本記事はSpectrasonicsウェブサイトのコンテンツを日本語化したものです。
元記事リンク(Spectrasonicsウェブサイトへのリンク)

スティーブ・ヴァイといえば、優れたコンポーザー/プロデューサーとしての活躍もさることながら、あらゆるプレーヤーから賞賛をうける真の「ギターの神」だ。フランク・ザッパのもとで不可能とも言われた演奏をこなし、デイヴィット・リー・ロスやホワイトスネイクとの活動ではチャートを席巻。そして優れた才能をもつミュージシャンを引き連れ、数えきれないほどのソロ・プロジェクトを手がけてきた。数百万枚にもおよぶアルバムセールス、そしてグラミー賞も3回獲得している。近年では作曲家として、エレクトリックギターと交響楽団のための作品を制作し、その手腕を振るった。優れたミュージシャンシップを体現し、自分自身にもリスナーにも挑戦し続けている。そしてスティーブは、Spectrasonicsのサウンド/インストゥルメントを創設初期から使用するユーザーでもある。
スタッフHです。
前回ポストのエリック・パーシングさんのインタビュー、楽しんでいただけましたか?非常にたくさんの方にお読み頂いているようで、嬉しい限りです。
エリック・パーシングさんは世界中のサウンドデザイナーからだけではなく、数多くのミュージシャンからも厚い信望を得ており、NAMM SHOWでは彼が立つステージには常に超ビッグミュージシャンがいるんですね。一般の人に混じって。そういったビッグミュージシャンにとっては、エリックさんが開発するインストゥルメントが楽しみで仕方ないようです。
本日ご紹介するのは、そんなビッグミュージシャンの一人。常に進化し続け、多くのファン、フォロワーのいるハービー・ハンコック氏。「ジャンルを超えた活動」とは、彼のためにあるような言葉ではないでしょうか。
ハービー・ハンコック氏は古くからのSpectrasonics製品のユーザー。以下は、Spectrasonicsウェブサイトで公開されているインタビューを翻訳したものです。
第一線のミュージシャンは、どのようにインストゥルメントを使うのか。非常に興味があります。
案外私たちと変わらない使い方をしていたりしたら…もっと精進しないといけませんね。では、レッツゴー。

近年のミュージックシーンを象徴する、ハービー・ハンコック。
彼は音楽の限界やジャンルなどという枠組を超えて、常に名声を保ち続けているアーティストである。
簡単に説明するならば、アコースティックやエレクトロニックジャズやR&Bと、ジャンルを超えて多大な影響を与えた数少ない人物だ。
また彼は他者に先駆け、ソフトウェアシンセなどの最新技術やコラボレーションに取り組んできた。私たちSpectrasonics社一同は、彼が長年にわたるSpectrasonicsのユーザーであることを、大変嬉しくかつ誇りに思う。
ハービーがOmnisphereを始めて触れた時、彼はこう感想を述べてくれた。
「何時間かけてでもいじっていたいほどのサウンドだ。時間を忘れるほど、のめり込んだよ。その楽しさを誰かと共有しようと思って、マーカス・ミラーに来てもらって、事前に温めておいたアイデアをジャムしたよ。あの夜は本当に楽しかった!」
「初めてStylus RMXを使った時のことも覚えているよ。あのグルーブにはただただ、感心させられた。Chaosやミックス等の中身の部分に慣れてさえしまえば、本当にできることが多いんだ。他にも、特にTime Designerとの連携など素晴らしい機能をたくさん積んでるしね」
サンプル・ライブラリなど、Spectrasonicsの旧製品も彼のアレンジでフィーチャーされている。
「Vocal Planetなんかもよく使ってるよ。様々な文化圏の歌い手を自分のものにできるからね。数年前だけど、サラウンドのライブでVocal Planetを使った。現代的なバックグラウンド・ボーカル、ジャズのスキャット、トゥバの歌い手、ヒマラヤの女性ボーカル、こうしたサンプルをゴスペル・サウンドとのハーモニーを意識して使ってみたんだ」
Imagining the Possibilities
彼が手がけたアルバム、”Possibilities” の制作については、
「スティービー・ワンダーのカバーで、グルーブにStylus RMX、ベースにTrilianを使ったよ。このアルバムのドキュメンタリーの撮影では、Greg Phillinganesと僕がVocal PlanetとStylus RMXを使ってファンキーなグルーブを作ったりもしたね。そんな素晴らしい音楽が生まれる瞬間が、このプロジェクトのドキュメンタリーにおさめられているよ」
グラミー賞を受賞し、世界的にも大きな影響を及ぼした”Imagine Project”。このアルバムには特にOmnisphereとTrilianが使用されている。
「アルバムのある曲では、マーカス・ミラーがベースを担当している。でもレコーディングの後、彼のベースラインよりいいアイデアが浮かんだから、ベースラインを変えようと思って僕がTrilianを使ってキーボードで演奏したんだ。ちなみに、Trilianのベースサンプルのいくつかは誰の演奏か知ってるかい?
