古くからSpectrasonic社製品を愛用し、数々の有名な賞を受賞する作曲家、ジェイムス・ニュートン・ハワード氏は、現代最高のフィルム・コンポーザーといっても過言ではありません。
オスカー・ノミネート8回、ゴールデングローブ・ノミネーション3回をはじめ、グラミー賞やエミー賞などを含めて100作以上の映画音楽を手がけ、ここ最近では、映画「グリーン・ホーネット」の音楽を担当しています。
このインタビューでは、ハワード氏がどのようにSpectrasonic社製品を作曲に活用しているかを語っていただきました。
「グリーン・ホーネット」の監督、ミシェル・ゴンドリー(「エターナル・サンシャイン」ほか)は画期的な制作手法を用いることでよく知られています。
ハワード氏によれば、監督は音楽を最優先に考え、映画制作のベクトルを正しい方向へ示してくれたそうです。
”スケジュールにもよるけど、テーマ曲を複数まとめて作曲することもあって、それが他の曲の土台になったりする。こうすることで一貫性も保てるし何より、スピードも上がるしね。”
これこそ、監督と作曲家の信頼関係がなせるワザなのでしょう。
”他にも、映画の中でキーポイントになるシーンを決めて感覚を掴んだよ。今回は映画の最初のシーンを選んだ。セス・ローガンというメイン・キャラクターにとって、とても印象的なシーンだったからね。
冒頭のシーンと他数シーンの音楽を仕上げて監督に持っていき、確認してもらった。僕達両方がしっかり同意の上で、先に進めたことが功を奏したね。”
”Spectrasonics社の製品は発売された当初からずっと使っている。テクスチャをつくるならOmnisphereを最初に使うし、Trillianの豊富な種類のベース音源には他に右にでるものがない。
「グリーン・ホーネット」の制作過程として、最初にサウンドのパレットを作っていった。OmnisphereのみReceptorでロードして、残りのプラグインはCubaseといった具合に。すぐに使いたい音が呼び出せるのがいいね。
僕のパレットには、パッド、テンポにシンクしたサウンド、パーカッション的なものなどを揃えている。ついでにいうと、パッドには未だにAtmosphereからの音色も活用しているよ。”
”Omnisphereの何がすごいって、デフォルトのパッチから自分好みにカスタムするのに、たった数回クリックするだけなんだ。”
”パッチを選んで、エンベロープを変えたり、ディレイやアルペジエイターで新しいパッチにしたとしよう。更に、オリジナリティを出すために豊富なエフェクトを活用すれば、リッチで深味のあるサウンドや、アグレッシブで緊張感のあるサウンドも作れる。それに、どんなパラメーターでもMIDIコントローラーでアサインできるから、もう一段上のレベルのダイナミクスを加えることもできるしね。
パレットを作っていく段階で少しスペースを空けておくと、全体を通して使うときや、場面だけに限って使う場合でも、後でパッチを追加するとき困らないですむ。
これはどんな音楽制作の課程でもよくあることだ。作曲していく課程で先が見えなくなることや、元のプランを調整しなきゃいけない場面が必ずある。音作りにおいても同じことだね。
”僕のパレットから絶対に外せないのが、Omnisphereだ。もちろん、Atmosphereがそうだったようにね。なんといっても、全ての要素を網羅するサウンドが簡単に使えてしかも自分好みにエディットできる。”
”「グリーン・ホーネット」のように、勢いのある動きがメインになる映画に使ったのが、アルペジエイターとテンポシンク・エフェクトだよ。こうした映画にはすごく便利なんだ。
ストリング・セクションと合わせて使えるパッドも、オーケストラのストリングスにレイヤーとして重ねることで、音に厚みを加えられる。
ギターのパッチなんかもいい例だね。例えば、Glorious Guitarsとか。素晴らしく豊かに感情を表現できるパッチの1つだ。”
”僕は曲のアイデアと編曲を、いつも同時進行させるプロセスで進めていく。エレクトロニックからオーケストラのモノ含めてね。こうした相反するサウンドは切っても切り離せない。両方を上手に扱う必要があると僕は思うね。
映画とのタイミングを図ったり、ミキシングもその場その場でやっていくことが、その両方のサウンドを映画にうまく溶けこませ、音楽を”シンクロ”させる唯一の方法だよ。
“映画音楽という仕事を受ける上で、できるだけ早く僕は音楽を仕上げたいと思っている。仮の音楽では映画作品の発する”声”がわかりにくいだろうからね。
たいていの場合、僕が持っていくシンセのデモは映画のプレビューで使われるけれど、映画製作の最終段階に使われるものと結果的にあまり変わらないことが多いからなんだ。”
“もちろん、「グリーン・ホーネット」のように力強いテーマ曲が必須な映画では、音楽が掛け値なしに重要になるわけだ。
本当にたくさんの種類のサウンド、オーケストラからシンセ、エレクトロニック、ギター、ドラム、ブラスまで、ふんだんに使用している。映画に合う音選びというのはその他の要素も含め、とても重要なことだ。これだけ多くの音が入ることで、散らかった印象を与えかねない。
アクションでありコメディでもあるこの映画では、様々な音楽的アプローチが必要になったけれど、同時に一体感も生み出さなければいけないんだ。
“制作の過程で、レコーディングが必要になった時はギター、ベース、ドラムのような小規模なものから始めることにしてる。その後にオーケストラのような大規模のレコーディングをすることで、監督が全ての音楽が映画と渾然一体となってることを、セッションを通じてリアルタイムに確認できるからね。”
ハワード氏が手がけた100を超える映画作品は、クラシックなものからポピュラーなものまで非常に幅広く、バットマン・ビギンズ、プリティ・ウーマン、逃亡者、ワイアット・アープ、ベスト・フレンズ・ウェディング、シックスセンス、コラテラル、The Devil’s Advocate、The Lookout、デイブ、フォーリング・ダウン、摩天楼を夢みて、アイ・アム・レジェンド、ヒマラヤ杉に降る雪、キング・コング、ブラッド・ダイヤモンド、プライマル・フィア、ザ・インタープリター、フレンチ・キッス、フィクサーなど様々な名作の音楽を担当しています。
最後に、彼のように偉大なフィルム・コンポーザーになる上で、必要な才能はあるかと尋ねてみたところ、
”僕は、スタジオの中で一番卓球がうまいんだよ”
とのこと。
ふむ…彼の成功の裏にはまだ少し秘密がありそうです。