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第一線を走るコンポーザー・アレンジャーがSC203を導入​ – クリサンセマム ブリッジ : 保本 真吾 氏

2016.10.13

Interviewインタビュー

SEKAI NO OWARI、ゆず、でんぱ組 inc.、Silent Siren、シナリオアート、Charisma.com、GO-BANG’S、みみめめmimi、Q-MHzなど、いずれもクリエイティブな作品を世に送り出すアーティストたちと共に制作を行うクリサンセマムブリッジの保本真吾氏。SC203を聞いてすぐに「あ!いいな!」と感じ、以降の制作にも使用してくださっているという。音楽を産み出す瞬間、音作りをする瞬間にこそSC203はふさわしいと評価する保本氏は、SC203をどのような切り口で捉えているのだろう。
 
数え切れないほどのペダル、リズムボックス、マイク、そして楽器に至るまで最高の状態の「ビンテージ機器」が揃った氏のプライベートスタジオを訪問し、コンポーザー・アレンジャー・プロデューサー目線でSC203を語って頂いた。


クリサンセマムブリッジ 保本真吾氏による、EVE Audio SC203導入インタビュー

ローを感じないまま制作することは、グルーヴを無視して制作しているに等しい

– EVE AudioのSC203を導入いただき、ありがとうございます。SC203の第一印象はいかがでしたか?

お世辞抜きに素晴らしいスピーカーで、鳴らした瞬間に「あ!いいな!」と感じました。音が締まっていて、かつローエンドの質感も素晴らしいスピーカーです。その瞬間から制作を始めたくなったほど「グッと」くるスピーカーだと思いました。

– 保本さんにとって、グッとくる・こないの差はどこにあるのでしょう?

まず僕は、このSC203を作曲や制作に使いたいスピーカーだなと感じたんですよ。その上で僕が一番重要視しているのが「ロー感」。図太いキックの音を鳴らしたときにちゃんとその太さがわかるような「ブンッ」という鳴り方をしてくれるものでないと、作る上で気分が上がらないんですよね。ビンテージリズムマシンの太いキックを鳴らしたはずなのに、チープな音源みたいな鳴り方になっちゃった、という冷めた音がするスピーカーはやっぱり「グッとこない」ですね。

– 「グッとくる」スピーカーを使うことで、制作やアレンジ上に違いが発生することはあるのでしょうか?

明らかにあります。図太いキックがしっかり鳴っていて、そこにベースがどう絡むかを感じさせてくれないと、作っている音楽のグルーヴ感にも影響が出てくるんです。だから制作のときにはいわゆる「モニタースピーカー然」としたスピーカーでは作りたくないんですね。

– SC203は製品名の通り、2Wayの3インチとかなり小型のスピーカーです。低域の量感や質感には問題がなかったですか?

まったく!と言っていいほど問題ありませんでした。僕の環境ではちょっと鳴りすぎているかなと思えるほどで、本体のDSPでわずかにカットをかけたほど、鳴りっぷりが素晴らしかったですね。本体DSPで調整できる範囲が広いことも好印象でした。

– 一般に「小型でローが出る」スピーカーというと、ボワついたローが無闇に出るだけのもの、というものも少なくありませんが…

そうは感じませんでしたね。確かにそういう傾向の製品もありますが、SC203はそういう問題はありません。ソリッドで「見える」ローエンドという感じ。(制作中のトラックを再生しながら)この曲でも図太いキックとベースが鳴っていますが、それぞれの音がしっかり「聞こえ」ますよね?

– 確かに、キックのアタックからベースラインまでしっかり分かりますね。

この低域の再現力は、トラックのグルーヴ感を作る上では絶対にあってほしいものなんですよ。このローを感じないままに制作をするということは、グルーヴを無視して制作をしていることに等しいとも言えると思います。だから僕はSC203を積極的に制作で使いたいなと思うんですね。

SC203を積極的に「制作で」使いたい理由

– SC203を積極的に「制作で」使いたいとのことですが、もう少し掘り下げてお話いただけますか?

少々脱線した話になりますが、僕は「後でミックスのときに、プラグインを使ってなんとかしよう」ということは基本的にやらなくて、録りの段階で音を作り込んでからレコーディングします。例えばドラムを録るにしても、マイキングの段階から微調整を繰り返して、それぞれのマイクにカブった音の倍音の美しさを抑えたいと思っているんです。

話をSC203に戻すと「テンションが上がるスピーカー」というのは、『ただ音が派手なだけ』ということを指しているわけではなく、格好いい素材をインプットしたときに感じる思いを削がずに再生してくれる、ということなんですね。だからSC203を制作のときから使いたいと。なんならこのままSC203をエンジニアさんのところに持って行って「このスピーカーで感じるワクワク感を削がないようにミックスお願いします!」といいたいような、そういった要素を持っているものということですね。

– 実際に今まで、スピーカー持ち込みでそのようなリクエストを出されたことはありましたか?

