に実現してくれる。

ブーストよりもカット

あるレコーディング素材がこもって聞こえる場合、どれだけ素晴らしいEQで高域をブーストするよりも、「覆い」となっているローエンドを整理することで、より自然でオープンなサウンドになる。このことを発見してから、僕は最初に足りないと感じる箇所をブーストするのではなく、シグナルの要らない帯域を取り除く作業からスタートするようになった。180〜320Hzの濁った部分をハイパスするだけで、リードボーカルの高域が驚くほど違って聞こえてくる。足りないと感じていた帯域が、すっと浮かび上がってくることもあるんだ。

こもったトラックを耳にすると、どうしても直感的に10kHz付近に手が伸びてしまう。みんなもそうだよね?曇ったボーカル・トラックの10kHzを好きなだけブーストして、ソロで聞いている間は素晴らしいサウンドに聞こえる。でもミックスに戻したときには、どうやってもオケに馴染まない。ここがカギなんだ。ミックスとは自分でピースを彫っていくジグソーパズルのようなもので、パズルを完成させる前から、すべてがぴったりと収まるように作らないといけない。とても扱いの難しい作業だ。

音を彫り出す

こうした音を彫り出す作業に、僕はOxford EQのTYPE 2カーブを使う。TYPE 2は最も細いカット・カーブを備えている。シグナルを完全な状態に保ったまま、非常に細かい外科手術的な作業を可能にしてくれる。僕がボーカル用に使っているセッティングは…スタートポイントと言ってもいいかな、次のとおりだ。

Oxford 5-band + Filter: TYPE 2

Hipass: 36dB/octave、100Hz付近に設定。
Low: シェルビング、400Hz付近に設定。ボーカルトラックで起こりがちな、近すぎるマイクの低域部分を突くことができる。
Lo-Mid: 160Hz付近に設定。僕は生まれながらこの帯域を信用していないというか、あまり好きじゃない(個人的な好みの問題だと思う、気にしないで)。
Mid: 480Hz付近、鼻にかかる部分の問題に対処するために設定している。
Hi-Mid: 2.8kHz固定、これはデジタルっぽい耳障りな部分を処理するために使う。
Hi: シェルフ、10kHz付近、以前プリアンプなどで流行った、行き過ぎた10kHzのEQブーストを補正する。

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さっきも述べたように、この設定はスタートポイントに過ぎない。実際の帯域は、曲のキー、ボーカリスト、マイク、気候、目指すべき色付け、政治的な理由などなど、様々な条件で変わってくるからね。

そして、自分の耳とバイパス・ボタンはいつでも君の親友だ。必ず、必ずだよ、EQをかけたトラックと、バイパスしたトラックを、レベルを揃えた状態でミックスに戻して比較すること。今やっていることが、サウンドを向上させているか、それとも台無しにしてしまっているか、常に確認しながら作業を進めよう。


筆者について:

Fab Dupontはフランスに生まれ、現在はニューヨークを拠点に、世界各地のスタジオでミュージシャン/プロデューサー/エンジニアとして活動しています。マンハッタン、イーストビレッジにある彼個人のスタジオでは、ジェニファー・ロペス、マーク・ロンソン、アイザック・ヘイズを初めとする多くの作品が生み出されています。「The Rundown」や「Washington Heights」といった映画のサウンドトラック、さらにアップル 、モトローラ、ジョンソン&ジョンソンといったCM音楽まで幅広く手がけるなど、多方面でその才能を発揮しています。

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