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EVE Audio SC205レビュー by Pro Tools Expert

Pro Tools Expertのエディターズ・チョイスに選ばれたSC205の製品レビュー

2015.05.09

Eve-SC205-Review

*この記事は、2014年7月Pro Tools Expertに掲載されたSC205のレビュー記事を、Pro Tools Expertの許諾を得て、(株)メディアインテグレーションが翻訳したものです。

はじめに

スタジオを作るとき、特にホームスタジオを作るとき、最も難しい選択のひとつは、モニター・スピーカーを選ぶことかも知れません。様々なモニター・スピーカーを比較する専用の部屋を設けた販売店の数も増えつつあるものの、本来であれば、自分のスタジオ内で、自分が実際に座る位置からのモニタリングを行うことでしか厳密な比較はできません。さらに、既に自分が使用しているモニターへの慣れや好みが、新しいモニターへの正しい評価を難しくすることも考えられます。

モニターはサウンドの好みが色濃く反映されるものとも言えます。そのため、多くのメーカーがフラットな特性を謳っているものの、複数のモニターを比較すれば、全てフラットな特性では無いこと、または殆どのメーカーの主張は誤りであることに気づくことでしょう。

Yamaha NS10sやAuratone 5csを使用して育ってきた私の考えでは、周波数特性がどの程度フラットかということは、エンジニアの仕事への適合性とは殆ど関係ありません。数えきれないほどのヒットアルバムがNS10sを用いてミックスされてきましたが、誰もNS10モニターがフラットな特性を持つとは言わないでしょう。これに関しては面白い研究があります。殆どの人々はモニター環境のサウンドに単純に慣れてしまっているため、マスタリングにおいてはマスタリング・エンジニアを信頼して、必要な処理を何でも施すように自由にやらせる人が多いということです。

私にとって新しいモニターを試すことは、新しい靴を試すことに似ています。上で述べた理由から、使い初めはどれもしっくりと来ないように感じられるのですが、結論を出すためには、慣れるまでしばらく使ってみる必要があるということです。


今回のレビューでは、まず、EveAudioにモニターの仕様について説明をお願いしました。

ウーファー

SC205は低域のレスポンスのために5インチのシルバーコーンを採用しています。ハニカム構造のダイアフラムはとても固く、グラスファイバー・コーティング加工が施してあります。小型のSC204など他のモデルと同様に、SC205にはリニアな可動特性を向上させる1インチのボイスコイルが採用されています。この技術によって、本来これらのサイズのスピーカーからは想像できない、広いダイナミックレンジを提供することを可能としました。独自のAMTツイーターおよびPWMアンプと組み合わせて使用する場合においては、透き通るような極上のサウンドとともに、パワフルで正確なローエンドに驚くことでしょう。

ツイーター

AMT(Air Motion Transformer)ツイーターは、最高の結果を求めて、既成の部品を一切使用しないことで実現された我々独自の技術です。高域のディテールの正確さとタイトな中低域とを併せ持つSC205は、スタジオでの使用と同じくらい、ツアーでの使用にも適しています。

DSP

全てのEVE Audioのスピーカーと同様に、高解像度のDSPも搭載。ノブを押すだけの簡単操作で、細かなボリューム操作や数種類のフィルター操作が可能な状態へと切り替わるので、モニタリング作業に適したサウンド作りが可能です。また、デジタルなプロセッシング処理を全く使用しないという方にも対応。DSPエンジンに搭載のBurr-Brown社のA/Dコンバーター(24bit/192kHz)は、DSPセクションにピュアな信号を届けます。さらに、PWM制御のアンプがDSPに直接接続されているので、これ以上オーディオ信号を変換する必要もありません。

使用にあたって

EVE Audio SC205のセッティングは極めてシンプルです。接続は背面のXLRまたはフォノケーブルで行い、ディップスイッチで固定するか、変更可能な状態にするかを設定します。前面にはモニターのオン/オフの切り替え用のノブがありますが、背面にアクセスすること無くスタンバイモードへの切り替えを行うことも出来ます。また、このコントローラーでは他にもボリューム、ハイパス/ローパス/バンドパス・フィルターの切り替えが可能です。コンソールを使用すると、180Hz付近の帯域への不要な色づけが生じる場合がありますが、フィルターの使用によって、そういったサウンドへの影響を低減できます。

Eve Audio社では、モニターは垂直方向に配置するよう考えて設計されていますが、ツイーターがミキサーの外に配置されている限りにおいては、水平方向に配置することも可能です。

製品に付属のユーザーマニュアルでは全ての技術的事項に関する詳細とともに、モニターの配置や音響特性、また最適なセッティングについての幾つかの有効なアドバイスを掲載しています。

セットアップが完了したら、私はリファレンス用の曲を再生して聴いたり、過去のPro Toolsセッションのミキシングを行うことで、SC205がどのようにサウンドするかを確認することに時間を費やします。


て、その評価は?

Eve Audio SC205はレビュアーやユーザーから多数の賞賛を受けてきましたが、当然の結果だと思います。SC205は澄み渡るサウンド、開放感のあるハイエンドと締まったローエンドを提供します。個人的には、ミッドレンジの存在感のあるサウンドが好きなので、SC205は他のレンジをオープンにすることでミッドレンジが埋もれてしまうのではないかという懸念を抱いていました。しかしながら、しばらく作業を進めて行くうちに、ミックスしたトラックにはベースサウンドやディテールの改善が見られ、その懸念は杞憂であったことが分かりました。

先に述べたように、マスタリング・エンジニアにとっては、スタジオモニターやスタジオルームの特性による影響を限りなく低くすることが重要です。しかし、SC205を用いることで、以前と比べてより綿密なミックスを行えるようになりました。

6週間このモニターでミックスをしていたのですが、当然ながら、英国の輸入代理店から返却の依頼が来たのですが、モニターを返却する代わりに、迷わず自分のクレジットカード情報を伝えました。文字通り、エディターズ・チョイスとなったわけです!

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