マーカス・ミラー本人だよ! 彼自身の演奏なんだ。意図的に彼の実際の演奏とTrilianの音をミックスしたってことだね。
マーカスが演奏した音と、僕がTrilianを使ってキーボードで演奏する音(笑)、どっちも彼なんだ!たぶん、彼には違いがわかると思うけどね」
Music from the Heart
良い作品をつくろうと、向上心のあるミュージシャンに対して何かアドバイスできることがあるかと尋ねたところ、彼はこう答えてくれた。
「音楽は人間をひとつにする素晴らしいものだ。大事なことは、君の心が大切だと感じる、思うところを表現すること。他人などに流されず、自分の信念を貫き通す勇気を持つことだ。たとえ、自分自身の中に疑念が湧いてしまったとしても、君のハート、信念にしたがって動くことだよ!」
常に未来を見据える彼は、こう続ける。
「近くとりかかる、ソロ・プロジェクトが楽しみだね。KorgのOasysやSpectrasonicsのOmnisphere、Trilian、Stylus RMX、これらの機材で作る音楽は、とてもエキサイティングなものになりそうだよ」
原文リンク:http://www.spectrasonics.net/news/news-content.php?id=60
スタッフHです。
世界中にサウンドデザイナーという肩書きを持つ人はたくさんいますが、そういった中でもトップに君臨し続けることは、非常に難しい事です。
しかしながら、その困難に果敢にも挑み続け、他社のサウンドデザイナーからも尊敬される存在となる人物。それが、本日ご紹介するSpectrasonicsの創業者であり、クリエイティブ・ディレイクター、サウンドデザイナーである、エリック・パーシング氏です。
エリック・パーシング氏はかつてRolandに所属し、現在なお名機と呼ばれる数多くのシンセサイザーを生み出してきました。その後、自身のアイデアをより理想的な形で世界に発信するために、Spectrasonicsを設立することになるのです。
そんな生きる伝説、エリック・パーシング氏のこれまでの遍歴と、これからの将来について米国ウェブサイトのKVRにてロングインタビューが公開されました。私たちはKVRスタッフに許可をいただき、本記事を和訳しました。
私たちにとって大事なツールである未来のソフトウェアはどう進化していくのか。音楽制作に携わる全ての人に読んで欲しい、長編インタビュー記事です。
Big thank you, Chris and all KVR staff for letting us post this article!

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記事/インタビュー:Chris Halaby(KVR Audio)
およそあらゆる業界は常にチャンピオンを必要としている。個人、会社を問わず、マーケット全体を推進し、他の全ての人々が目指すべきハードルを常に引き上げていく存在を。
Spectrasoncisの創業者でありクリエイティブ・ディレクター、エリック・パーシング(Eric Persing)は、ソフトウェア・プラグイン/サウンド・デザイン業界における、そんなチャンピオンの一人だ。
音楽関連の製品に携わる多くの人々と同じく、エリックのキャリアは、ある楽器店からスタートした。しかし80年代初頭のMIDI誕生から間もなく、当時ローランドUSを率いていたTom Beckmenに見出され、彼はローランドで働き始める。(Tomはその後Opcode Systemsの株式を取得、引退した現在はなんとワイナリーを経営している)
当時の私は知らなかったが、私とエリックとの初めての出会いは、ローランドD-50の購入を通じてだった。彼はこの有名なシンセサイザーを始めとして、数多くのクラシック・シンセサイザーのサウンド・デザインを手がけていたのだ。その後、私の購入した殆どの製品は彼が開発に関わったものばかりだ。
私が最も頼りするインストゥルメントは、Spectrasonicsのフラッグシップ・プラグインOmnisphere、そしてTrilian、Stylus RMXだ。もしあなたがこれらを試したことがないとすれば、今まであなたは本当に重大なものを見逃してしまっているのだ、と言っておこう。
1982年のこと、カリフォルニア州オレンジ郡にあった、当時としては相当普通じゃない、Goodman Musicという楽器店で働き始めた。この店のすごかったのは、世界に存在するあらゆるキーボード、シンセ、オルガン、ピアノを全て揃える、という野望を持っていたことだ!
