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Ivory II セッティングの流儀

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セッティングの流儀 – ピアノ音源Ivory IIシリーズ編

2017.03.16

ソフトウェア音源だって「チューニング」が必要?

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ギターやベースを演奏する前に各弦をチューニングするように。アコースティックドラムを叩く前に皮の張りやハイハットペダルを自分好みに調整するように。ソフトウェアにもユーザー各々の環境(マシン)に応じた「最適なセッティング」があります。

CPUの速さに重きを置いたコンピュータをお使いの方。DAWでは重要とされるRAMメモリを重点的に増設されている方。写真や映像などにも興味があり、HDD等のストレージに力を入れている方。あるいは上記の全てを重視していて、さらにSSDなどの高速ドライブなども導入されている方。もちろん、買ったままの状態で何もカスタマイズされていない方まで。コンピュータのセッティングは全世界のユーザーの数だけ千差万別と言っても過言ではないでしょう。

言い換えれば「友人がうまくいった」というセッティングが必ずしも自分の環境にマッチするわけではなく、自分の環境と特性を理解した上でソフトウェアのセッティングを行うことで、音楽を作ったり録音したりする方にとって最も大事な「快適さ」を得ることができる、とも言えます。

 

大容量音源は特に「セッティング」が大事

近年では当たり前ともなりつつある、「1の楽器に数GB〜数十GB以上を使用している」大容量音源。私たちの取り扱い製品でもいくつものブランドが今や大容量音源と進化しています。元となる楽器の隅々までを「サンプル」することが重要なので、音程・ベロシティ・奏法・共鳴・環境の変化などに応じた丁寧なサンプル収録が大容量の元となるわけです。

本日はその中で、大容量音源の中では長い歴史を持ち始めたピアノ音源、SynthogyのIvory IIシリーズに関して、少しだけ「セッティングの流儀」をご紹介したいと思います。

 


Ivory IIシリーズのおさらい

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「究極のピアノ音源」と評されることの多いIvory II。製品としては4つのラインナップを持ちます。

  • Ivory II Grand Pianos

インストールに要する容量は約80GB。本製品には3つのグランドピアノを収録。Steinway、Bosendorfer、YAMAHAです。平均すると1台のピアノ辺り25GB前後を使ったサンプリングが行われている製品。ピアノと一口に言っても音は千差万別。このIvory II Grand Pianosは、バリエーションを求める方に選んで頂きたいピアノ音源です。

  • Ivory II Italian Piano

インストールに要する容量は約28GB。上記のGrand Pianosよりもぐっと敷居は下がりましたが、実は本製品に収録されたピアノは1台だけ。製品名ともなっているイタリア製の「F」から始まる308ピアノ1台を徹底的にサンプルした音源。「F」はピアノ造りの歴史こそまだ浅いものの、その美しい木工の流線加工から一挙にピアノメーカーのトップブランドに躍り出た会社です。

  • Ivory II American Concert D

インストールに要する容量は約50GB。たった1台のピアノに対してこの容量を費やしていることからも、その力の入り具合が垣間見えます。使用したピアノはSteinway。スタインウェイといえば多くの方がドイツをイメージされるかと思いますが(事実、創業者はドイツ人ですが)、その創業の地はニューヨーク。そして本製品に使用されたピアノは「ニューヨークの」D。ちなみにIvory II Grand Pianosに収録されているSteinwayは”German D”。

  • Ivory II Upright Pianos

インストールに要する容量は、シリーズ最大となる約85GB。こちらは製品名の通り、世界中のピアノの中から最高コンディションの4つのアップライトピアノを収録した製品。「習い事のピアノ」の世界では「アップライトピアノはグランドピアノの代用品」とも言われることもありますが、ポップスやジャズ、ブルース、ロックの歴史の中では「全くの別物」、アップライトだからこそ生まれた名曲も多いことでしょう。本製品は貴重なアップライトピアノを4種に渡り収録したピアノ音源です。


Ivory II シリーズ、セッティングの流儀

 

  • サンプルデータの置き場

Ivory IIシリーズは、遅れが発生してはいけないアタック部分をRAMメモリに。超ロングサステイン部分までを丁寧にサンプリングしたリリース部分をHDDよりリストリーミングするという方式を採用しています。これは、FXPansionのBFDとも同じ方式ですね。これにより、最新最速のマシンでなくとも幅広いマシンに最適化を行うことが可能になるのです。

上記の通り、Ivory IIシリーズは最低でも28GB、最大で85GBの容量をもっていますが、これらのデータをインストールする場所に適しているのは…..

