常に起動しておきたい主戦力。

サカモト教授:Omnisphere 2インタビュー

Interviewインタビュー

Spectrasonicsより待望のリリースとなったOmnisphere 2。約7年ぶりの有償アップデートとなった今回は、待望のオーディオインポート機能、約20GBものサンプルの追加、100倍に増強された内蔵のDSPオシレーター、さらに強化されたシンセサイズエンジン、エフェクトやフィルターの追加。そして膨大なサウンドパッチからオリジナルサウンドを作り上げるための機能など、ほぼ全ての項目がアップデートされたと言っても過言ではない。

今回のアップデートで追加されたサウンドカテゴリの1つに、Retro Landがある。これは、歴代のゲーム機や昔懐かしいコンピューターのサウンドチップからの音はもちろん、音がでるオモチャ、世界中から集められた電子機器の回路を「サーキット・ベンディング」し、Omnisphere 2のエンジンを使って演奏することができる。

この新しいRetro Landカテゴリのお話を掘り下げるにあたり、真っ先に浮かんだのがサカモト教授だ。高い音楽的素養と、チップチューンを追求したそのスタイルは、すでに世界中で大反響を巻き起こしている。

Omnisphere 1の時代からのユーザーであるサカモト教授に、Omnisphere 2導入直後のインタビューを実施した。果たしてサカモト教授の評価はどうだったのだろう。

 


ゲーム機も、歴代のビンテージシンセも「これは…ヤバいなぁ」

20150827_spectrasonics_omni2_DSC09331サカモト教授はOmnisphere 1からご使用いただいているとの事ですが、Omnisphere 2を使ってみた第一印象はいかがですか?

- 左側の「ミニ・ブラウザ」がいいですね。今までは音色のブラウズもいちいち専用のウインドウに移って探さなくてはいけなくて面倒だったのですが、圧倒的に作業効率が上がります。

それから、オーディオ・インポート機能の搭載、膨大な音色から音を見つけやすくするSound Match機能、そして自分オリジナルの音色をより楽しく作り上げることができるパラメーター・ロック機能が搭載されました。

- Omnisphere 1をこれまで使ってきて感じている事としては、プリセットの数が非常に膨大ですよね。おそらくOmnisphere 1のプリセットの全てまで試しきれていないだろうなと思っています。だからこそ音色の探しやすさとか、「自分の脳内にあるイメージの音」を素早く見つける事が課題だなぁと感じていたのですが、新しいミニ・ブラウザ機能とSound Match機能、それからパラーメーターロック機能の登場で、一気に前に進んだ感があります。

Omnisphere 1をどのような音色、楽曲で使っていたのですか?

- これは自分の勝手なイメージかもしれませんが、Omnisphereはパッドやストリングスの音、音響的なものやオーガニックなサウンド、ちょっと空間の広さを感じさせるような壮大な音色が豊富・得意だなというイメージがあって、ほぼそういった音「専用」で使っていました。

Omnisphere 1にはリードシンセやその他の楽器も多数収録されていたのですが、その辺は使っていませんでしたか?

- 正直なところ、リードやアナログ系の音は、ほかのソフトシンセを使っていましたね。使い慣れていることもありましたが、Omnisphereにそういうイメージがなかったというのが最大の理由でした。

Omnisphere 2はサンプルの数も約20GB増えて、さらに内蔵DSPオシレーターが100倍の400種類に増えました。ベーシックなオシレーターはもちろんですが、歴代のビンテージアナログシンセのオシレーターから、デジタルシンセ、ロービットシンセ、複雑なウェーブテーブルまで網羅しています。

20150827_spectrasonics_omni2_retrolands_427- 実はOmnisphere 2で最も楽しみにしていたのがこれで、インストールが終わってすぐに試しました。第一印象としては「これは….ヤバいなぁ」でした(笑)。特にAnalog Timbresの中にある「Retro」は非常にヤバい(笑)往年の名機ばかり揃っています。もちろんゲーム機だけではなく、歴代のビンテージアナログシンセもいいですね。これ1台あったらなんでもできちゃうじゃん!と思いました。 

 


 インストールはDVDディスクが8枚、非常にお手間をかけたかと思いますが、Omnisphere 2そのものの負荷はいかがでしたか?

- インストールは半日かかってしまいました(笑)プラグインとしてはさほど重くもなく、むしろ軽いくらいかなと感じました。マシンはLate 2013の27インチiMac(3.4GHz Core i5 / RAM 16GB)で、複数台のOmnisphere 2を起動しても全く問題ありませんね。

Omnisphereはマルチティンバー構造になっているので、1つのOmnisphereで8つのパートまで賄うことができるのですが….