でもおかしなことに、店舗は巨大で高速道路からでも見えるのに、たどり着くのにものすごく骨が折れたんだ。そんなわけで、残念なことに客はほとんどやってこなかった!
客が来なければ、することもない。なので僕らはすべての時間を使って、店中の機材で実験を繰り返した。MIDIが登場したばかりのすごくエキサイティングな時代だったから、店のあらゆるものをMIDIで繋ごうとしたんだ。でも当時はこうしたことさえ非常に複雑でね、その頃のMIDIキーボードの多くは、1チャンネルのMIDIしか送信できなかったんだ。にも関わらず、受信側は16チャンネル全てをオムニ・モードで受けてしまう。でもなんとか方法を見つけ出して、全機材が正しく動くように設定したんだよ。
店にいる間は昼夜を問わず、まるで開拓者みたいな気分だったな。全部の機材がMIDI接続され、巨大なPAにつながっている。客がやってくると、僕らは「ちょっとこっちにきてみなよ」と声をかけて、再生ボタンを押す、そうすると店中にあるシンセが唸りを上げて鳴り出すんだ。彼は「なんだこれ!」と驚くわけだ。
ちょうどその頃、Roland JX3Pが発売されて、収録されたファクトリー・パッチが、その……酷かったんだ…。funny catだのspace boyだの、80年代初めにありがちな、冴えないサウンド。そこで僕は独自にプリセットを作り始めた。JX3Pは2オシレータを搭載していたけれど、Prophet 5よりもはるかに安かったんだ。Prophet 5のサウンドを再現して、それを元にめちゃくちゃ凝ったパッチを32個作った。で、当時この店でJX3Pを買ってくれた人には、追加の100ドルで、この32パッチを収録したデータ・カセットも提供していたんだ (編集注:ちなみに現在Omnisphereには8000ものパッチが収録されている)。ほかにもいくつか裏技を見つけてね、例えばあるボタンの組み合わせでシーケンサーのメモリを2倍にできる、とか。インターネットのある今では考えられないけど、当時は20ドルでこうした裏技も教えていたんだよ(笑)。
あるとき、ローランドのセールス・トレーニング担当者が「これは、いったいどうやったんだい?」と尋ねてきて、結局彼にも仕組みを教えることになった!するとTom Beckman(ローランドUSの創業者)がこの事件を聞きつけたみたいで、「オレンジ郡の店で何が起きてるんだ?」と。で、彼が来店することになって、それはもう盛大なデモをやったんだ、さっき言ったJX3Pパッチも使ってね。最終的に、1984年のNAMMショウでデモを担当しないか、と誘われて…もうぶっ飛んだね!その年は新製品が山のように発表されたんだ。初のSMPTE-MIDIデバイスSBX-80、同じく初のMIDIドラムパッドOctapad、MIDIコントローラーにキーボード、モジュール、あとはSuper Jupiterとか。NAMMでの評判が良かったこともあって、ローランドのプロダクト・スペシャリスト兼ローランド・ジャパンのチーフ・サウンドデザイナー/コンサルタントとして働くことになったんだ。
もちろん、折にふれて会うことがあるよ。彼は間違いなく僕のヒーローで、素晴らしい人物だ。”シンセサイザー界のウォルト・ディズニー”といって過言ではない。彼も80歳を超えているから、ぜひまた会う機会を得たいと思っているよ。
90年代の初頭、僕はロスアンゼルスでセッション・ミュージシャン/プロデューサー/アレンジャーとしてすごく多忙な日々を送っていた。ローランド・ジャパンでもサンプル・ライブラリのレコーディングや開発を手がけていたしね。どちらの世界でも起こり始めた、ドラマチックな変革が明確になってきた頃だ。
音楽業界では、一緒に仕事をするミュージシャンやプロデューサーが、大勢の人間を一箇所に集めて音楽を作るかわりに、一人で作業をするようになっていった。日本では、ローランドの哲学が「バーチャル」なものにそれほど積極的ではないと、僕は気づき始めたんだ。彼らにとってサウンドはあくまでハードウェアに付属するものだった。ハードウェアのために工場を稼働させなくてはいけない、でもバーチャル・ソフトウェアを作るのに工場は必要なかった。
同じ頃、まだ小さかった「インターネット」なるものについて耳にするようになってね…(笑)
KVR:そう、あれはちょっとどころじゃない大変革だった!
こうした世界が互いにぶつかりあう中で、当時の僕はJV-1080の開発に携わっていたんだ。でも音楽プロデューサーにとって、僕を一日雇って何個かのカスタム・サウンドを作るより、僕が作った500以上のパッチを収録するローランド・シンセサイザーを買うほうが、格安というわけだ。自分自身を失業に追い込もうとしていることに気付かされたんだよ!