 

  1. OSがインストールされているドライブとは「別」の場所
  2. DAWでオーディオレコーディングを行うドライブとは「別」の場所
  3. 他の大容量音源のサンプルデータがインストールされたドライブとは「別」の場所

 

これが理想です。もちろん「全てクリアしていないとダメ」ということではありません。また、SSD(ソリッドステートドライブ)をお使いであるならば、1番と2番はかなりいい感じで「無視」できます。3番に関しては一緒に使う音源やSSDの質にもよりますが、私が個人的に試した範囲では、SpectrasonicsのOmnisphere 2やTrilian、FXPansionのBFD3などと一緒に使用しても大丈夫なケースが多々ありました。

ちなみに私は、2014年製のMacBook Airの内蔵ドライブにIvory II Grand Pianosをインストールして全国のディーラーさんにデモで回ったことがありますが、その時は全く問題ありませんでした。

 


まずはセッティングウインドウをチェック

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Ivory IIシリーズを起動し、画面左上にある「Session」をクリック。まずはここからチェックしていきましょう。

  • Memory Use

blog_201703_4_ivmemその名の通り、RAMメモリを使用する量を決定します。「うちのマシンはメモリを大量に積んでるぜ!」という場合には、遠慮なくLargeにしておきましょう。RAMメモリはマシン全体で共有するものなので、あまりIvory IIシリーズだけに占有されたくない場合にはSmallです。ただしSmallにすることでHDD(SSD)の方に負担がかかるようになりますので、ここはご自身のマシンに合わせたセッティングにするのがよいでしょう。

例えばThunderboltやUSB3.0接続など、高速バスの外付けSSDにIvory IIをインストールしている方なら、ここはSmallの設定でOKでしょう。代わりにストリーミングには負担がかかりますが、SSDですからまったく問題ありません。

  • Voices

ここは、最大同時発音数をセッティングするところ。数値を大きくすれば発音数はもちろん増えますが、主にストリーミング(HDD/SSD)にかかる負担も大きくなります。それぞれのセッションにあった最適な値に設定してあげることで、マシン負荷も最低限に抑えられるぞ、というところです。

Ivory IIの最大同時発音数、なんと1000?

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実際のアコースティックピアノ(88鍵盤)の最大同時発音数は、実は88ではありません。響板とボディが織りなす複雑な響き。楽器の王様ピアノは、単なる88音ポリフォニックとはいえない複雑さを持っています。

実際のアコースティックピアノは、ダンパーを「踏まずに」特定の鍵盤を抑え、指を話した時にも響板やボディには音が残ります。Ivory IIシリーズではこの残っている音も「1」とカウントし、実際のアコースティックピアノと同様の響きを実現しています。よって、ダンパーペダルを使用した演奏のおりにはさらに発音数に余裕が必要になります。

これはIvory IIシリーズがサンプルとモデリングのハイブリッドだからできたもの。シンセサイザー的(PCM的)な発音カウントではなく、あくまで実際のアコースティックピアノを基準とした「発音数」をカウントしているので、1000という数字はふざけた数値ではないのです

なお、一般的なHDDでは(どんなにうまくセッティングしても)80音くらいでディスクスピードの限界がきてしまうため、これ以上はSSDなどを併用していただくことが必要となります。


やはりIvory IIシリーズは究極のピアノ

blog_201703_6ivmoresamセッティングについて、もう少し解説をしましょう。Ivory IIシリーズのメインページ(”Program”タブ)を見てみると、いくつかのオプションボタンがあります。

  • Sustain Resonance

実際のアコースティックピアノで、鍵盤を「バーン」と抑えっぱなしにしたとき。音が消える瞬間までじっくりと耳を傾けてみると、そこには各鍵盤の弦が共鳴しあい、音の減衰とともにより複雑な響きを聞くことができます。Ivory IIシリーズはその複雑な弦同士の共振も収録していますが、ここはそのサンプルを読み込むか否かの設定。ロングトーンを生かした曲や、ピアノソロ曲などでは絶対にオンにしておいて頂きたい項目。ポップスの中で使用する場合や、パーカッシブな演奏の時にはオフにしてもいいかもしれません。オフにすることでCPU負荷の軽減にもつながります。

