Focal Spirit Pro スタジオフォレスタ 森田さん

 

FocalはスピーカーのTwin6 Beを試したことがあり、非常にいいスピーカーだなという印象があったのですが、Spirit Proにも同様の印象をうけました。ナチュラルで、フラットで、癖のない、まさにミックス作業で使えるヘッドフォンですね。導入前にかなり高い期待をしていたのですが、その期待を裏切らないヘッドフォンでした。

 

 

実はヘッドフォンマニアなんです（笑）

 

 

様々なヘッドフォンを試してきましたが、大抵のものは「最初から満足できない」もののことが多いんですね。ファーストインプレッションから違和感を感じないヘッドフォンってほとんどなくて、使っていくうちにその不満な部分にも慣れていくように使っています。ところがSpirit Proはパッケージを開けてパッと最初に使ったときに「えっ、すごくいいじゃん…」と素直に思えたんです。音に何一つ不満がなかった。

 

 

今までメインで使用していたヘッドフォンが廃番になってしまって、次はどうしようかと考えていたところだったんです。これに感覚が近いものを探していたのですが、なかなか代わるものは見つからなかった。そこで過剰な期待をこめて、自分の中のハードルを結構高めにしてからSpirit Proをチェックしたのですが、そのハードルをクリアできるくらい良かったですね。

 

 

 

ヘッドフォンに求めるものとして、まず低域の中でも最も低いローエンドの部分が「チェックできるか」どうかですね。出ているか出ていないかじゃなく「チェックできるか」です。基本的にミックスの作業そのものはスピーカーを使って行うので、ヘッドフォンでチェックしたいのはスピーカーでチェックしにくいローエンドなんです。

 

そこで大事なのが、過不足ないローエンドを再生してくれているかどうか。Spirit Proが素晴らしかったポイントが、まずここです。

 

 

高域の解像度が高くて、なんだか誇張されたハイエンドを再生するヘッドフォンって正直なところ苦手なんです。ちょっとハイを調整しただけで嘘みたいな変化を再生するものもあったりします。ミックスそのものも違ってきてしまうし、なにより作業をしていて耳が疲れてしまうんですね。もちろん不足があってはダメですが、でしゃばって聞こえるものはミックスに向かないと思います。これはスピーカーも同じです。その点でFocalはスピーカーもいいですし、ヘッドフォンであるSpirit Proもバランスの良さを感じましたね。

 

Spirit Proをショップでチェックするときには、ぜひキックとベースの音像までチェックしてみてほしいですね。ここがしっかり聞こえるので、「キックを上にするか、ベースを上にするか」といったチェック、音作りの際もコントロールが容易になると思います。定位の見え（聞き）やすさ、ミッドレンジにおかしなピークがないことも他と比較してほしいポイントの1つですね。

 

 

若干ではありますが、装着時の側圧が強いかな？と感じました。また、少し本体の重さが気になりましたね。それから本体にはオーディオI/Oなどと接続するためのカールコードと、iPhoneなどにも接続可能な4極のストレートコードが付属していましたが、「オーディオI/Oなどと接続するストレートコード」が欲しい！ぜひFocalにリクエストしてください。

 

 

僕の周囲でSpirit Proを何人かの方に試してもらったんですが、総じて高評価だったんですよ。これは結構珍しいことで、我々の仕事はエンジニアからアーティスト、ミュージシャンまでヘッドフォンを誰しもが必ず使うので、それぞれ好みもあるし、目線が厳しいはずなんですよね。自分がいいと思った製品でも、そう思わない人もいます。でもSpirit Proは誰に試してもらっても「これいいね！」という反応でした。僕が知る限りでここまで周囲に最初から好評だったヘッドフォンはないですね。

 

Focalのスピーカーはいろいろなところでチェックしていましたが、ヘッドフォンがあることは実は知りませんでした。メディア・インテグレーションさんはもっと宣伝したほうがいいですよ！Spirit Proはちゃんとミックスで「使える」ヘッドフォンです。