KVR:なんてこった!
と同時に、その頃「Bass Legends」サウンドライブラリのアイデアを温めていた。スタジオでの仕事を通じて、マーカス・ミラーや、エイブラハム・ラボリエル、ジョン・パチトゥッチといったベーシスト達と親交があったからね。
でもこのアイデアを実現するには、ローランドがベストな場所じゃないことは分かっていた。どうしていいか、くじけそうになった時、妻のLoreyが「ねえ、自分たちでやればいいわよ!」と背中を押してくれたんだ。こうしてSpectrasonicsは、ひっそりと始まったんだよ。
KVR:当時のSpectrasonicsはハードウェア・サンプラー用のサウンドを専門に制作していたよね。
そう。ハンス・ジマーを始めとする、本当に素晴らしいミュージシャンたちと仕事をする栄誉に恵まれた。おかげで、事実キッチンに引いた5回線の電話しかない小さな自営業にも関わらず、創立当初から、ハイ・プロファイルなプロ仕様のイメージをアピールすることができた。始まりは小さなアイデアに過ぎなかったものが、ここまで大きく成長してきたんだ。
KVR:Spectrasonicsは、最も早くからスケールの大きなバーチャル・インストゥルメントを発売したメーカーだ。サウンド制作からフルタイムのソフトウェア開発へと、どんな変遷があったのかな。
かなり初期の段階で、数多くあるサンプラーのプラットフォーム全てに対応することは、重荷になるだけでなく、アイデアの実現そのものを制限してしまうことは明らだった。僕らはコンピューターこそが未来だと信じ、その好奇心もあって、ソフトウェア・シンセサイザーの開発に取り組み始めたんだ。
しかし、僕自身ソフトウェア・プログラマーではないし、どうやってバーチャル・インストゥルメントを実現するべきかについて、具体的なアイデアもあまりなかった。Spectrasonics最初のインストゥルメント、Atmosphere、Trilogy、Stylusは、当時フランスでUVIエンジンの開発を行っていた友人からライセンスを受けた技術を使い、リリースされた。こうしたインストゥルメント製品の成功から、ソフトウェア会社とはどうあるべきか、学ぶことが多かったよ。
KVR:現在は全て自社で開発を行っているんだね。
そうだ。最初のインストゥルメント製品群をリリースした後、アイデアを思うとおりに実現し、継続していくには、専門のソフトウェア・チームが必要だということがはっきりしたんだ。Glenn Olander(Crystalシンセサイザー開発者)をソフトウェア・チームのチーフに迎えられたことは、本当に幸運だった。その後のSpectrasonics製品は、すべて自社で開発したテクノロジーに移行した。Stylus RMXに搭載したS.A.G.E、そしてフラッグシップとなるOmnisphereとTrilianを駆動するSTEAMエンジンは、本当に強力なものだ。ここまで本当に大冒険の道のりだったよ!
KVR:Spectrasonicsの開発理念をふたつの言葉で表すとすれば、なんだろう。
“パワフルかつシンプル”。これが全てのデザイン理念におけるガイドラインだ。複雑で強力なツールを、本当に簡単に使える、創作意欲をかきたてるものにしたいんだよ。
もちろん、僕は音楽一家に育ったんだ。父はあらゆる楽器を演奏する。聖歌隊の監督や、スタンフォード大学でも教鞭を取っていたし、交響楽団で演奏もしていた。周りには常に音楽があって、ピアノを教えてくれたのは母だ。といっても、その他全てのことは独学で学んだよ。シンセサイザーについて言えば、70年代にはまだ新しい分野だったから、どのみち自分で勉強する必要があった。Alan Strangeの「Electronic Music: Systems, Techniques, and Controls」を子供の頃に手に入れて、それこそ本にあることは全て学んだ。本物のシンセを買えるようになる、はるか以前のことだよ。
当時、小学校6年だったと思う。サンフランシスコにあったGuitar Centerを訪れたんだ。当時はこの店舗ひとつきりで、しかもまだまだ小さかった。そこにはシンセサイザー専用のクールな部屋があって、Moog Modularが全部揃っていた。Sequential Circuits programmerの初期モデルもあったね。Prophet 5のはるか以前の話。ヘビーな部屋だったなあ。一日中Minimoogを演奏して、どうやってサウンドをオフにするかも分からなかった!
