Media Integration, Inc “Review and User Story”

Review & Story

06 Jan 11

Mobile I/O LIO-8 ユーザーロングインタビュー:福富幸宏 氏

高品位Fire Wireオーディオインターフェイスとして名高いMetric HaloのMobile I/Oシリーズ。Mac専用として抜群の安定性、他に類を見ない「アップデート可能な」”Future Proof”のポリシー、専用DSPによる80bit処理。いずれも、ユーザーを満足させるための重要な条件である。

そんなMobile I/Oシリーズのサウンドを一聴して「聞いた瞬間に音の良さを実感した」と、DJ/音楽プロデューサー/プログラマーの福富幸宏氏は言う。いち早くLIO-8を導入し、使用されている同氏にMobile I/Oシリーズ導入に至る経緯を語ってもらった。

ネイティブ環境の質を改善したかった

Mobile I/O LIO-8はどういった経緯で導入されたんでしょうか?

ネイティブ環境の質を改善したかったからです。Metric Halo自体は前から知っていたんですが、オーディオインターフェースを選択している中で、候補に挙がったんですね。昨年末、友人のDJ SHINGO(AGORA RHYTHM)さんがMobile I/O 2882(以下2882)を現場に持ってきた事があって、それまでいわゆるPCDJのサウンドに対してあまりいい印象を持ってなかったんですが、そのときに「あれっ?いい音だな」って感じたんです。これぐらいのインターフェースを使えばPCDJもいけるんだ、という印象を持ちました。


その時クラブで使用されていた2882のサウンドは、他と較べてどういった点が違っていたんでしょう

一番はレンジの広さ、特にローエンドとハイエンドですね。PCDJだとやはりレンジが狭くなって真ん中が飽和してしまうんです。パッと聴きの音圧感は良くて、音量が出てる感じがするんですけど、結局下も上も無い。でも現場で2882のサウンドを聴いて、音の良さにびっくりしました。その時に、自分の中でのMetric Haloのバリューが跳ね上がりましたね。用途に合ったものをということで、マイクプリの付いたULN-8ではなくLIO-8を選択しました。

福富さんの環境では、マイクでのレコーディングはされないんでしょうか?

うちはライン録りが殆どで、マイク録りはあまり行わないですね。いつもやっているエンジニアのところに小さなボーカルブースもあるから、歌を録るんだったらそこでできるし。

なるほど。LIO-8にはマイクプリ部を追加拡張できるオプションもご用意していますので、ぜひご検討ください。

音が良いというのはやはり大事

LIO-8を実際に導入されてみて、いかがですか?

音を聴いて導入を決めたので、というのはありますが、やっぱりいいですね。音の値段が高いというか、他とは違いますね。

LIO-8はフラッグシップモデルのULN-8からマイクプリ、DSPライセンスを省いたのみで、他のAD/DAなど音質に関しては全く同じです。福富さんに「音がいい」と言っていただけたのはとても嬉しいです。逆に不便に感じられる点などはありますか?

何だろう?今のところあまりないですね。(笑)

実際にDJの現場では使われましたか?

まだですね。過去に何回か、別のオーディオインターフェースでDJをしたことはあるんですが、満足がいかなくて、今はCDJを使っています。元々アナログでDJをやってていて、アナログになってないものはCDでやることにしていたんです。でも、そうするとアナログとCDとの隙間が埋まらないんですね。流れの中でかけると違和感があるんです。

なるほど。

それで、データで売っているものについては、徐々にアナログからデータ(CD)に移行していたんです。でも、あるときからアナログもすべてCDに起こしてプレイするスタイルに変えたんですね。そうすると違和感が無くなる。もちろん、デジタルとアナログの違いというのもあると思うんですけど、むしろお店のセットアップの違いによるものだと思うんです。それこそ、例えばUreiみたいなヴィンテージのミキサーは、一応CD用にレベルは調整してあっても、アナログとCDの音は全く違う。アナログ盤からCDに切り替えたときの違和感たるや!という感じなんですね。

チャンネルごとにEQがあるミキサーなら補正はできるんですけど、Ureiではそこまで細かくできないので、それならCDで揃えようかなと思ったんですね。音質的に難のあるレコードでも、調整してからCDに焼くことができますしね。

デジタルへの移行は進んでいるんですね。テイ・トウワさんの作品をミックスされている松田 直さんからも、アナログをCDに焼く作業は日頃から行っている、と伺いました。そうすると、LIO-8は主に制作で使用されているのでしょうか?

はい。買ってからはLIO-8がメインですね。ただ、贅沢なんですが、モニターとしての質の高さを享受している感じです。最近では布袋寅泰さんとの仕事で、布袋さんが栗山千明さんをプロデュースされたときに使いました。プリプロのときにギターをここ(LIO-8フロントパネルのDIインプット)に突っ込む。

それは布袋さんのスタジオでの作業ですか?