あります。エンジニアさんに制作時のスピーカーで聞いてもらうことはよくありますね。作曲やアレンジをしているときに自分の頭の中で鳴っている「理想の音や想い」を共有したいからです。後からプラグインで何とかなるから、レコーディングは無難にやっておこう、ということにもならない。制作の現場で使うスピーカーが最も重要だという理由はここにあるんです。

– 必要とあればスピーカーをスタジオ外に持ち出すこともある、という意味では、SC203の小ささは歓迎していただけるのではないでしょうか?

そうそう!運搬方法だけでなく、予算や鳴らせるスタジオがいくらでもあるということであれば、他にいくらでも選択肢はあるだろうと思います。SC203はこの価格帯、この大きさでこの感覚が得られる希少なスピーカーをリリースした。これは重要なことだと感じましたね。それに、ツアーなどでしばらく自分のスタジオに戻れない時にもいいなと思いました。場所を選ばずどこでも音楽制作ができる。小さくて音がいいというものは、実はあまりなかったんですよ。大きいもの、高額なもので「いい」のは当たり前。SC203は音だけでなく、価格、サイズなどのバランスが整った妥協のないスピーカーです。今後は積極的に持ち出して使いたいと思っています。

音の飛び方と、付属のFlexiPad

– 付属のFlexiPadも使用していただいてます。SC203は本体のみで7.5°の角度、FlexiPadをつけることでさらに±7.5°の角度をつけることが可能で、0°から15°までの角度をつけて使用することができます。

僕の場合はデスクトップで使っているのでインシュレーター代わりということでも使っていますが、スピーカー本体を斜め上に傾けるという機構になっていることもいいですね。最近海外のアーティストのライブを見に行くと、多くのプレイヤーのアンプが斜め上に角度をつけて設置されているところをよく見かけていて、もしかしてモニタリングのしやすさという観点だけでなく、音の飛び方そのものにも影響があるんじゃないか、ということに注目していたんです。 ギターアンプやベースアンプなどは斜めに煽る機構を持ったものがありましたが、モニタースピーカーでこれを標準で採用しているものはなかった、あるいは少なかったのではないでしょうか。この観点をいち早く採用していることに嬉しさを感じました。

– 特にデスクトップで使われることを意識した製品でもあるので、正しく聞いてもらいたいという思いが含まれているのかもしれません。

FlexiPadは単体で発売してもいいんじゃないか、とすら思いますね、他のスピーカーでも使える各種サイズなんかを揃えて(笑)それくらい、スピーカー本体にこれが付属していることが正しいことだと思います。SC203の最高の音を聞かせようという「仕掛け」をEVE Audioはしっかり考えていますよね。

– 保本さんの場合、少しだけ内ぶりになるようにセッティングされていますね。

デスクトップ設置ということで、この角度も重要ですね。あまり内側に向けすぎてもダメだし、真正面を向いている状態が理想的ともいえない。どんな角度がベストかは耳までの距離と机の高さによって変わってくると思うので、ここに時間を費やしてほしいです。音の飛び方を計算しているスピーカーなので、しっかりセッティングしてあげれば最高の音が出ます。FlexiPadを使うことと、少しだけ内側に向けること、SC203オーナーの方にはぜひ試してもらいたいですね。

– コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーの立場でもある保本さんの視点で、楽器店などでSC203をチェックするときに、おすすめのソースはありますか?

聴感はひとそれぞれなので、自分の好きなCDでいいと思います。が、強いて言えば「自分が好きな曲」で「キックが良くなっている曲」がいいんじゃないかな。僕だったらコールドプレイのような音の重ね方や音作りが好きなので、彼らのCDなどを使います。

– 「キックが良くなっている曲」というのは、理由があるのですか?

ギターやボーカルなどの多くの要素はミドル(中域)に集まっています。「ミドルが鳴らないスピーカー」というのはほとんどないので、どんなスピーカーで聴いても大抵良く聞こえるんですよ。ローエンドはさっきもお話したような「グッとくるかどうか」という部分も含めて、ちゃんと鳴っているかどうかの物差しにしやすい。だからCDなどでなくても、好きなリズムマシンなどを鳴らしてもいいかもしれませんね。自分の好きな、聞きなれたリズムマシンの音なら判断も素早くできますから。

– このスタジオには、数々のビンテージリズムマシンが並んでいますね。いずれも美しく、ミントコンディションのように見受けられます。

ビンテージのリズムマシンが大好きなので、かなり苦労をして状態のよいものを見つけています。LinnDrumのキックだけを鳴らしても僕はスピーカーの好みが判断できてしまいますね。SC203でもチェックした項目ですが、自分のテンションが上がるような「格好いい音か、どうか」が大事だと思います。スピーカーメーカーのカタログやウェブサイトに書かれているような「フラットだ」とか「ミックスに最適」みたいな言葉に惑わされず、自分の耳で聞いて格好いいと思えるかどうかを大事に判断した方がいいですね。

機材の「個性」と、音楽の「個性」

– 他のスピーカーと比べたときに、SC203が優れていると感じられた部分はありましたか?