KVR:今のGuitar Centarからは想像もできないね。
(笑)まったく、でも一日中そこで過ごして、僕のDNAは永遠に書き換えられてしまったんだ。初めてシンセサイザーに触れたあの日以来、それ以外のことは考えられなくなってしまったよ。
我ながら、音楽の趣味はそれこそ種々雑多だね。またそれが色々な意味で役立っている。Spectrasonicsのユーザーは、特に現在、スタイルやサウンド、分野も様々だからね。アコースティック、エレクトリック、エレクトロニック、とにかく幅広いスタイルに興味を持って好きになること、これが大きな助けになっている。
そうだな、ヴァンゲリスの影響は大きいね、あとクラフトワークやELP、ヤン・ハマー、イエス、ジェネシス、トーマス・ドルビー…みんなにも馴染み深いアーティストだね。あと当時でもそれほど有名ではなかったけど、とても重要なエレクトロニック・ミュージックの先人たち、ロジャー・パウウェルのソロ作品とか。最近では、音響が先鋭的で、かつ音楽的に破綻していないオリジナルなサウンドだったらどんなものでも好きだよ。アモン・トビン、スクエア・プッシャー、エイフェックス・ツイン、他にも現在進行形のエクスペリメンタルなもの。ポップ・ミュージックでは、イモージェン・ヒープのファンなんだ。彼女は素晴らしいね。
KVR:彼女はすごいね。特にFrou FrouでGuy Sigsworthと組んでいた曲とか。ところで、Moogを使った作品に絞ると、長年聞いた中で特に重要だと思う作品はあるかな。
一番最初に思いつくのは、ラリー・ファーストのSynergyが1978年にリリースしたアルバム「Cords」の「Phobos and Deimos Go To Mars」という曲かな。アルバムもすごくいい。
ラリーの作品、特にさっきの曲で、僕は初めてサンプル&ホールドが炸裂する、リッチなアナログ・サウンドを体験したんだ。でもELPのKarn Evil #9みたいなフィルターじゃない、モジュラー・シンセが火を吹くようにサウンドを発し、全てがランダムだ。OmnisphereのBob Moog Tribute Libraryにラリーが参加してくれたことは、大変な栄誉だった。彼が提供してくれたサウンドは、実際にアルバムで使用されたものだった。マルチトラック・マスターの手になる逸品だ。聞いてすぐに、これは「Games」で使われたサウンドだ!と気づいたくらいだ。
今の人達は知らないかもしれないけど、ラリー・ファーストは、ピーター・ガブリエルの作品にも深く関わっている。「Biko」のバグパイプを初め、数多くの印象深いサウンドを創りだした。バグパイプのサウンドはラリーがModular Moogで作ったものなんだ、本物じゃないんだよ!
あとはウェンディ・カルロス、音響的なボキャブラリーを推し広げたという意味で、彼女の貢献は計り知れない。
KVR:Spectrasonicsは、ユーザーと製品のインタラクティブな関わりをとても重視している。良くも悪くも、テクノロジーの変遷がユーザーの体験に与えてきた影響を、どう見ているかな。
ポジティブに考えれば、あらゆるものへのアクセスが容易になり、サイズも格段に小さくなって、どこにでも持ち運べるようになった。上手に使えば、思いついたことを何でも実現できる。素晴らしいクオリティと質感を備えたサウンドを、信じられないほど安価に手にすることができる、その進化にめまいがするほどだ。
障害となっていた壁は全て崩れ、無いも同然の状態だ。でもそれが別の興味深い問題として現れてくる。何もかもが努力を必要としないから、簡単に創作のモチベーションを失ってしまうんだ。ハードウェアシンセと巨大でコストの掛かるスタジオが全盛だった時代と違って、何かのiPadアプリを、いつの日か手にいれてやろう、なんて夢見る人はいない。すぐさまアプリを手に入れ、数日使ってみる、飽きたらまた別のものを試す。こうした使い捨ての問題が、誰も予想しえなかった音楽テクノロジーにおけるダークサイドだ。
でも、たとえばiPadにMIDIを繋ごうとする人はまだ少ない。決して難しいことじゃないのに。今MIDIを試しているのは、実際のところ開発者がほとんどだ。エンドユーザーではあまり見かけない。そして見せてみると「え、そんなことができるのか?」という反応が返ってくる。
アップルが出しているカメラコネクション・キットとUSBケーブルで繋げることができる。もし「えー、僕のキーボードにはUSBなんて付いてないよ」なんて場合は、USB-MIDIの変換ケーブルを使えば、大した問題ではないんだ。どこの楽器屋でも売ってる(笑)。
こうした状況も、新しいデバイス、AlesisのIO Dockなどによって変わってくるかもしれないね。実は先日買ったばかりだけど。間違いなく今までの流れを変えるものだし、iPadをポータブル・マルチトラックレコーダー/サウンドモジュール/MIDIデバイスにすることができる。iPadの可能性を見過ごしてきた人にとって、大きな架け橋になると思う。
