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スタッフルーム:Apogee Ensemble その3

にわかには信じられない宣伝文句「CPU負荷が軽くなる」を実際に検証

2015.03.20

スタッフHです。

さて今回も、新しいApogeeのEnsembleについて導入記を少し。私たちのブログで最も反響のある「MixがうまくなるTips」も今後更新の頻度を上げて参りますので、今回は本記事におつきあいください。

CPU負荷が軽くなるオーディオI/O?

オーディオI/Oの宣伝文句にはさまざまなものがあります。「音がよい、あるいはハイクオリティ」的な事はどのブランドも似たような表現をするものとして、高い安定性(大事です)、オリジナルのプラグイン処理が可能なもの、携帯性など、さまざまな売り文句があると思います。

Apogee New Ensembleの仕様を初めて見たときに、にわかには信じられない宣伝文句が含まれていました。つまり「CPU負荷が軽くなる」と書いてあるです。

気にするのはプラグインやソフトシンセの負荷だけ?

2014年末に来日したApogeeのロジャーさんの言葉を借りると「多くの方がプラグイン・エフェクトやソフトシンセのCPU負荷を気にされている事と思いますが、オーディオインターフェイスとMacの間に存在する “ドライバ” のCPU負荷を気にされている方は、少ないのではないでしょうか?」とのこと。

ご存知のようにApogeeはAppleとの密接な関わりの中で、今回のEnsemble開発にあたり、特別なドライバを開発。名前を「DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)エンジン」と言います。

これは、図のようにハードウェア(Ensemble)とソフトウェア(MacOS X)を繋ぐ経路の中に、CPUを介在させないという、Apogeeならではのドライバなのです。

20150320_dma

これによりハードウェアに入力された信号を直接メモリ(RAM)に、DAWからのプレイバックを直接ハードウェアに渡します。意外なことかもしれませんが、他のI/Oではここの処理にそこそこのCPU処理が介在しているのです。

とはいっても

話は冒頭に戻り、これによりEnsembleは「CPU負荷が軽くなる」ということを宣伝しています。これがどれほど体感できたかのレポート。

正直なところ、1つや2つのソフト音源を立ち上げて鍵盤を押さえてみたところではその違いは体感できません。ヘビーだと名高いいくつかのプラグイン・エフェクトを使用してみても、いつもと同じようにCPU負荷のメーターが今までの環境と変わらぬ様子で「ぐーん」とあがります。

うーん、しかしまぁ、Ensembleが欲しかった理由はCPU負荷の軽減よりも、音そのものや個性的な入出力ではあったので、まぁ、いいかなぁ…

とこの件は私の中で「なかったことに」していました。

それからしばらく使い込んでいき、作業が進んできたあるタイミングでこのEnsemble DMAエンジンの真価に気づかされる事になったのです。

ある日のスタッフHホリデーレコーディング記

とあるセッションファイル。Ensembleでハイレートでレコーディングできるようになった事が嬉しくて、96kHz/32bit Floatにて作成。BFD3でドラムトラックを作成し、ProTools上にパラアウト。

これにベースを重ねる目的で、バッファサイズを64(48kなら32換算)に設定。まだBFD3だけなので、当然余裕で再生は可能。

最近お気に入りのアンプシミュレータBIAS Desktopでトーンクラウド(BIASプラグイン内には、通常のプリセットの他に世界中の音好きが作ったプリセットが常に共有されています)から個性的なベースアンププリセットを使用。

アレンジはできでいたので、友人を呼んでソフト音源のエレピ、Lounge Lizardを使ってMIDI録音。友人が大好きだというIK MultimediaのAmplitubeより、フェイザーとディレイを使用。

ギターをお願いしていた別の友人がきました。彼はPOD HDを持参してきたため、これを前回のポストのようにGuitar I/Oに接続し、本人のモニターはPODからの音、レコーディングはDIを通っただけの音を録音。お酒も入っていて気分がよかったのか、5パート+ソロを演奏してそそくさと帰って行きました。きっと飲み屋にでも行ったのでしょう。ソロのパートだけはワウペダルのプレイが格好よかったので、PODからの音をレコーディングしました。

ソフトシンセをいくつかテストして、OmnisphereでPad+Stringの音を作成。最近雑貨屋で購入した1500円のパーカッションをオーディオレコーディング、それから、家人に手伝ってもらってボーカルとコーラス、合計4パートをレコーディング。

ボーカルのレコーディングで必要になったモニター用のEQ、コンプ、リバーブをボーカルトラックにインサートしたときに….

あれ..ずっとバッファ64のままだった

ここで気がついたのです。いつもなら、ここまでの作業のどこかでブチブチとコンピュータが悲鳴を上げ始め、バッファサイズを上げるか、ソフト音源をオーディオ化しなくてはいけなかったことに。ところが、まだそんな様子はない。

ここで興味が沸き、試せる限り別のオーディオI/O(USB、FireWire、Thunderbolt)につなぎ直してプレイバック。いずれのI/Oもノイズが乗るならまだしも、再生すらままならないという状況に。

20150320_ptstop

結論は

私の個人的な体験談が長引いてもつまらなくなってしまうので、そろそろ結論に。この後Ensembleに接続しなおし、バッファサイズ64のまま今度はミックス作業に取りかかってみました。

ソロ以外のギター5パートは、それぞれのプレイを聞きながら要不要を作り、いくつかのパートはリハーサルスタジオで実際のギターアンプを使ってリアンプ録音。他のパートはハード、ソフトのアンプシミュレータを使ってオーディオ録音。

最近ハマっているWAVES NLS(歴史に残るビンテージコンソール3台の「インプット」を、なんと全チャンネルに渡って計測・モデリング。EQやコンプのようにド派手に変わるものではありませんが、サミング・アンプ的に使用しています)を全トラックにインサート。

その他、EQやコンプ、リバーブなど一般的なツールを各社のプラグインを使って仕上げ。ここまでにCPUパワーが追いつかない事によるブチブチノイズや、再生が止まる事も
ありませんでした

20150320_buff64

最後のマスターチャンネルにて、少々ヘビーなマスター用プラグインをいくつか立ち上げた時に、やっとこ再生が止まりました。既に録音も全て終わっていますので、安心してバッファサイズを大きめに設定。無事に仕上げとなったのです。

オーディオI/Oのミキサーソフトウェアはいらなくなる?

一連の作業にて、Ensembleに付属してくるミキサーソフトウェアであるMaestro 2のウインドウを開くことはありませんでした。他のI/Oでは、ダイレクトモニタリングの設定を都度行わなくてはならなかったため、アプリケーション切り替え→セッティング→レコーディングというステップを踏んでいましたが、その必要がなかったのです。なぜならDAW(私の場合は、ProTools)のミキサーがそのままハードウェアミキサーの代わりになってくれるから。バッファサイズを抑えられるということは、ここにも利点があると思います。

20150320_imacEnsembleの新開発ドライバ、DMAエンジンならば、Apple Macとの高い親和性とともに、こういったCPU負荷の軽減も特典となるはずです。

もちろん使用するMacによってCPU負荷は変わるので、本日ご紹介した私の経験談をそのまま「絶対に動作しますよ」と補償できるものではありませんが、最後に私が使用している環境を。

 

 

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