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Apogee Symphony Mk2導入インタビュー:永井はじめ

2017.05.23

エンジニアとして石井竜也、K、ORANGERANGEなどを手がけ、プロデューサーとしても幅広く活躍している永井はじめ氏。都内に構えられた氏のプライベートスタジオにはこだわりのアナログ・アウトボードと最新のPro Tools HD環境が見事に融合され、日夜極上のサウンドがここから産まれている。アナログ機器への徹底したこだわりと同様に、デジタル機器についても「できるだけ最新」のものを用意するよう心がけているという永井氏、スタジオに新たに導入したApogee Symphony I/O Mk2について、語って頂いた。


Apogeeが好きだし、信頼している

MI

Apogee Symphony I/O Mk2には現在、ネイティブ環境のDAWで使用できるThunderbolt版とPro Tools HD(DigiLink)で使用できるPro Tools HD版を用意いたしておりますが、永井さんにはPro Tools HD版を導入いただきました。導入以前はどのような環境だったのですか?

永井はじめ 氏(以下 永井)

AVIDのHD I/OやOmni I/Oなど複数のAVID製IOを使って、イン・アウト数を増やして使っていました。でも正直なところ、複数台使わなくてはいけないということが非常に邪魔くさいと感じていたんです。設置場所も圧迫してしまうし、持ち運びするときにも不便。また、アウトプットのチャンネルによって音が違ってしまうことも、悩みのタネでした。そういうこともあって、1台で十分な入出力があるものが欲しかったんですね。

MI

どういった経緯でSymphony I/O Mk2を選択するに至ったのでしょうか?

永井

スタジオ用のものとは別に、モバイル環境用のIOを探していたことがあって、その時にApogeeのEnsembleを使ってみたことがあったんですね。その時感じた印象が非常によかったんです。僕自身もいいなと思ったし、クライアントのウケもよかった。そんなタイミングでSymphony I/O Mk2が発売になるというニュースを聞いたので、これはスタジオのメインIOを変えよう、という流れになったわけです。Symphony I/O Mk2ならイン・アウトがモジュール式になっているので、自分の好みで仕上げられるということもよかったですね。なので、Ensembleは試していたけど、Symphony I/O Mk2は全く音も聞かずに買ってしまったんですよ(笑)

MI

それは、驚きです。

永井

もちろんEnsembleの印象がよかったからという信頼もあったのですが、僕はもともとApogeeのAD-8000、AD-500などを含めて、歴代のApogee製品を長年使ってきていて信頼しているというのもあるし、そもそもApogeeが好きだというのもあります。だからSymphony I/O Mk2を聞かずに買ったというのも、別に「賭け」をしているわけではなく、信頼の上で買ったようなものですね。

MI

Symphony I/O Mk2はどういったコンフィギュレーションでお使いですか?

永井

アナログの16イン・16アウトを装備した16x16です。今のところは16chあれば、だいたいのことには対応できます。

MI

このスタジオには豊富なアナログのアウトボードが揃っていますね。これらはどのようにSymphony I/O Mk2につながっているのですか?

永井

アウトボードは全てパッチベイに接続してあり、パッチベイとSymphony I/O Mk2を繋いでいます。アウトボードはPro Tools HDからハードウェアインサートで使用しています。


Symphony I/O Mk2に変えてから、マスタークロックを使用していません

MI

歴代のApogee製品をお使いの永井さんから見て、新しいSymphony I/O Mk2の第一印象はいかがでしたか?

永井

すっきりしたなぁ!クリアになった、と感じました。音なので言葉での説明は難しいですが「波形が綺麗になった」ような感覚で、音そのものが綺麗に聞こえます。

MI

波形が綺麗、という表現について、もう少し詳しく教えていただけますか?

永井

例えばマスタークロックなどを使ったとき、高品位なクロックを使用すれば、時間軸という情報が整理されますよね。結果、音がクリアになって、滲みのない音になります。反対にあまり質のよくないマスタークロックを使ったときには、滲んだような音になって「波形が汚くなった」かのような印象を持ちます。そういう意味で、Symphony I/O Mk2は「波形が綺麗になった」ような音だなと感じましたね。特に僕の場合は生楽器のレコーディングやミックスをする機会が多いので、音と音の隙間や奥行きまでしっかりとわかるような品質であったり、あるいは録ったときの音をちゃんと再生してくれるものであってほしいと思っているのですが、Symphony I/O Mk2はバッチリでした。ちなみに、Symphony I/O Mk2に変えてからはマスタークロックを使用していません。

MI

Symphony I/O Mk2は入出力のコンフィギュレーションを自由に変更できるだけでなく、コンピュータとの接続方法も増設することもできます。現在はThunderboltまたはDigiLink接続のPro Tools HDの2種ですが、今後はSoundGridやDanteにも対応する予定です。

永井

これ、素晴らしいですよね。スタジオではPro Tools HD環境で使用しているけど、外出先ではThunderboltを使ってネイティブ環境で使うということもできると。ちなみにThunderbolt接続をして、ネイティブのDAWを使ったときにラウンドトリップのレイテンシーはどこまで抑えられるのですか?

MI

96kHzでバッファーサイズ32Sampleに設定したときに「ラウンドトリップで」1.35ミリ秒まで抑えることができます。

永井

それはすごい。1.35ミリ秒なら歌のレコーディングもダイレクトモニタリング機能を使わずに可能ですね。2ミリ秒を超えてしまうとなかなか厳しくなりますが、それなら十分いけますね。

MI

Symphony I/O Mk2を導入されてから変わった点、改善された点などはありましたか?

永井

自分のミックスが変わりますよね。

MI

それは「いい方向に」という意味ですか…?

永井

もちろんそうです。いい方向に変わりました。僕はもともと生楽器を扱うことが多くて、EQは多用しない方なんですが、以前の環境よりもEQを使用するシーンが減りました。レコーディング時に出ていた音が綺麗な状態でそのままミックスの環境でも聞こえているので「過度な処理をしなくてもいい」という判断が素早くできるようになったからですね。

MI

それはSymphony I/O Mk2の良さもありながら、永井さんの経験による録音時のマイキングや音作りの素晴らしさもあるように思います。しかし、その音がミックス時にも損なわれず、判断が素早く行えると言っていただけるのは嬉しい評価です。

永井

おかしな歪み感のようなものがないので、倍音が綺麗に整理されたようにすら感じられますね。以前はスタジオでミックスしたものをマスタリングスタジオに持って行って「あれ、EQが過剰だったな」と思ってしまうシーンがありましたが、まずはそれがなくなりました。素直にミックスに集中できるということが、僕にとっての何よりの改善ポイントですね。とはいえやはりApogeeですから、一番気に入っているのは「音」に尽きますね。音、素晴らしいですよ。

余談ながら、見た目も好き。今までこの手のハードウェアって、よほどのことがなければラックに入れて奥にしまいこんでいましたが、Symphony I/O Mk2はこうして手に届く近いところに置いてしまっていますからね(笑)高級感もあるし、いいデザインですよね。


永井はじめ

エンジニア/プロデューサー

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