つまり、そう。間違いなく、良くも悪くもあらゆることが大きく変わった。
KVR:この変化はソフトウェア業界にどういった影響をおよぼすだろう。今はまるで新しい土地の奪い合いだ。NIみたいな大会社から、聞いたこともないソフトカンパニーまで。新しくて奇抜なものなら、ユーザーはとにかく買って試そうという…
いずれ落ち着いていくとは思うよ。既に飽和状態に達しているし、それはあっという間に起こったから。
その年のかなりの期間を費やしている、でもOmni-TRについて、これでお金を稼ごうとは僕らは考えていないんだ。Omnisphereがもっと欲しくなるようなアプリだからね。Omni-TRは、Omnisphereをよりフィジカルに使うための可能性を開いたアプリだ。iPadのタッチ・リモート(TR)コンセプトに、僕らは相当興奮したんだ。間違いなく、今後もこのコンセプトを推し進めるつもりだよ。iPad/タブレットの世界がどうなるかは未知だけど、従来スタイルのコンピューターの方が常によりパワフルである、という事実は変わらないと思うんだ。それぞれの長所を活かすことで、どちらも賞賛に値するものになる。
僕が常に興味を持っているのは、新しいコンピューターを使うことで生まれる、音楽・音響の新たな可能性、その可能性がどんな風に僕らの開発環境を次のレベルへ引き上げてくれるか、といったことだ。マスマーケット向けのこじんまりした「ほかより使えない」製品を作ることではない。すでに大勢の人がそうしているし、中には素晴らしいものもあるけれど、多くのそうした製品は短命に終わってしまう。iPadの持つ根源的なアドバンテージは、素晴らしいインタラクティブ性を備えたタッチ・ユーザーインターフェースにあると思う。これでホスト・コンピューターが必要なパワーを提供できれば、両者のベストな特性を利用できるんだ。
業界的な話をすれば、AppleがGarageBand for iPadでやったことは本当にすごい…でも4.99ドルという価格は、あまりにクレイジーだよ。盛り込まれたアイデアはどれも素晴らしいし、ミュージシャンとしてはとても気に入っている。でもAppleがあまりに低価格に設定したことで、ある意味で多くの開発者のイノベーションを潰してしまっているんだ。20ドルじゃダメだったのかな?ときとして、あまりにもマス向けのやり方は、個人の開発者たちを抑圧してしまう。あんなにパワフルなDAWソフトがたったの5ドルだなんて、どうやって太刀打ちしたらいい?
KVR:全く同感だ、おかしいよね。あれを見て誰が次にiPadレコーディング・アプリを出そうと思うだろう。
彼らは「ハードルを上げるもの」といって発表したし、プログラミング的な観点からすると、まったくそのとおりだ。でも逆に価格のハードルを下げてしまった。ソフトウェアをまるで何でもないように扱うことは健全とは思えないし、これがどういう方向に向かうかは分からない。はっきりしているのは、iPadやそれに類するものは、今後スタジオでも大きな役割を担うだろうということだ。優れたインターフェースと持ち運びのしやすさがもたらす利点は大きい。
音楽関連の製品でも、iPadを統合する動きが出てきているね。StudioLogicのMIDIコントローラーは、ディスプレイを省くことで価格を抑えた。もしディスプレイが欲しければ簡単だ、iPadをスライド固定すれば、全部のコントローラーがそこに表示される。iPadが楽器の一部、ディスプレイに取って代わる。
こうした場合、開発者は直接iPadアプリを販売して利益を得る必要がない。でも製品への付加価値はとてつもなく大きい。製品の規模が大きくなるほど、こうした傾向が顕著になってくるはずだ。
KVR:今後バーチャル・インストゥルメントのデザインと「タッチ操作」はどう関わっていくだろう。
最近、少なくない人たちから、もう音楽を作らなくなったので持っているインストゥルメント製品を処分したい、という話を聞くんだ。僕にしてみれば「待って、なんだって?もう音楽を作らないってどういうことだい?」だよ。しばらく音楽を作ってきて、ある時点から作らなくなる…これはミュージック・ソフトウェア業界全体にとって、とても危険な兆候だよ。人々は所有するインストゥルメントと、心のつながりを持てないでいる、ということだからね。
iPadの優れた点の一つが、インストゥルメントに直接「触れる」ということだ。そうするとことで何かが起こって、本物の楽器のように、より強いつながりが生まれてくるんだ。マウスでこの感覚を得ることは難しいよね。
音楽制作はかつてないほど簡単になったけれど、ときに選択肢が多すぎると、1万個もチャンネルがあると、全部がどうでもいいと感じてしまう。僕らがごく少数のパワフルな製品に集中するのは、そういった理由もあるからなんだ。
KVR:DX7の音色数は32パッチ、カートリッジで拡張しても64パッチだ。選択肢の数に圧倒されて、人々の興味が離れてしまうこともありうるということだね。
