制作に関わる方々にもラウドネス規格が浸透してきたように感じます
2012.06.07
今年10月1日からの運用に向けて、制作に関わる方々にもラウドネス規格が浸透してきたように感じます。
最近では、「このメーターにはどんな機能があるの?」、「対応フォーマットは?」、「自分の業務にはどれが最適?」などなど、より実務的な質問を頂きます。
本記事ではこれらも踏まえて、Nugen Audio社のソフトウェアを使用したラウドネスTipsをご紹介します。Nugen Audio ラウドネスソリューションのワークフローと合わせてご参考ください。
サンプルピーク・メーターは、オーディオのピークレベルを正確に計ることはできません。なぜなら、Sample PeakおよびQPPM(Quasi-Peak Program Meter)メーターでは、サンプル間で発生するピーク信号を正確に検知することはできないからです。これは、インター・サンプル・ピークと呼ばれます。
BS.1770で規定されたTrue Peakメーターでは、4倍オーバーサンプリングを行うことで正確に計測が可能になります。最近のロック/ポップスでピークメーターが0dBSFを表示した場合、1秒間に20回以上!も0dBFSを超えている場合がありますので、ご注意下さい。
ラウドネスメーターは、何も放送や映像コンテンツにしか使えない訳ではありません。
前述のように、0dBFSにマキシマイズされた作品は、ピーク・メーターに表示されないインター・サンプル・ピークが多発している場合があります。
特にMP3やAACなどに圧縮する場合、インター・サンプル・ピークが発生すると圧縮時に歪みやクリップが加えられ、圧縮後に耳障りなノイズや幕が張ったようなぼやけた音になってしまいます。
また、オーディオCDの場合でも、CDプレーヤーによっては再生時にノイズが発生するケースがあります。
圧縮前、CDライティングの前にはラウドネスメーターを使用して、インター・サンプル・ピークが発生していないかをご確認ください。
ラウドネスメーターでTrue Peakが点灯してしまったら、レベルを下げたり、リミッターなどを使用して回避します。
近日リリース予定の新しいプラグイン”Nugen Audio ISL”では、このInter Sample Peakをリミッティングすることができます。多くのリミッターでは個性的な特徴ゆえに音質変化が起こりがちですが、ISLでは極力音の変化を抑え、サンプルピークのみを取り除く用途に最適です。VisLMの前にこのISLをアサインしておけば、スムーズで確実なミックス、マスタリングが行えるでしょう。
また、LMBバッチプロセッサーおよびAudiosuiteプラグインLM-CorrectにはTruePeakリミッターが搭載されており、このインター・サンプル・ピークを検知し、コンプレッションを自動で行うことによって、レベルオーバーを回避する事ができます。
ラウドネスの規制化に伴い、作品とともにラウドネス・プロファイルも合わせて納品が必要になるかもしれません。
ラウドネスメーターVisLM-HおよびバッチプロセッサーLMBでは、ラウドネスの計測プロファイルをCSV形式で出力するこができます。
Excelに取り込み、グラフしたり、希望された形式の納品も簡単に行えるでしょう。
Pro Tools環境であればAudioSuiteを使用することで、実時間をかけずに解析、出力が行えますので、圧倒的な時間短縮が図れます。
また、VisLM-Hにはスタンドアローン版もありますので、コンピューター自体を通常のラウドネスメーターとして使用することも可能です。
異なるセッションや場所、ボイスアーティストからなる、膨大な音声ファイルのレベルはまちまちです。これらのラウドネス・レベルを統一する場合、ファイルごとに手動でレベル調整を行うことは現実的ではありませんね。バッチ・プロセッサーLMBでは、指定したフォルダにオーディオファイルを入れれば、自動的に解析、適正なレベルに変換するバッチ・プロセスが行えます。
未処理フォルダを用意し、フォルダにオーディオファイルを入れれば、完了フォルダの方へ自動的に修正済みのオーディオファイルが書き出されます。これらのフォルダはネットワーク上でも有効ですので、サーバーマシンへ複数のクライアントマシンから素材を送ることができます。
さらに、オーディオファイル以外にも、AVIやQuicktime、MXFなどのビデオファイルからでもオーディオトラックを抽出、書き出しが行えます。
旧作品のアーカイブ化や再放送時に、音声のリミックスや再編集などは、時間、コストを考えても難しい場合が多いですよね。
こちらもLMBを使用すれば低コスト、短時間で現在のラウドネス規格に沿った音声トラックに変更することができます。
素材をまとめてLMBに送ってしまえば、ラウドネス適正値に自動的に変換されますので、今後の使用を見越してのアーカイブ化や、再放送での使用時など、短時間で対応できます。
Pro Tools上でのオーディオ編集時、Avid Media Composerなどでビデオ編集時、どうせなら、そのままラウドネスの規定値に合わせたファイルを書き出してしまった方が、今後の作業短縮にもなりますね。
Audiosuite専用プラグイン、LM-Correctでは、ファイルベースで自動的にラウドネス規定値に変換することができます。
バウンス後、LM-Cor
rectでプロセスすれば実時間をかけずに変換できるので、トライアンドエラーを繰り返したとしても、大幅に時間短縮が行えます。
相対的なミックスバランスも変更する必要が無いので、これまでと手法を変える事無くミックスが行えます。
Final Cut Pro(FCP)で編集時に、音声も確認したいというご要望も頂きます。FCP上では残念ながらプラグインとしてVisLMの起動が行えませんが、VisLM-Hのスタンドアローンモードと、無償の音声ルーティングソフトウェア”Soundflower” http://cycling74.com/ の組み合わせで計測が行えます。
以下はご参考情報です。
1.Soundflowerのインストール後、コンピューターを再起動し、FCPの”オーディオ/ビデオ設定”メニュー内の”オーディオ再生”を”Soundflower”にします。
2.VisLM-Hのスタンドアローンアプリケーションを起動し、Aduio Inputデバイスにも同じく”Soundflower”を設定します。
3.音声のモニタリングを行う場合は、メニューバー上のSoundflowerbedメニューより、任意の出力機器を選択します。
いかがでしょうか?要求される機能、内容は、10人いれば10通りあると思いますが、Nugen Audioの各製品であれば、ラウドネスに関するほぼ全ての用途に適用できるかと思います。
ご用途に合わせて各種ツールを選択頂ければ幸いです。