- はい、それはわかっているのですが、面倒なんですよね(笑)前のチャンネルをコピーした方がサクサク進めるなと思って。でも、結構な数のOmnisphere 2を立ち上げてみましたけど、マシンが重くなるなどはなかったですよ。

 


 新たに追加されたRetro Landサンプルパッチは「みんながイメージするSIDらしいサウンド」

20150827_spectrasonics_omni2_IMG_4862_480今回Omnisphere 2の感想を伺うにあたって、特にサカモト教授にお伺いしたかったことの1つが、新ライブラリーであるRetro Landカテゴリのサンプルです。これは先ほどのオシレーター波形とは別に新たに収録されたサンプルで、往年のゲーム機はもちろん、トイシンセ、マニアックなシンセ、ロービットが特徴の古いコンピューターチップなど数百種類をレコーディングしました。

- こちらも一通りためしました。シンプルだけど図太い矩形波や、ゲーム機ならではの高速アルペジエーターをOmnisphere 2のアルペジエーターで作り上げているパッチなど、曲の中でスパイス的に仕込みたくなる音色がいっぱい入っていますね。チップチューン系の音作りを学ぶにもいいと思います。僕の場合、リードサウンドならオシレーターから作るだろうなとは思ったのですが、サンプルの方にも結構いいチップチューンで使えるリードサウンドが入っていますね。

サンプルライブラリで気に入ったパッチはありましたか?

- やはり、SID系でしょうか。ゲーム系のサウンドを使うことが多いので、真っ先にチェックしてしまいましたね。最近、自分の曲を世界にむけて配信するようになって、海外の方からも反響をもらうようになってきたのですが、海外のアーティストにもSID、コモドール系の音を使う人がすごく多いなと改めて思いました。Omnisphere 2に入っているSID系の音は「みんながイメージするSIDらしいサウンド」がいいクオリティで収録されていますよ。

SIDらしい!と思った部分はどこですか?

- 普通のシンセサイザーで矩形波とかノコギリ波を出した時と比べると、SIDやファミコンのチップはロービットなんですよね。それは、それぞれのゲーム機のCPUが処理できる限界と関連があったわけです。綺麗なオシレーターとは違い、粗くてギザギザしていて、デジタル特有のノイズを含んでいるんですね。それがゲーム機らしさのサウンドになっているのかなと思います。ファミコンのチップと比べてもSIDの方がよりザラザラしていて、その分スピードが速い印象。Omnisphere 2ではこのわずかに感じる違いもちゃんとバリエーション豊かに収録されていますね。

 


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自分のチップチューン制作が変わるかもしれない、400種類のDSPオシレーター

先ほども少しお話しを伺いましたが、DSPオシレーターの方はいかがですか?4種類から400種類へと一気に増えました。

- 実はOmnisphere 1の時代には、サイン波、ノコギリ波、三角波とノイズの4種類しかなかったので、DSPオシレーターには見向きもしていなかったんですが、今回は非常にヤバいですね。矩形波だけでもとてつもないバリエーションがあって、しかも一個一個グラフィックで波形が出てくる。

同じノコギリ波、同じ矩形波でもここまで違うものか!というくらい用意されていますね。

- ファミコンなどの家庭用ゲーム機の場合って、限られたデューティー比の矩形波しかなくて、逆をいえばそれが「ファミコンっぽさ」みたなところではあるのですが、Omnisphere 2のDSPオシレーターを使えば、昔のナムコのアーケード機のレベルまで踏み込むことができるレベルですね。

家庭用のゲーム機とアーケード機では、音もそこまで違ったものなのですか?

- 全然違いますよ。発音数が増えたり、また音そのものも家庭用に比べて豊かなサウンドになります。特にナムコのアーケード機は違っていて、当時のサウンドクリエーターの方々が独自で波形を作り込んで音源チップを作っていたんですね。僕はいままで家庭用ゲーム機の…おそらく多くの方がイメージする「チップチューン」を作ってきたのですが、Omnisphere 2のDSPオシレーターのバリエーションがあれば、アーケード機のチップチューンサウンドも作ることができるなと感じています。

たとえばDSPオシレーターの中に、”Frogger” というオシレーターがあるのですが、おそらくこれはアーケードゲームで有名な「フロッガー」の波形を狙ったものだと思いますよ。実際に演奏してみても…(といい、鍵盤を演奏するサカモト教授)うん、雰囲気ありますね。素晴らしいです。おそらくSpectrasonicsの開発チームは、サンプル以外でもアーケードゲーム機の筐体を大量に計測して、オシレーターとしてOmnisphere 2に取り入れたんじゃないかなぁと思いますね。

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Omnisphere 2の導入によって、サカモト教授の制作に変化は起きそうですか?

- はい、自分のチップチューン制作の可能性がより広がるなという手応えを感じますね。今までだとファミコンやゲームボーイの実機の音を鳴らすか、他社のソフトシンセなどでそれっぽい音を出すかしか手段がなかったのですが、Omnisphere 2があれば一気にそのバリエーションが増えます。往年のレトロゲーム筐体のサウンドがこんなにたくさん手に入ったというのは、非常に大きい変化ですね。

 


 より強化されたシンセサイザーエンジン、「常に起動しておきたい主戦力」

Omnisphere 2のシンセサイザーエンジンとしての評価はいかがでしょう。より強化されたFM/Ringモジュレーション、新たに投入されたグラニュラーシンセシス、1パートで10種類のオシレーターを重ねることができるHarmonia、分厚いサウンドや不安定な挙動を再現するUnisonなど、ありとあらゆるシンセサイザーエンジンを搭載していて、これをDSPオシレーター、サンプル問わず使用することができます。