まさに。Omnisphereにも同じことが起こった。音色ライブラリがあまりに巨大すぎる*。パッチの数に圧倒されることなく素早く作業ができるよう、ブラウザ機能の改良は常に課題になっている。
*訳者注: Omnisphereのプリセット・パッチ数は8000を超える
ミュージシャンとしての経験上、あとソフトウェア・プラグインを多用するようなエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーたちを見ていて気づいたことだけど、僕たちのような人間がハードウェア・シンセに魅せられてしまうのは、「そのとき限り」の瞬間を体験できるからだ。プリセットを保存できないハンズオンのアナログシンセ、Minimoogがまさにそうだし、例えばプリセットをプログラムできるJupiter 8でさえ、大規模なライブラリに頼ることはできない。Minimoogでは、今やっていることに必要な特定のサウンドを、その場で作ることになる。そこから生まれてくる相互作用は、とても美しいものだ。
こうしたプリセットを持たない楽器を、僕はなるべく大事に取っておくようにしている。その時の気分だったり、ある曲に必要になるサウンドだったり、必要に応じてその場で作っていく。そうすることで驚くほどの充足感を得られるんだ。Moogシンセサイザーを使う人々は、自分自身と楽器に、とてつもなく深いつながりを持っている。
ソフトウェア・シンセとこうした繋がりを持つことはとても難しい。このギャップを埋めるために、僕らは懸命に努力している。そういった意味でiPadは素晴らしいデバイスだ。新しいImposcar2のハードウェアコントローラーも同様にすごくエキサイティングだと思う。
でも、Omnisphereのようなインストゥルメントと繋がりを得るための近道は、ファクトリー・ライブラリーを全部無視して、とにかく触って、一からサウンドを創ってみることだよ!
KVR:ミュージシャンは自分の楽器を愛するべき、ということだね。
そのとおり!そうすれば、僕らが自分たちのインストゥルメントを同じように愛し、成長していくのを見ていたいと願っていることを、わかってもらえると思うんだ。これは単なるビジネスじゃない。500ドルのインストゥルメントは、今のご時世では高価な部類に入るだろう。僕らは最大限の努力を払って、その価値を保っていきたいと思っている。多くの人に、この楽器は価格に見合う素晴らしい価値がある、手に入れたくてたまらない、と感じてもらいたいんだ。趣味で音楽を作る人にとっても、手の届かない価格ではないよね。だから手にしてもらうための理由が少しでも多くなるよう、僕らは必死に頑張る。まあ、今までスタジオの機材一つに何千ドルも費やしてきたプロなら「もちろん!」と手にとってもらえるだろうけどね。
45名以上もの世界中のアーティスト/サウンドデザイナーからサウンドを提供してもらったからね。この素晴らしいライブラリの制作はすごい勢いで進んだんだ。ライブラリの利益は100%、次世代への教育を目的として、ボブ・モーグ財団に寄付されている。
さっきも話したとおり、子供の頃に初めて弾いたMinimoogは、僕のDNAを完全に組み換えてしまったんだ。冗談抜きに、もしボブ・モーグと彼の創造力がなければ、Spectrrasonicsは存在しなかっただろう。次の世代の人々に、Spectrasonics製品がどうやって生まれてきたかを理解してもらい、何事にもオープンな姿勢をもつ、という彼のスピリットを広めることは、とても重要なことだと思う。ときどき、現在のエレクトロニック・ミュージシャンの多くが、ものすごく細分化され、閉じた世界で活動しているように見えてしまうんだ。これはボブ・ムーグの精神性と相反するものだ。実際、Fairlight(Moogシリーズの競合製品だった、非アナログのサンプリング・シンセ)はボブ・モーグ本人が発表し、コンピューターこそガット弦以来の大発明で、将来ミュージシャンにとって最も重要な楽器になるだろうと予言したんだ。彼は、ミュージシャンは利用できるものを何でも利用すべきと考えていた。ペダル・エフェクトを使う、アンプを使う、ハードウェアもソフトウェアも、そしてプラグインも…使えるものは全て!最も大切なことは、クリエイティブでいること、インスピレーションを持つことだ。ビジョンを実現するためなら、どんなものだろうと使うべきなんだよ。
KVR:私もライブラリを購入させてもらったけど、これはお世辞抜きで本当に素晴らしいね。
Bob Moog Tributeのライブラリがすごく成功して、結果としてボブ・モーグ財団にも驚くほど貢献できたことは、僕らにとっても非常に嬉しいことだ。こうした機会が他のメーカーや開発者を触発して、クリエイティブなやり方で、価値ある運動のための基金を募ってくれればいいと思う。
あと、同時に開催したOMG-1もすごく好評だった、世界中から何百人もの応募がきてね!受賞者の発表は9月15日(2011年、OMG-1カスタムシンセ以外にも、複数の受賞が発表される予定)だから、これもすごく楽しみにしているよ!