素晴らしいスピーカーはたくさんありますし、高額なスピーカーは良いに決まっている。価格の高いものは、高いなりの理由があるはずです。数十万円、あるいはそれ以上のスピーカーとSC203を比較して「全く遜色がない」とはもちろん言いません。が、これがペアで6万円台という価格を考えた時に驚きを感じたことも事実です。もしも今、スピーカー選定に迷われている方がいらっしゃるとしたら、まずは「自分がそのスピーカーを使って何をしたいのか・どこに重きを置くか」を考えてみるといいと思います。僕はここまでずっとSC203を「制作で使いたい、テンションの上がる音が出るスピーカー」と言っていましたが、もちろんミックスで使用することも十分に可能でしょう。でも僕は積極的に制作で使いたいと感じ取ったんですよね。だからもし、知人に「SC203の魅力って何?」と聞かれたら、「格好よく気持ちいい音が出るから、ノリノリで制作できること!」という言葉しか言わないかも(笑)

10万円以内という価格帯の製品をいろいろと聞き比べたこともありますが、SC203のこの傾向は他の製品にはないんです。ここまで含めて、SC203が優れている点と思っています。

– ここまでの保本さんのお話を総合すると、価格と出音の「費用対効果」だけでお話しをされているのでは「ない」気がします。

スピーカーなどの機材だけでなく、音楽そのものにも同じことを感じているからかもしれませんね。僕自身「無難なもの」にあまり魅力を感じないんです。『制作にも使えます、ミックスにも使えます、フラットです』みたいなものよりも『不器用な部分はあるかもしれないけど、この部分は負けないよ』というスタンスを持ったもの方が好きです。例えばアップルの製品は、その最たるところだと思いますよ(笑)

ここにあるE-muのSP-1200、オペレーションや使い勝手は非常に悪いし、サンプリングタイムも短い製品ですが、そこを補うほどの魅力に溢れた音を持っています。僕の制作には欠かせないものですし、僕自身も惚れ込んで使っています。

– グリーンパネルにカスタマイズされたSP-1200、手の届く範囲に設置されているところを見ると、保本さんの「相棒」なのだなと感じます。

SP-1200の使い方は人によって違うように、SC203もまた人によって評価したいポイントも違ってくると思います。僕は初めて音を聞いたときに「このスピーカーは音楽を”作って”いる人に向けた製品だな」というメッセージを感じたんですね。数十万円する大きなスピーカーは買えないけど、いい音で音楽を作りたいんだ!という人をきっちり見据えているように思いました。まずはこの小ささがそれを物語っている。

– でも、小さいというだけであれば他にもスピーカーはあります。

そうですね。だから、大きさだけではなく大事なのは「音」そのものなんです。SC203は音を聞いた瞬間に「音楽が作りたい!」という気分にさせてくれました。キック、ベースの鳴りやグルーヴ感まで聞こえる余裕と、リボンツィーターならではの高域の美しさ。この音をこの小ささで実現しているスピーカーは他にない。これがEVE Audioの個性、キャラクターなんだなと思います。音楽も同じだと思うんです。個性やクセのあるほうが魅力的で、永く残る作品となる。無個性で無難なものはすぐに消えていってしまいますよね。

こういう想いで音楽を作っているので、機材にも個性的なものを求めるんですね。SC203、さすがに音楽や楽曲に現れるような個性とは意味合いこそ違うけど、音楽をつくりたくなるパワーやテンションを高めてくれる「個性」がある。こういったものを使って音楽を作ることで、音楽そのものにも個性が出るのではないかと思います。

*この記事は株式会社メディア・インテグレーションMI事業部が発行した電子書籍 「モニタースピーカー設置のTips」 から転載したものです。


プロフィール

保本真吾
(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)

サウンドクリエイターとして活動していた保本真吾とライブなどのプロデュースを手掛ける August Flower が 2010 年 にプロデュースチームを結成。 SEKAI NO OWARI、ゆず、でんぱ組 inc.、Silent Siren、シナリオアート、Charisma.com、GO-BANG’S、みみめめmimi、Q-MHz等のアレンジやサウンドプロデュースを手掛ける。また、 楽曲提供や劇伴、ライブ音源制作やコンサートのサウンドプロデュースなど幅広く手掛けている。


 

 
 
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