- アナログシンセや、あるいは8ビットシンセなどでも処理落ちしたかのようなエラーなどの「不安定な要素」を再現するパラメーターが非常に豊富で、独特の揺らぎを得られるのは最高ですね。ファミコンのサウンドでも、打ち込みのテクニックとしてユニゾンを効果的に使うことは多々あって、特にファミコン時代のコナミのゲームサウンドに特徴的なユニゾンを使った名曲が多いんですね。わずかにピッチをずらした矩形波を重ねてメロディーラインを弾く、というテクニックですが、ただ単にコーラス的に重なっているというニュアンスとは少し違うんです。Omnisphere 2のUnisonエンジンは、ただ単にピッチをわずかにずらすだけでなく、ずらし方やずれた波形の揺らぎまでコントロールできるのがいいですね。

Harmoniaエンジンは試されましたか?Unisonとは異なり、同じオシレーターを重ねるのではなく、別のオシレーターを重ねて使うことができます。

- これはまだ試していませんが、面白そうですね。SIDのサンプルにFroggerのオシレーターを3台分重ねる、とかもできるわけですね。

その他、Omnisphere 2を試して気になったポイントはありましたか?

- チップチューン制作をする上で非常に楽になったのが、アルペジエーターの進化ですね。今回から1個1個のノートを音階で指定できるようになったのは、非常に嬉しい強化点でした。チップチューンならではの数オクターブを超えた高速アルペジエーターフレーズなどの制作に便利です。わざと曲のテンポからずらしたコントロールや、ノートの長さ、スウィング感なども分かりやすく調整できるので、非常に使いやすいアルペジエーターに進化しましたね。

最後に、総評をいただけますか?

- 前バージョンのOmnisphere 1の時には、壮大な音とかリッチで立体的なサウンド!というイメージが強すぎたので、曲によって全く使わないこともあったり、あるいは使えるシーンが限られていたように思っていましたが、2になって一気にチップチューンの制作でも常に起動しておきたい「主戦力」に躍り出たなと感じています。チップチューンに限らなくてもいいですね、アナログモデリングシンセとしてもサンプルプレイバックシンセとしてもトップレベルのクオリティだと思いました。

逆にこれだけの機能と音色数が揃ってくると、自分好みの音色を見つけたときや作ったときのキープの方法も充実してほしいですね。今もレーティングができたり自分のタグをつけたりといった機能は充実してきているので、より一層この辺が強化されてくれたら嬉しいなと思います。それほど、音色も充実しているからこそ欲しい機能ではありますけどね。僕の場合は「8bit」ってカテゴリを大量に作りたいです(笑)

Demo Trackサカモト教授によるデモ・トラック

Omnisphere 2を使って作成された、サカモト教授極上のチップ・チューン!

一挙にサカモト教授の「主戦力」となったOmnisphere 2を使用し、サカモト教授ならではの極上チップチューントラックの作成をお願いした。最後にこのトラックをご紹介してインタビューページを締めくくりたいと思う。

 


 Omnisphere 2 “Retro” Demo Song

 

-Omnisphere 2で新規に追加されたサンプリングライブラリ、”Retro Land” カテゴリの中からお気に入りのSID系パッチと、内臓DSPオシレーターから”Retro” の音色を用いて作成しました。リズムトラックは使い慣れた別の音源を使用しています。Omnisphere 2にはいわゆるファミコンっぽい綺麗なピコピコ以外にもアーケード筐体のサウンドを彷彿とさせる音色が多数収録されていて、それを活かしたかったので「昔のアーケード機のごちゃごちゃした感じ」を意識して作成しました。”

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Profileプロフィール

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サカモト教授

ゲーム音楽演奏家・作曲家。

8bitテイストの楽曲の制作を得意とし、オリジナルアルバム『SKMT』は、iTunesStore エレクトロニックチャートでアルバム・シングルでダブル1位を獲得。世界まる見え!テレビ特捜部やQさま!!出演。

2012年はスウェーデンのDreamHack、フランスのJapanExpoなど世界へと進出。

2013年、さくら学院クッキング部ミニパティへの楽曲提供、「勇者と1000の魔王」「三国テンカトリガー」などのスマホアプリへの楽曲提供など、活動の場を広げる。

2014年、待望のオリジナルセカンドアルバム『REBUILD』をリリース。11月28日〜30日にスウェーデン・ストックホルムにて行われる「MIYABI JAPAN STORY」への出演が決定するなど、国内外問わず勢力的に活動している。

日本シンセサイザー協会(JSPA)正会員。

Omnisphere 2製品情報

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Omnisphere 2

数々の賞に輝くOmnisphereの登場から7年以上の開発期間を経て、とてつもなくパワフルで多才なバーチャル・インストゥルメント、Omnisphere 2が誕生しました。

一生かかっても使い切れないと称されたサンプル音源に、さらに20GBもの素材を追加、400を超える新しいDSPオシレーター、数々の新機能を搭載するOmnisphere 2は、あなたの創造力を刺激し続けます。