1976年製のYAMAHA CS-80だね。素晴らしいシンセサイザーだし、演奏していて、とてもインスピレーションをかきたててくれる。さて、そうすると持ち運びできる発電機も探さなくちゃな…
当ポストの制作に協力してくれたPaul de Benedictisに謝辞を表する。
原文リンク
Interview with Eric Persing by Chris Halaby for KVR Audio.
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(c) KVR Audio Plugin Resources 2000-2011
Courtesy of KVR Audio Plugin Resources
当記事はKVR Audio Plugin Resourcesの許諾により転載しています。
発売から数年で陳腐化してしまう製品は数多くあれど、Spectrasonics製品ほど長年にわたって第一線でありつづけるインストゥルメントが他にあるでしょうか(しかも、機能追加のアップデートのほとんどが「無償」。定期的にアップデート料金があるわけでもありません)。
Spectrasonicsチームは、使ってくださるユーザーのみなさまを大切にします。生涯の相棒として、Spectrasonics製品を選んでいただけると嬉しいです。
Spectrasonics製品は、ただいまSuper TRIOキャンペーンを開催中。期間、数量ともに限定となりますので、お早めに。
→ Spectrasonics Super TRIO プロモーション詳細
本日はFXPasnionのウェブサイトからの翻訳記事をお届け。世界を相手に活躍する日本人パーカッショニスト、Taku Hiranoさんのインタビュー記事です。
スティービー・ワンダー、ジョン・メイヤー、チャカ・カーン、宇多田ヒカルをはじめとした超ビックアーティストたちとの共演や、メルボルン交響楽団にも参加されたという素晴らしい活躍をするTaku Hiranoさんが「この太鼓のサウンドこそ、まさに本物の音」と評価したBFD2拡張音源、Japanese Taiko Percussionにコメントしています。
Taku Hiranoさんの音楽的なバックグラウンドも知ることができる貴重なインタビューです。お時間のあるときにゆっくりどうぞ。
スタッフHです。
本日はちょっといつもと打って変わって、みなさんに是非読んで欲しいインタビューをお届けいたします。そして、本ブログ初の「CDプレゼント」も行います。
事前にお話をさせて頂くと、このインタビューをさせて頂いたのは昨年末の2009年12月初旬の事でした。最新アルバムが発売されたばかりのTICA石井マサユキさんに、アルバム制作の背景をお伺いしたいなと思い、インタビューをお願いしたのです。
12月にインタビューした記事がどうして今頃?という疑問はごもっともです。一番大きな理由は、私のインタビューまとめの力不足でして…。というのも、石井さんとのお話は実に4時間にも及んだのです。4時間のお話は、どこも削れるような所もなく、どのお話もすべて皆様にお伝えしたい「深い」お話ばかりでした。正直なところ、このインタビューをさせていただいたことでレコーディングや、「音楽を作る事」に対する考え方が変化してしまったのです。それくらい、インパクトのある内容でした。文章になってしまうと、どうしても語り口までお伝えできず、かといって文章を加えるわけにも行かず…というのがこの遅れの理由です。
インタビューは主に発売されたTICAのアルバム「Johnny Cliche」の話題が中心。このアルバム、発売以来ずぅーっと聴き続けています。一時的な話題になる音楽は数多くあれど、そのうち10年後、20年後も聴き継がれる音楽ってどれくらいあるでしょうか。でも、TICAのこのアルバムは私にとって死ぬまで聴き続けたい「名盤」です。
私たちメディア・インテグレーションは、音楽制作に関連した製品を販売していますが、同時に音楽制作をされるクリエイターさんたちの「刺激」になるものもご提供できたらいいなと思っています。ですから、今回のこのインタビューではこのアルバム「Jonny Cliche」をプレゼントさせていただきます。応募方法はインタビュー最後にて。
では、お時間のあるときにゆっくりと、お読み下さい。