布袋さんのスタジオはプリプロのみで、後から差し替えていきます。打ち込みで作ったものは僕がデータを書き出して、録りはPro Toolsで行っていますね。やはりエンジニアの方が居て、その人が全てをコントロールするという、クラシックな図式の方が効率がいいんじゃないですかね。僕らはあまりやることは無いんですけど、それこそアンプを鳴らしてマイクで録りますから、ギターの音のためにスタジオを選ぶ。

ただ、プリプロ段階でも音が良いというのはやはり大事です。音が悪いと、アレンジに問題があるのか、他に問題があるのか分からなくなってしまうんです。僕の場合、一番大事にしているのがちゃんとしたモニター環境で作業するということ。基本的だけど大事なことです。その場合(重要なのは)ローエンドですよね。

ローエンドの違いでどれくらい作業は変わってくるのでしょうか?

昔、2ミックスに30Hzのサイン波を足して再生する実験をしたことがあるんです。基本的には聞き取れないローエンドにどれくらい意味があるのか、という実験だったんですが。他には何も変えていないのに、聞いた皆がサイン波を入れた方が良いと言うんですね。今時のMP3仕様にマスタリングされたものってローエンドが無いじゃないですか。僕はきちんとしたローエンドがないと落ち着かないんです。DAWのアナライザーで見ても分からないかもしれませんが、それを外のスタジオに持っていってミックスすると、はっきり分かってしまうんですね。ローが出ないモニター環境で聴いても元の音にローエンドの成分があるかないかで、印象は大きく変わってくるんですよ。

ゼロレイテンシーでモニタリングもできるし、しかもDSPプラグインが『使える』

LIO-8の音以外の部分についてもお伺いします。MIO ConsoleというMobile I/Oのミキサー・ソフトウェアは、活用されていますか?

ここしばらくは布袋寅泰さんのプログラミングをすることが多いので、あまり活用の機会はありませんが、プリプロや打ち込みの途中でもギター録りをするんですね。でもMIO Consoleのミキサーに立ち上げる限りは、ゼロレイテンシーでモニタリングもできるし、しかもDSPプラグインが『使える』。すごく便利ですね。

モニターは確かに重要ですね。LIO-8では入力をコンピューター内へ送るバスとは別にモニター用のアウトも自由に作ることができるので、どんな制作スタイルの方にもお使いいただけると思います。ではプラグインを一緒に見ていきましょうか。実はMobile I/OのEQにはRIAAのセッティングも用意されているので、ターンテーブルも直接つなげられます。

へえ、そうなんですね。知らなかった、すごいですね。目から鱗です。RIAA特性ってこんなカーブなんだ。

他にもギター、ベースのアンプシミュレーターを用意していまして(+DSPライセンスにて使用可能)、細かいパラメータはありませんが、これだけで十分というサウンドに仕上がります。

僕はベースも弾くので、このプラグインはいいですね。実はベースのDIを買おうかと思っていたんですよね。DIでとりあえず入れて、録るだけ録ることはあるんですけど、もう少し気分が乗る音にしたいというか。パラメータが無いというのは?

パラメータは潔く一切ありません。

ああ、本当にヘッドをかますだけ、みたいな。それはいいですね。

あと面白いのが、TransientControlです。

あっ、これはグラフィカルですね(笑)

(笑)

SonnoxもSPLも、トランジェントを処理するプラグインはありますし、SPLのトランジェント系はアナログのときからすごく使っていますけど、ここまでは(表示して)教えてくれないですもんね。ここは頑張ったんだ(笑)

本体のインプット、DAWからのアウトプットの各チャンネルにアナログキャラクターを付加できる"Character"

Characterはお使いになりましたか?これは様々なアナログインプットのフレーバーをシミュレートしたものです。

卓のヘッドということですか?

そうです、例えばDigital Performerからパラアウトして、出力の各チャンネルにアメリカンチューブ、FETなど、異なるキャラクターを付加できます。

ああ、なるほど。これはいいですね。僕はDigital Performerでミックスすることはほとんど無いんですが、これならLIO-8でサミングするのが楽しみになってきました。

MIO Console v5とMobile I/O 2dシリーズから追加された機能です。やはりパラメータは一切無く、タイプを選択するのみです。
それはいいですね。回路ごとのキャラクターを付加できるんですね。これは使ったことが無かったので、是非試してみます。

MIO Consoleにはレコーディング機能も用意されているんですよ。

ターンテーブルをつないでDJのMIXを直接(編注:ホストアプリケーション無しで)録れるということですね。

物理的なインプット、DAWからのアウト、どちらも録音できます。一度MIOミキサーのバスでまとめたり、ライブ等でパラアウトを別に録音できたり、便利な機能ですよ。


この音の良さだけでも導入する価値がある

制作環境としては、いつごろからMacを使用されているんでしょうか?