  • Sympathetic Resonance

この現象を短い文章で説明するのは(知識の浅い私には)難しく、またピアノに限った現象を指すわけではないため言葉を選んでしまいますが、端的にいえば88本の弦同士が相互に起こす共鳴。ピアノの弦は(あの長さ、あの響板によって)かなり「鳴り続け」ます。その鳴りに鳴っている弦は、他の弦へも影響を及ぼします。その時に聞こえる複雑な響き。Ivory IIではこの(実際のピアノでは当たり前に起きている音)を再現しており、このパラメータにてオン・オフを設定することができます。

オンにすることで、実際のアコースティックピアノを良く弾かれる方にほど「そうそう!」と思わせる成分が増えます。これもまたピアノソロ作品などでは絶対にオンにして頂きたいパラメータですが、複数のアコースティック楽器が混ざるような楽曲の場合にはオフ、あるいはオンにしてレベルを抑え気味にすると、いい感じに仕上がるのではないでしょうか。

  • Pedal Noise

実際のアコースティックピアノでダンパーペダルを踏んだとき。一気に全弦の「ミュート」が外れた状態となり、ピアノの弦はそんなわずかなアクションに対しても「音にならない音」を表現します。具体的には「フワン」とか「ウォーン」みたいな音を出しますね。このパラメータをオンにすることで、まさしくその音を表現するようなノイズを音に付加することができます。

それだけではなく、サンプルとモデリングのハイブリッド音源であるIvory IIシリーズなら、ダンパーを踏まれた状態で演奏されるピアノ内部の豊かな響きを見事に再現します。このパラメータもまたピアノソロ作品などでは絶対にオンにしておきべき項目でしょう。

  • Release Samples

blog_201703_7ivrelアコースティックピアノを演奏していて、鍵盤から指を「離す」とき。実際にはその瞬間に音がなくなってしまうことはなく、抑えた鍵盤の倍音がわずかに残ります。この倍音はベロシティによって多彩な表情を持っているのですが、このパラメータはその音のオン・オフを切り替えます。ここはサンプルを読み込みますので、RAMメモリやHDD/SSDのストリーミング量を増やすことになりますが、よりピアノらしさを追求したいときには是非ともオンにて使って頂きたいところです。


 

Ivory IIシリーズは究極のピアノ音源です。たしかに、他のソフトウェアと比較したときには、少々「重め」の部類に入る製品かもしれません。しかし、それを補って余りある魅力にあふれた音は、決して他では得られない最高のピアノサウンドと言っていいでしょう。

かといって少し古いマシンでは動作すら危ういのか、と言われればそうでもありません。上記したような最適なセッティングや「自分には不要な」パラメータをオフにすることで、数年前のマシンであってもIvory IIの究極のサウンドを鳴らすことは可能です。弊社カスタマーサポートでは購入前相談も受け付けておりますので、ご自身の環境をお伝えいただいた上でどういった利用が可能か、遠慮なくご相談をいただければと思います。

 


ちなみに私は…

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使用しているマシンは2012年製のiMac 27インチ。メモリは24GB。Ivory IIシリーズのデータはUSB3.0接続の外付けHDD(SSDではなく)にインストール。メモリにはそこそこ余裕がありますので、いつもはMemory Useにて「Large」に設定しています。HDDの負荷は最低限にしたい、という設定です。

私自身は流暢にピアノは弾けませんが、時おりピアニストの友人が演奏しにきてくれます。友人はどんな音でも文句1つ言わず弾いてくれるため、負荷の軽減のためVoicesも最低限、Release ResonanceやSympathetic Resonanceなどもオフのまま。同時にFXPansion BFD3やSpectrasonics Trilianなどを鳴らすこともあります。

友人のレコーディングが終わったあとは、ボイス数もできるだけ多く。レゾナンス系のパラメータや、Release Samplesなども全て「オン」に。旧世代に入りつつある私のマシンでは時おり(友人の演奏の盛り上がりに応じて)再生に厳しいシーンも出てきたりしますが、その時にはトラックフリーズしてしまいます。フリーズしてしまえば負荷などあって無いようなもの。友人の素晴らしいテイクが、最高のピアノ音源を通して快適に再生されます。

最適な設定、適宜シーンに応じたパラメータの使い分けなどをうまく使って、最高の音源を快適に使ってみてくださいね。

Synthogy

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