僕がこの仕事を始めたときは、YAMAHA QX3でした。それで稼いだお金でMac SE30を買ったんです。シーケンサーについては、当時PerformerかCakewalkくらいしか選択肢が無かったですね。そのまま現在に至っています。

現在はDigital Performer以外にPro Toolsも利用されているということでしたね。

ええ。ただ、ネイティブ環境に移行した際にHDは処分して、今はPro Tools LE+003という組み合わせで使っています。

先日(2010/11/5)Avidから発表されたPro Tools 9では、トラック数や遅延補正など、HDと殆ど変わらない仕様に変更されました。さらに他社製のオーディオインターフェースも使用できるようになりましたね。

Pro Tools 9ではAvidのハードウェアが要らないということですか?

一般的なCore Audioドライバーで動作するようで、サードパーティ製のインターフェイスが使用可能になりました。

そうですか。ソフトウェアだけで動く、というのはいいですね!

LIO-8をPro Tools 9で使用される予定はありますか?

もちろん使いますよ!Digital PerformerとPro Toolsでインターフェースを併用できますしね。

Mobile I/O 2882やULN-2が、アップデート可能、というのはご存知ですか?

ええ。中のチップを変えることでバージョンアップできるんですよね。

そうです。これはMetric Haloの「Future Proof」というポリシーなんですが。例として、2001年に発売されたMobile I/O 2882用に、7年後の2008年、2D Cardという拡張ボードを発売することで、発売から10年近く経った機種を最新の機能に向上できるという、いわば後からハードウェアのアップデートが行えるようにすることで、末永くご使用いただけるようにというポリシーです。

インターフェ-スに数十万円もの投資をする感覚が理解できないという方もいらっしゃるかもしれません。でも先ほどのローエンドの話でも伺ったように、一聴して分かる明確な差があります。体感できる部分での違い、もっと「いい音」に目を向けていただければと思います。

Mobile I/Oシリーズは「アップデート可能」なオーディオインターフェイス。画像は、旧モデルに最新のカード(2dカード)を設置しているところ。

MP3とCDの音の違いが分からない人に、どちらがいいか言っても仕方がないですよね。ちょっと音楽をやってれば、こっちの方がいいじゃんって分かるはずですよ。

ローエンドに関しては、実際に「聴こえないんだったら要らないじゃん」という声もありますが、ダンスミュージックをやっている自分としては、そこは大事にしていきたいですね。LIO-8はローが落ち着いて聴こえ、抜けがいい。これは、ローエンドに余裕があり、しっかりしているからだと思うんです。

福富さんの音楽を聴いていると「勝手に体が動く」ように感じるのですが、それを聞いて納得しました。ローエンドへのこだわりが、福富さん独特のグルーブに繋がっているんですね。

Metric Haloのオーディオインターフェースは、聴いただけで音の良さ、違いが分かります。今のところ各機能を使い切ってはいないですが、この音の良さだけでも導入する価値があると思いますよ。

本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

ありがとうございました。

Metric Halo Mobile I/Oシリーズ詳細ページへのリンク


福富幸宏(ふくとみ ゆきひろ) ミュージシャン/DJ/プロデューサー

’80年代後半よりDJ/プロデュース活動を開始。 プログラマーとして数多くのセッションに参加した後、’91年『LOVE VIBES』(alfa)にてソロデビュー。 国内ハウス・シーンに於ける先駆者との評価を得る。

その後、’90年代に3枚のアルバムを発表。’00年に発表した『On A Trip』(cutting edgeハ/ avex)は、 米・King Street Sounds、独・JCRにライセンスされワールドワイドリリースを果たすほか、 50を超えるコンピレーションに収録されるなどして、 ハウス/クロスオーヴァー・シーンに於いて世界的な評価を得る作品となった。

以降、’01年『Timeless』(cutting edge/ avex)、’04年『equality』(File Records)をワールドワイド・リリース。 高い評価を得、その地位を確固たるものとした。 ’07年には、リミックス100曲越えを期に、ワークス集『The Transformer』(tearbridge records / avex)を発表。 ’08年にリリースされた最新作『Contact』(tearbridge records / avex)

は、自身にルーツに立ち返りつつ、 ハウスの”本質的な多様性”を見据えたストイックかつ幅広い内容となっている。

90年代初頭よりプロデューサー/リミキサー/作編曲家/プログラマーとしても活動。 現在までに、ピチカートファイヴ、布袋寅泰、今井美樹、藤井フミヤ、浜崎あゆみ、m-flo、倖田來未、中島美嘉、 クレモンティーヌ、Fantastic Plastic Machine、元Speed hiro、Da Pump等、 国内外のアンダーグラウンドミュージックからポップスを問わず幅広いジャンルの作品を手がけることのできる プロデューサーとして活躍。Remix作品は130曲以上、プロデュースワークを含めると、 350曲以上のセッションに参加し、現在に至る。

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